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浪人詩集  作者: 屯田水鏡
47/48

浪人詩集(47)

浪人詩集(47)


157.僕らが煙草を覚える前は、世の中、もっとまっすぐだった、僕らが煙草を覚える前は、もっと空は青かった、僕らが煙草を覚える前は、海にも山にも夢があった、僕らが煙草を覚えてからは、杉の木一本までが、枯れちまった


158.何ものにも


なにものにでも良い、極端に言えば、悪にでも良い、徹し切れる人には、不思議な魅力がある、普通の人間である私には、妬みと嫉妬と虚栄心しかなく、そのための嘘を、毎日ついている、満足することは無い、迷いの中でもがいている、こうしてぼくの一生は果てるのだろうか、孔子は言う、朝に道を聞かば夕べに死すとも可なり、空しい


159.死ぬに当たって


皆さんさようなら、僕の分まで生きて下さい、なんて、そんな野暮なことは申しません、死ぬことは楽しいなんて、そんな偽善は言いません、死ねて嬉しいなんてこともないでしょう、かと言って、生きることは心地良いと言い切れることもないでしょう、そんな嘘つきや楽天家でもありません、一体、人生なんて、何だったんでしょうね、人間は所詮人間でしか終れないのでしょう、人生不可解なリと言って死んだ人が昔、いましたが、虚栄心の強い、人だったのでしょうね、人生を知るために、もう少し生きる必要があったかもしれません、自分とは何でしょう、他人とは何でしょう、そんなことを考える自分がいることも、何だか不可思議です、ところで,皆さんさようなら、もう、面倒臭くなったのです、私が死ぬ理由も、生きる理由も分からなくなってしまったのです、皆さんは、本当の自分を生きて下さい、本当の自分を生きるなんてことは全く不可能でありましょうし、そもそも、本当の自分なんて言うものがあるのかもわかりませんが、それではみなさん、さようなら


※こんなことを考えたことが何度かありますが、老齢の今も、未だ何とか生きています。


160・紅の蝶


紅の蝶が渓谷を飛び交う時、山々は、一瞬、その静寂から目覚めた、谷川の小さな窪みから湧きあがる、謎かけが、列島を覆い、日本の秋がやって来る

人間は知らない、自然の倫理と営みを


161.沢山の雑感


雪国の列車は、何度も咳き込むように、白く熱い息を吐きながら、ななめに山を登っては、引き返し、また、蒸気という白い息を咳き込むように吐き出して、汽笛を鳴らす、苦しそうに、ウィッチバックという方式だそうだが、汽笛の音は、まるで、喘息で苦しむ、僕の喉と胸を行く虎落笛もがりぶえの様だ


峠を越えて幌馬車は、鈴を鳴らして、行きまする


※ここから先の言葉がどうしても浮かばない


君が細めし瞳の魔力、焦りと愛と誠の嘘に、風吹きて、ただ風吹きて


君は髪が長すぎる、君のひとみは青すぎる、だから、僕の邪悪な悪戯は、夢に留まり、君に手さえ触れずにいる、少しく笑いながら、熱いコーヒーを入れましょうか、と君は言う、君の体の震えと一瞬の喘ぎを求めて、手を伸ばしたい、僕の邪悪な悪戯は、やっぱり夢に留まって、君は少しく笑っている、意気地なしの、下劣な変態男と、その目が言っている、君は又、爪を噛んで、優しく笑って、長い髪が揺れている


ほの暗い月光の下で、老婆が一人、波打つススキの河原に佇む、やがて老婆は二三歩歩き、屈んで石を拾い、包丁を研ぐ、杖を頼りにここまで生き抜いた、老婆の願いは一つ、密に架かる黒雲は、月を包み、老婆の思いを覆い隠す、やがて現れた月は、醜く年老いた深い皺のある、その顔を無残に照らす、美しかったのだよ、と不敵に笑う、死出の旅路へ向かわんとするのか、白装束が、闇を照らす月光に翻る


162.帰りなん


帰りなんいざ、小さなバッグを、肩にかけて

帰りなんいざ、山を越えて、

帰りなんいざ、空を飛んで

思い出をいっぱいぶら下げて

星降る夜の街角をかけて行こう

敗れた夢のかけらが粉々になって降り注ぐ

帰りなんいざ、全てを捨てて、君の元へ


163.タンポポ


草原の空に咲く、タンポポの花、風に乗り、大空を飛び交うよ

ああ、あなたと暮らした、短い月日が、夢破れた、僕の思い出

人は皆、後悔と、懺悔と、悲恋を乗り越えて、生きていくのか

大空に浮かぶ、タンポポの花、風に乗り、大空を飛び交うよ


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