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浪人詩集  作者: 屯田水鏡
46/48

浪人詩集(46)

浪人詩集(46)


151.ぺんぺん草


ぺんぺん草のメロディーのように、人殺しだ、人殺しだと叫ぶ家の前を

私は黙って通り過ぎた、雑草の中で密に笑う、シャレコウベと

それを照らす月と腐乱した私の屍、私の首に巻き付いている、細長い麻紐が

もしも、娑婆と修羅とを繋ぐ電話線であったならば、そこにはきっとぺんぺん草のメロディーが聞こえて来るのだ、歌え、うじ虫めら、嘔吐の歌を。


152.思い出


腐れて散った思い出にびゆんびゆんと風が吹く、腐れて散った思い出を

夕日の赤が包み込む、蛙を踏み殺して、若干の快楽と殺伐たる煉獄を思う時

その報酬を額に押し戴き、涙に暮れる、血の沁み込んだ、運動靴を、胸の奥深く抱いて、見上げれば、空は、真っ青に晴れている。


※この頃、欝だったのだろう


153.雑感


ふと滲み出したインクの染みに、ある種の戦慄を覚えて、私は途方に暮れた

青い手をかざして、電燈の紫の光を遮ると、いつの間にか無数の蟻が、私の体にいた、そして、巨大な燐光を見た時、全ては消え去った、結局、人生は夢でしかなかった


154.水の精


水道の蛇口から飛び出した銀色の水の精が、きらきらと緑の幻想を運ぶとき

そこに、小宇宙がまれる、君は両手で水をすくい、喉を鳴らして、ごくりとやるのだ、甘露よりも甘い、水の精の踊りが、君の体内で恥じまる、リロロン、リロロン、コロン、コロン、やがて、君の体の中のあらゆる思いを身に付けた水の孺子たちが、汗腺の一つ一つから、のそのそと這い出して、空へ、地中へ、大宇宙へ、帰って行くのだ


155.群青色の旋律


群青色の旋律から生まれるものは悲しみか、いな、群青色の旋律からは、何も生まれない、まして、喜びなど、ラピスラズリの大地から生まれ、遠くシルクロードを流れてきた、そは、苦しみの連鎖、悲しみの怨嗟、嗚咽の果て、全てを包む深い海の比喩、高い空の色そのもの、群青色の旋律からは何も生まれない


156.新聞少年へ


朝一番に起きて、さあ出発だ、外はまだ暗いけど、僕には大切な仕事がある、元気におはようと言いながら、新聞を配ることだ、白い息をはきながら、朝の道を駆けると、明けの明星が、キラキラと僕を励ましたくれるのだ、優しいどこかのお姉さんが、大変ね、頑張るのよと、僕に元気をくれた、僕は手を振って、次の家へと急ぐ、こうして、新聞を抱えて走っていると、背中がしゃんとしてくるし、心がびゅんと伸びるんだ、新鮮な緑の風を、胸いっぱい吸い込んで、さあ駆けて行こう、みんなが僕を待っているから、走れ走れ風に乗って、走れ走れ希望に向かって、雨も風も雪も、みんな僕たち新聞少年の栄養素だ、さあ急ごう、僕には大切な仕事がある、胸を張って地球を駆けよう、僕たち新聞少年は、太陽にだって負けないのだ


※懐かしい、爽やかに走る少年の行動が良く表現できていると我ながら思う。中学生の頃、僕は新聞配達のアルバイトを経験した。優しくて美しいお姉さんに声を掛けられると嬉しかった。縦じまのワンピースを着た優しいお姉さんに横しまな感じを抱いたことがある。その時、股間が膨張して、痛くて、走り難くなったという経験が何度かあることを思い出す。


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