浪人詩集(42)
浪人詩集(42)
137.ブランデー
君は自己の道に専心しろ、評価は他に委ねて・・・・
友と酌み交わしたブランデーが腹の中でやんわり燃えて
そこに詩が出る
赤い鼻をピクリとやって、メガネの友がひねり出す
詩は流れて風となり、夜寒の空に灯を灯す
幾春秋分かち合った苦労の種が
味のぐっと引き締まったラーメンとなり
そこに胡椒がピリリと利いた
残り少ないブランデーをさらに汲み
日本の未来を語り合って最後の一滴を分かち合うと
そこは秋の真っただ中だ
138.訳の分からぬ言葉の連続
霞んで霞む壺の中、猫の毛三本、蚊取り線香の見納めに
泣くな可愛い虫っけら、夕日は赤く空青く、悩みの種は
便秘の初め、君の瞳に泉が一つ、湧いて流れて、消えて行く
ご覧あの空あの雲を、コントラストに縛られず、太陽沈んで
灯は残る、君の瞳に夕日が沈む、泣いて涙の雨となる、雲となって
千切れ飛ぶ、君の瞳が星となり、泣いて涙の川を行く、君の悲しみ海となり
あの空、あの山、千切れ飛ぶ、君と別れて海を見る、波が砕けて千切れ飛ぶ
君と別れて空を見た、星が光って落ちてきた、涙拭わず歩いていると
漁師の歌が流れて消えた、君は負けるな・・・
139・漁師の歌
漁師の歌う恋歌は、流れ流れて、どこへ行く
海に浮かぶ揺り籠は、遠い遥かな母の胸
瞳の中の面影は、汝に両手をさしのべる
ああ、涙、ああ、涙、
目覚めた漁師は空を見て、甘美な夢に嗚咽する
かじかむその手をじっと見て、夢を夢を温める
こうして毎日生きたって、この世に何があるのだろう
楽しいことなど何もない、いっそ死んでしまおうか
その時ピクリと当たりがきた、もしかしたら大物か
鯛か、ヒラメか、蛸か、イカか、アワビか、サザエか、亀か、鮫か
一体何なのだろう、この海の何もかもを釣り上げるまで、仕方がない
生きてみるか
140.自分勝手に考えた諺
学問の真の目的は、自分が本当は何も知らないということを悟ることにある
何もかも全てを体系的にまとめ上げること、それがどうして学問であり得ようか
理想と現実の合致、それは私が心から恐れるものである、今さしあたって一番必要なものは勇気であろうか
精神の安定は、人をしても最も平凡なものにする
厳苦によるエクスタシーほど人間にとって甘美なものはない、その意味において、天国ほどつまらないところはあるまい、したがって、天国よりもむしろ地獄により大きな興味を持つのは当然である、もしも、恐れというものを取っ払うことが出来るならば、なおさらである
一粒の砂糖を笑うものは、一粒の砂糖に泣く、何てことは、今日ではもう、通用しなくなった
愛は万人に施せ、そうすれば、おせっかいが増えて、もっと住みにくい世の中になるだろう
キリストも釈迦も結局は自分のためにやったのだ