浪人詩集(33)
浪人詩集(33)
117.キンキン
いつからか、頭の中がキンキンと鳴りだした
どうしてなるのか私にも分からない
どうしたら静かになるのか
自分の頭でいて、他人の頭のような、変な具合だ
眠ろうとすると途端に大きく鳴り出す
まったくあまのじゃくだな
外は春の風がビュービュー吹いている
僕の頭の中ではキンキンと何かが鳴いている
いったい鈴虫でもいるのかな
でも何か怖いみたいな気もする
自分が自分でないようなもうすぐ死んで行くような
騒々しい寂しさが何となく感じられる
いやもっと楽しいことなのかもしれない
今はキンキンと鉄をこすりつけるような音だけど
春が過ぎ、近づけば美しい澄んだ音になるのかな
例えばチリンチリンと鳴き出すのかも知れない
そして何匹かのコオロギと鈴虫が出て来て
目の前で楽しい合唱会を開いてくれるかな
そうだおまけに風鈴も出て来るかな
ああ、キリギリスもバッタもみんなみんな出て来るかな
その時はきっと夏の夜に違いない、そうだ、真夏の夜の演奏会だ
おーい、みんな集まれよ、でも待てよ、そうしたら僕の頭の中は
静かな静かなとても寂しい死人の世界になっちまいそうだ
でも静かでいいや
春の風は松の木を揺すって、窓ガラスをいじめて
ビユービユー吹いている
※どういう心境だったのか不明。