浪人詩集(30)
浪人詩集(30)
111.夢の続き
真白い紙に、透明なインキで何かを書きつけてみると
何も見えないと思っていたのに、やっぱり何かが見えました
白い、白い、夢が見えました
その夢は、将来の私の死に顔と、寂しい墓標がありました
そんな気分に浸っていると、夢の中に、知らないじじいが
づかづかと踏み込んで出来て、俺にも食わせろと言って
私のカップラーメンに手を伸ばしましたので、夢とは分かっていましたが
じじいに一口でも食わせるのは嫌でしたので、嫌だね、と言ったのです
一口ぐらい良いじゃないかというので
いや、駄目だ、こればっかりは譲れないと言うと
ああ、分かった、俺は君を買い被っていたよ
君は、随分、俺の家でご飯を食べたし、その上、トイレも何度となく使った
とじじいが言いました
そこで僕は、夢の中で、じじいの家に居候していることに、気付いたのです
夢だから、良いじゃありませんかと言い返すと、じじいは怒り出して
夢だから許せんのだと言ったのです
目が覚めても、何となく変な気持ちでした。
※この頃、良くカップラーメンを食べていた。時々、隣の部屋を借りていた友人から、時々、余った食パンを分けてもらっていたが、ある日その食パンに青カビが生えていた。かまわず食べたら、案の定、二、三日下した。
112.寂しさについて
私のかき鳴らすたどたどしいハーモニカの音色に何かを感じた人がいたら
そのまま、声を掛けずに、ただ聞いていてくれ給え
私だって何かを言いたいのだけれども、すぐには言葉が見つからないのだ
ただ、寂しい私の気持ちを汲んでくれたまえ、勿論、君だって寂しいはずだ
そう、更に言えば、寂しさこそ、万人が持っている普遍的なたった一つの
人間らしい感情なのかもしれない、だから、これは詩ではないのだ
ただの後悔とそのつぶやきなのだ、寂しいのだ、虚しいのではない
成功にしろ、失敗にしろ、その終わりには虚しさがある
そして、後には寂しさが、心のどこから知らないけれども、湧き出て
毛細管現象のように、肉体の隅々まで沁みわたり
水蒸気のように蒸発する訳でもなく、ただ、寂しさが蓄積するのだ
だから、人間が恋しくなる、それは母であり、父であり、兄弟であり、
恋人である、だが、私は何もできない凡夫、たわいもなく
このちっぽけなハーモニカを吹かずにはいられない
かと言ってその小さな金属板の振動によって、慰められるかというと
決してそうではない、ただ一時的に、口を動かして、少しの間
自分の存在までも、忘れるばかりに、没頭するに過ぎないのだ
それは、悲しみに値する、いや、そればかりか悲しみを増幅する
試に何か楽器を鳴らしてみるが良い、人間の作り出した者が、いかに心細く
儚いものであるか、ある種の名状し難い感がいをもって悟るだろう
※理解し難い文章ではあるが、何だか空しいと言うことらしい。