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浪人詩集  作者: 屯田水鏡
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浪人詩集(23)


浪人詩集(23)


89.ポエムインスプリング


さらさらとひとしきり雪が降りました

さあ、白い、白い夜明けがやって来たのです

銀色ぎつねの、コン三郎は、あなぐらからひょいと顔を出して、呟きました

ああ、春はまだかなあ、コホン、コホン

本当は、コン、コンと言いたいのですが

かぜをひいてしまって、コホン、コホンと聞こえるのです

冷たい風がピューと吹いて、コン三郎のピンと張ったひげを震わせました

おお、寒い、思わず首をちぢめて泣きそうな声でコン三郎が言うと

大寒、小寒、子どもは風の子ツンツンツン、泣き虫、子ぎつね、泣いてるよ

みんな、おいでよ、ツンツララン


※ここで、終わっているが、中途半端である。この先を書こうと思ったのであろうが、多分、忘れたのであろう。自堕落な生活が始まって行く。


90.変態動物


街の灯は、何時か途切れて、僕は暗いアスファルトの道を歩いていた

赤く焼けただれた半月が、宙に浮いて、遠くにチャルメラの音が聞こえた

その時、僕は、なぜか、異常なほど、孤独を感じて道端にしゃがみこんだ

背中に冷たい汗が流れるのを感じると同時に、激しい嘔吐に襲われた

空の胃袋から、黄色い液体を、絞り出したが、胃袋が何度も繰り返す痙攣に、

立ち上がることが出来ず、僕は四つん這いになったまま、帰り道をトカゲ

のように進んだ、苦い胃液をすっかり吐き出してしまって、漸く立ち上がった僕は、安堵の気持ちを取り戻して、ポケットをまさぐり、煙草を取り出してくわえた、そして、見上げる空に、一すじの流星を認めた時、きな臭いおののきを強く感じた思うと、何時か一個の変態動物となって、蝙蝠の間を飛び回っていた、真紅の舌を長々と伸ばして、闇を食べた時、森閑とした夜は、音を立てて崩れ落ちて、ベッドの中の僕は、眩い朝の光の中だった


※この文章は、大学の授業中に、書いたものである。

経済原論という、必須科目の授業中であった。

この文章の隣に授業のメモがある。それには

独占は競争を排除するか、否、排除しない。

第一に、独占体内部の競争がある。

第二に、独占体相互の争いがある

カルテルやシンジケートに加盟している資本家たちが、少しでも多くの生産や販売の割り当てを、獲得しようとして競争し、より多くの市場を得ようとして争う。

と言った、内容が書いてある。

この僕も、大学に入って、少しは学んでいたのである。

舗装された道路は、企業にとって、製品や材料の運搬に利用でき、大いに利益を受もたらすものであるが、我々庶民にとっての道路、特に大きな道路は、何も役立たない、それどころか、危ないだけだ、だから、あの産業道路の建設費は、企業が負担すべきである。という、教授の意見を尤もだと思ったものである。


91.神も仏も


神も仏も無いものと、とうの昔に悟りしが

今ここにきて

何の未練ぞ、何の未練ぞ

ああ、神頼み


※大学生活の、ある時期の文章らしい。大学時代は、ノートの隅や紙切れに走り書きしているのが殆どであるので、順番は、かなり前後している。

僕は、真面目な大学生ではなかった。友人に代返をしてもらったり、当時、アルバイト先で知り合った女友達に授業のノートを取ってもらったりして、大学の授業には、ほとんど出なかった。当時は、それを、自慢げに周りの人に話すのが楽しかった。世の中をなめていた。お蔭で、成績は散々だった。僕が大学に入学した頃は、成績の評価は既にABCD方式であったが、少し前までは、優、良、可、不可方式であった。僕は友人にうそぶいたものだ、俺は蚊取り線香だと。つまり、優も良もとらず、取るのは可だけだという意味である。

大学では、真面目に勉強すべきである。でないと、あとで後悔する。

その、極め付きの例を、僕は経験することになる、まさに自業自得であった。

必須科目、経済原論の試験を受けるため、教室に入ろうとすると、友人たちが、やあ、遅かったな、と言って、教室から出て来たのに出くわした。

何しに来た?と友人が言うので、経済原論の試験を受けに来た、と答えた。

すると友人は、今終わったぜ、と言う。僕は驚いて、手帳を見た。

そこには、確かに、試験は3時限目と書いていた。でも、考えてみると、僕には、2という数字を書くとき、横棒を下方へ伸ばす癖があった、それで、2を3と読み間違えたのである。試験前、せめて、一回か二回、授業に出席していれば、こんな間違いはしなかったであろう。お蔭で、経済原論の授業をもう一年間、受ける羽目となった。


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