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浪人詩集  作者: 屯田水鏡
2/48

浪人詩集(2)

4.帰りなんいざ


 帰りなんいざ

 小さなバッグをぶら下げて

 帰りなんいざ、山を越え

 帰りなんいざ、川を飛び

 思い出をいっぱいぶら下げて

 星降る夜の街角を

 駆けて、駆けて、駆けて行く

 帰りなんいざ、君のところへ


※今思うと、君のところ何てあては無かった、寂しい青春であった。


5.スピッツ


 彼は歩き続けた

 彼の後から犬が追ってきた

 小さなスピッツであった

 彼は犬を抱きかかえた

 そして、頭の上まで差し上げた

 クンクンと犬がないた

 夕日が彼の横顔を照らした

 また犬が泣いた・・・・

 彼の目が光った

 涙が一すじ口の所まで流れた

 真っ赤な空がうるんだ

 夕日は彼の横顔をみつめた


※今読んでも、意味不明である。


6.俳句


 バスの窓、手を出しゃ届く枇杷の実二つ━行く時のバスの中にて

 野ぐそして、見上げる空にウグイスの声━山中にて

 新緑の、かおる水辺に、紅あざみ━山中にて

 村里のこみちを走るバスの影━山頂にて

 前を行く友の左手ゆんでにぬれタオル━山中にて

 青い空、足元見れば、犬のくそ━帰って来て。鮮やかなコントラストの効果をねらったものである


※実に下らない


7.山登り


 緑の野原を横切って僕らは頂上へ向かって登る

 頭上の太陽を肩に浴び、僕らの額には汗がにじむ

 坂は急になる、僕らのタオルはびっしょりとぬれる

 上から仲間が来る、笑顔でこんにちわと言う

 僕らも笑顔でこんにちはと言う、仲間は去って行く

 僕らはまた、歯を食いしばって進む・・・

 かすかな流れの音がする、みなは駆け寄る

 リュックを下ろし、水を手にすくう

 きらきらと水が手から逃れる、僕らは流れに口をつける

 ごくりと咽喉が言う、またごくりと咽喉が言う、冷たい水が胃の中を駆ける

 タオルを濡らして顔をふく、火照った頬にひんやり沁みる

 隣の山でうぐいすが鳴く

 「あれが山頂だよ」一人が立ち上がって言う


※この山登りの帰途、僕たちは、山の中腹からバスで帰った。

 バスが、なかなか出発しないので、乗客から不満の声が上がり始めた。

 バス停近くの売店のおばさんが言うには、定刻に発車すると、早く着き過ぎるということであった。

 二十分ほど遅れて、バスは出発した。

乗り込んできた、運転手と車掌は、乗客の様子を察知したが、反対に乗客を睨み返した。

そして、更に唖然としたことには、出発してすぐ、バスを止めて、運転手は、近くで虫を取って遊んでいた子供と、世間話をしたのである。

したがって、バスが出発したのは三十分遅れであった。

 乗客は結局文句を言わなかった。

 なぜなら、バスは断崖絶壁の小道を異常なスピードで走った。

 そして、カーブでスピードを落とすことをしなかった。

 運転手は、ハンドルを目いっぱい切って、手を放して、両手を使って帽子をかぶり直し、ハンドルがひとりでにくるくる回るのをにっこり笑って見ていた。

 バスは結局、定刻通りに終点に到着した。

 もちろん、とんでもない、糾弾すべき、運転手と車掌ではあるが、あんなにドキドキして、あんなに見事な運転技術を、その後見たことが無い。


8.夢


 遠い、遠い、夢の国

 シンドバッドの夢の国

 僕はきのう行きました

 青い小鳥が飛んでます

 チルチルミチルは歩きます

 楽しい夢は終わりです


9.夜


すっぽりと町は夜に包まれた

 街灯の明かりが地面を赤々とてらしている

 遠くで犬の声がする

 さっきまで起きていた弟も寝たようだ

 家の中は少し蒸し暑い、下駄をつっかけて外に出て見る

 ヒンヤリとした風に少し目が覚めるようだ

 月には薄雲がかかっている

 随分天気が続いたな、ここらでひと雨欲しい気がする

 お百姓さんも困っているだろう

 二キロも離れた駅から最後の電車の警笛が聞こえる

 さあ、もう少し頑張ろう、でないとすぐに朝が来る


※この日は、朝から暑かった。私の部屋は二階だったが、すぐ近くの家の二階に、新婚の夫婦がいて、そこは、窓の広い部屋で、私の部屋から中のようすが良く見えた。

その夜、勉強に疲れて、ぼんやりしていると、急にその部屋の明かりがついて、蚊帳の中から、シュミーズ姿の新婦が現れて、シュミーズを胸の上まで、めくり上げて涼を取り出した。私は、思わず照明を消してじっと見てしまった。

 こちらは暗いから、分からないだろうと思ったのだが、その人は、私の方をじっと見ていたのが分かった。

 それから暫く、私は、何となく不安な日々を過ごした記憶がある。


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