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浪人詩集  作者: 屯田水鏡
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浪人詩集(14)

浪人詩集(14)


53.太郎へ


太郎よ、何だってお前は、つばめになりたいなんて言うんだ

太郎よ、何だってお前は、すずめになりたいなんて言うんだ

疲れたのか、太郎、歩き疲れたのか

疲れたら、横になればいいさ、そして大きく息を吸え

そら、道端の草の香りがするだろう

もう一度、大きく気を吸え

そら、小川の匂いがするだろう

みんな生きている、みんな息をしている

そら、道端の草も、小川も、枯れそうで決して枯れない

みんな、精いっぱい生きている

空を見て、山を見て、海を見て、太郎、太郎、太郎

お前も、精一杯生きろ、立ち上がって、足を踏ん張って

歩け、走れ、飛べ、世界の果てまで突っ走れ

みんな生きている、虫も草も空も月も太陽も

そしてお前も


54.私は見た


私は見た

松の陰から突然現れた、あの真っ赤な花を

そう、空は青かった、そう、雲は白かった

でも私はみた

松の陰から忽然と現れた、あの、真っ赤なつつじを


55.暗闇の中に


暗やみの中にもしも一粒の光が見えたら、それは私です

暗やみの中にもしも一粒の光が見えたら、それはあなたです

暗黒の中で、失望の中で、野心の中で、不快の中で

私は苦しくて、あなたは悲しくて

放屁した


56.太郎が死んだとき私は笑った


※55に続き、放屁のことをくどくどと書いている。

面白くないので、割愛します。


57.星の伝説


昔、若者はひとり、旅に出た

ある日若者は恋をした、木こりの娘に恋をした

すみれの花が風に揺れて

若者は、娘の手を取り、山中を駆けた、林の中を、谷川を

暖かい光と風は、二人に微笑んだ

タンポポの花は、二人にささやいた、君たち幸せだね

二人は目と目で微笑んだ

緑の山のてっぺんで、二人はそっと口づけた

白菊の花を髪に差し、娘は笑った

天女の様だと、若者は言った

その夜、満月が西に傾くまで

笛や太鼓の音が、空に響いた

綿雪の降る朝に、椿の花が散るように

新妻は、病に負けた

朝早くに、お日さまより早く、東の空に、光る星、それが私

若者は旅に出た、果てしない、悲しい旅に出た

旅に出て三年目

若者は、東の空に、金色に輝く星を見つけた

寒い朝のことだった

若者は、その星を目指して、旅を続けた

その星に、妻にちなんで、新妻星と名付けた

若者は、その星が、年に一度、東の空に明るく輝くことを知った

旅する、若者の噂は、国中に流れた

ある日、若者の姿は、山の頂上で、忽然と消えた

人々は、若者は、空の星になったのだと囁き合った

以来、二度と、若い旅人の姿は、見ることが出来なかった

その代り、東の空に、美しい星が現れると必ず

その夕暮に、明るく輝く赤い星が見られるようになった

人々は、それを、明けの明星、宵の明星とよんだ


※体のあちこちが、こそばゆくなる。この頃、ゲーテ詩集を読んでいた。


58.台風がやって来る


やけに、蒸し暑いと思ったら、雨が降り出した。

やれやれ、これで涼しくなると思ったら、隣の親父が言う

あんちゃん、大風だ、大風が来るぞ

なんだあ、大風だと、風の野郎、来るなら来てみろ

天を見上げて、腕まくりをしたら、雨脚が鈍った

ポケットに手を突っ込んで、横町の角まで来たら、犬のやろう

俺の目の前で、片足を上げて、小便をしてやがる、ああ、天下泰平だ

何だかむしゃくしゃして、泥んこの道に寝ころんで、空に向かって

また、うそぶいた、なんだあ、風の野郎、来るなら来てみろ

通りかかった近所のかみさんが、怪訝な顔で、通り過ぎる

ああ、天下泰平だい


※なにを言いたいのか不明である。若者の行動は、途方もなく下らない。

そこが羨ましくもある。泥んこの道に寝転んだかどうかは、記憶にないが、

詰まらないことに、妙にこだわるというか、純粋過ぎるというか、角が多

く、昔の映画ではないが理由なき反抗が多すぎる。

とにかく、泥んこの中で転がって、角が取れて、少し丸くなれば良かろう。


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