(想い想われすれ違い、彼らのゆきつく先は……)
読み飛ばし可。
初めて彼に会った時、ただ漠然と冷たい瞳をした人だと思った。人形の様に感情の無い秀麗なその顔に、冷たく澄んだその瞳に、恐怖を覚えた。怖くて、逃げ出したくて、だけどそれは叶わないから。身を震わせながら、せめてもの抵抗に、決して目を逸らす事はしなかった。
いつからだろうか。その姿に怯えるだけではなくなったのは。
その横顔が、冷たいだけでは無い事を知った。人と同じ様に優しさがあり、葛藤があった。人形の様だった彼が、人である事を知った。
守りたいと思った。支えになりたいと思った。誰より孤独なこの人の、傍にいたいと思った。
この気持ちが何であるかは分からなかったけれど。ただ、出来る事なら、彼の傍に居てあげたいと思った――
初めて彼女を見た時、弱そうな女だと思った。目に見えて肩を震わせ、怯えていた。女には見蕩れられる事の多いこの容姿を見て、畏怖されたのは初めてで、それが酷く新鮮だったのを覚えている。けれども彼女は震えながらも真っ直ぐに目を逸らす事なく睨んできた。精一杯に強がるその姿に憐憫の情が僅かに首をもたげたが、政略結婚である以上、そこに情を挟む気はさらさらなかった。
いつからだろう。彼女と過ごす時間が、楽しみになったのは。
真っ直ぐに見つめてくる瞳に宿る強さを知った。彼女の傍は心地がよく、いつの間にか、政務の合間を縫って彼女に会いに行く様になっていた。
くるくると表情が変わり、穏やかに笑う彼女の傍にいるのが、一番近くにいるのが、自分では無い事に苛立ちを感じた。彼女の傍にいる存在に、殺意を覚えた。
その感情が嫉妬と呼ぶものであることに気づいた時、彼女に惹かれている事を自覚した――




