DNA検査
「お子さんの発育状態は、正常ですよ。安心してください」
最近病院では、このような依頼が増えている。
ここはヨハネスブルグ。
数十年前になぞのゴミ置き場が異空間から転送されてきたおかげで、周囲に対して強度の汚染が観測されているため、半径30キロメートルは隔離区域に指定されている。
ヨハネスブルグだけではない、デリー、ロンドン、東京、チューリッヒでも同じように、一部の空間が別の空間に入れ替わってしまった。
その周囲には、監理をするために必要な膨大な人員が配備されている。
さらにそれらの人の家族も移り住んできたこともあり、住宅街が形成された。
その結果、現在では、過去のようなヨハネスブルグではなく、渡航延期勧告も発表されていない。
ただ、事件はいくらでも起きている。
このような突発的な事態に対処できるのは、国連しかいなかった。
今では、連邦政府と呼ばれるその組織は、軍、警察、消防、救急と言った組織が一つにまとまった連邦総局を中心に行政が運営されている。
ただし、急ごしらえのため、いまだに国の制度は存続している。
汚染があるおかげで、子供を産む際には、DNA損傷がないかどうかを確認してもらう必要がある。
それは、国の法律によって、ここではヨハネスブルグを統治している南アフリカによって規定されている。
病院は、このような確認のための患者が大勢来ている。
そのために、DNAの検査専門の病院がいくつも作られている。
なお、DNAが損傷していると確認された子供は、政府が親となることになっているため、母親は出産することになっている。
その後については、誰も知らない。
現在では、除染作業と損傷具合の分布調査が並行して行われているため、損傷の子供は現時点では、確認されていない。
だが、これらの発生源である汚染区域が完全に消滅しない限りは、検査は行われ続けるだろう。