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愛していると言えば、嘘になる  作者: 青砥緑
村の教会の小さな家族
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驚きと

 ウィルは礼拝堂へ戻りながら、改めて情報を整理する。

 自分が選ばれなかったことは、予想済みの事態だったとはいえ少し堪えた。村にとってなくてはならない存在ではないということを突きつけられたのだから。しかし、それによってアーニャやエマに嫉妬を覚えたかといえば、そんなことはなかった。騎士達ほどはっきりとではなくても、ウィルにも彼女達が選ばれた理由が、単純な労働力というだけではないということは想像できたからだ。

 それに何より、アルフレドの自分と相談して決めるという言葉が嬉しかった。半年の彼のしてきたことを認められたと安堵した。大人たちの話に混ぜられて、まして大事な役割を任された。子供だからできないことばかりだ、と拗ねていたことが嘘のように心が晴れた。改めて湧きあがる使命感のようなものを噛みしめてウィルは礼拝堂へ戻った。

 子供達は、自分が守ってやるのだ。力が足りないなら、借りてでも。

 それはあの日、自分の無力に打ちひしがれた末に決意した彼の思いだった。


 礼拝堂の少し手前から半年ですっかり聞きなれた歌声が聞こえてきた。扉を開けば、予想通りアーニャが子守唄を歌っているところだった。ウィルは歌を止めずに視線だけで「おかえり」と言ってきたアーニャに軽く手を振って近づくとそっと耳打ちする。次にエマにも小声で声をかける。小さい子供たちが寝静まったら話があると。


 殆どの子供たちが寝入るとウィルは手招きでアーニャとエマを礼拝堂の片隅に呼び寄せた。先ほど聞いてきた話を聞かせると、二人はいずれも引き取られるということが意外だったようで顔を見合わせていた。

「村に残るか、一緒に別の教会の孤児院へ行くか。二人はどうしたい?」

 問いかければ、エマは「少し、考える。」と言ったきり俯いてしまった。アーニャは何とも言えない顔をしていた。

「ウィル、隊長さん達と皆のこと相談しててくれたんだね。」

「気がつかなかったや。」早口気味にそういうと、ウィルの返事も聞かずに「ちょっとお手洗い」といって礼拝堂から出て行ってしまった。喜ぶか、戸惑うか、何か質問が返ってくるだろうと予想していたウィルは肩透かしを食らってしまった。追いかけて呼びとめたいと思ったが、目の前で考え込んでいるエマを置いて行くわけにもいかない。目だけで扉まで彼女の姿を追うことしかできなかった。


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