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愛していると言えば、嘘になる  作者: 青砥緑
村の教会の小さな家族
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教会を出る日

 アルフレドの願いが届いたのか、村人たちが冬支度の心配を始める頃になって本隊から待ちに待った知らせが届いた。大規模なモンスターの掃討作戦が終了し、部隊の大半を王都へ引き上げるというものである。この教会においても徐々に無人の村に下りてくるモンスターの数が減っていることが確認できていた。家の再建や防護柵の建築も進んでいる。冬になる前に村人達を家へと帰してやれるだろう。一方で今回の襲撃で家計を支えていた家畜をすべて失ってしまったものや、家族を亡くした者など村を離れたがるもの、離れざるを得ないものも出る。彼らは騎士の引き上げに合わせて隣村やもう少し大きな街まで護衛していくことになる。アーニャが面倒を見ている子供たちについても村の家に引き取り手が無ければ王都へ行く途中にある孤児院のいずれかへ引っ越すことになる見通しだ。今年のモンスターの増殖のおかげで身寄りをなくした子供は少なくないので、一か所の孤児院では引き取りきれない。アルフレドは現状の報告に併せて、少なくともこの教会にいる子供たちは同じところへいけるようにと手配を依頼した。

 村へ戻れる日取りが明確になるのを待って、アルフレドは村人にそのことを知らせた。無論、村人たちの喜びは一通りではなかった。最後に村に帰らないものについても、王都まで騎士が同道するので途中の良いところで新たな生活を始めるようにと言い添えた。


 興奮冷めやらぬ村人たちの中で、ウィルの表情は晴れなかった。ここを離れてどこへ行けばいいのか。不安が先に立つ。いつか村に帰る日が来ることは分かっていたし、望んでもいた。ミーナのように親がどこかで生きているかもしれないという希望がある子もいる。そういうものはまずは外へ出なければ親に見つけてもらうこともできない。それは分かっているのだけれど、誰にでも親が迎えに来てくれるわけではない。だが、自分達だけでは慕ってくれている子供たちを支えきれないのも明白だ。



 セオドアはアルフレドからの知らせにざわめく礼拝堂の中で、ウィルとアーニャの様子を見ていた。予想していた通り二人は複雑な表情で無邪気に喜ぶ子供達を眺めている。これまで、途切れ途切れに話してきたアーニャとの会話の中で、彼女が自分だけでなく子供たちの将来を案じていることは分かっている。ウィルもまたそうだということも知っている。無論セオドアも、またアルフレド以下他の騎士達もそれを捨て置くつもりは無い。だというのに、と彼は二人の暗い表情を見て、歯がゆい思いにかられた。以前にも、もっと大人を頼っていいと言ったのに、また自分達を追い詰めている。彼は二人の方へ歩み寄った。

「ちょっと話があるから、子供たちが寝た後でも詰所に顔を出してくれ。」

 セオドアに声をかけられた二人は顔を見合わせてから、神妙に頷いた。

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