6 奇跡の聖女とあだ名された人
よろしくお願いします
私は定時に上がりパインコーン亭に向かった。
カウンター席の一番壁際の席に横並びに座りエールとつまみを頼む。
カリーナがぽつり、ぽつり話始めた。
「アルセラ先輩、私、先輩にみたいになりたかったんです。・・先輩みたいに力強くかっこいい魔法騎士になりたかった。・・だから頑張って毎日鍛えて鍛錬を積んできました。だからあの時、先輩の赤い糸の装具を目の前にして、自分の力を試してみたいと強く思ってしまった。私にもできる、先輩の特別な装具を使いこなせてみせると思ってしまったんです。
・・でも、先輩が魔獣に切りつけられて、後遺症が残り魔法騎士を辞めてしまうなんて・・。私のせいで私の大事なあこがれを壊してしまったっ・・。ズズズ~。
私、今回のことがあって良かったと思ってます。そうでなければ情けないことに私、自分のしたことが大きすぎて言い出す勇気が出なかった。先輩、本当にすみません。今まで話せなくてすみません」
またカリーナが涙汲む。
「カリーナは私のようにならなくてもすごい魔法騎士なんだよ。みんなが憧れる魔法騎士なんだよ。
それに私の重めの装具じゃ、機動力が持ち味のカリーナの良さを消しちゃうでしょ。
私もある人たちに言われたんだ。もっと自分を自慢していい、時間がかかってもありのままの自分を受け入れて好きになればいいって。私も今自分を認めてあげているところ。カリーナももっと自分の魅力に気が付いて」
「ううぅ。自分の魅力にこれっぽっちも気がついてない先輩にだけには言われたくありません」
「な、なんで?!私、今わりといいこと言ったでしょ」
「誰の受け売りですかぁ。先輩には似合わないです、うう」
涙を拭いてはまた涙が溢れるカリーナはすでに酔っ払ったかのようにフラフラになってきた。
いや、まだエール一杯目だ。酔っぱらうには早過ぎる。
「ねえ、カリーナ、気になってんだけどユリウスとはバディあまりうまくいってないの?」
「そうですね、それほどうまくはいってないですけど、今のユリウス先輩は誰と組んでもうまくいかないかもしれないです。ずっと討伐数を気にしていますから。
アルセラ先輩はユリウス先輩をどう思いますか」
「ん?ユリウス?そうねぇ、すごい魔法騎士だと思うよ」
「いえ、騎士としてというのじゃなくて人柄的なことです。
アルセラ先輩は気にしたことないと思いますけど、ユリウス先輩は魔獣の討伐数が部隊一多いことにこだわっているです」
「魔獣の討伐数?」
「ええ。アルセラ先輩がバディの頃は、アルセラ先輩が先行して力で魔獣に相当なダメージを与えて、ユリウス先輩がとどめを刺すことによって討伐数を相当数上げてきたんです。
バディが私に変更になり、私もスピードを持って先行して戦いますが足止め程度のダメージくらいしか与えられない。当然ユリウス先輩の負担も増え時間もかかり、数をこなせない。
私がバディになったとたん討伐数は減ってます。以前のような圧倒的な一番手とは言えない実績です。
ユリウス先輩の焦りは相当なものです。最近もずっとピリピリしてました」
そういえば、本人もカフェテリアでそんなことを言っていた。しかし、私は疑問がわく。
「なんで、そんなに討伐数を気にするの?チームで任務しているのよ。討伐任務が完了するなら誰が倒しても同じじゃない」
任務中はとにかく必死だし、私は毎回自分がどれだけ魔獣を倒したか数えたこともなかった。
「そもそも魔獣の殲滅が目的で共闘しているのだから、先行する者、陽動する者、止めを刺す物それぞれが得意な役割を果たして任務を行えばいいはず。誰が何頭倒したではなくチームで殲滅させるものだと私は思っていた」
「ふぅー。本当にそうですよね。アルセラ先輩ならそう考えると思いますし私もそう思います。
でもユリウス先輩は違う。
実家との関係とか、あとはかっこつけたい虚栄心とかですかね?装具も一人だけ真っ黒にしてますし。
とにかく討伐数にしても恰好にしても一番注目を集めたい人なんですよ」
「あー、ユリウスはそういうとこあるかもね。
そういえば、査問会の前に話した時はこれまでの討伐数は私のおかげだったと言われてるとか話していた」
「ユリウス先輩の一番へのこだわりは本当に闇深いんです。
私、・・ユリウス先輩がアルセラ先輩と私の装具を取り換えたんじゃないかと思ってます」
「え?なんのために」
「アルセラ先輩がユリウス先輩よりも注目を浴びる存在だからじゃないでしょうか」
「私が?それはないよ。だって討伐帰りなんていつも、さながらユリウスの凱旋パレードで私なんか邪魔者扱いだったし」
「確かに年頃の女性はユリウス先輩狙いでしたけど、それ以外の人はみんなアルセラ先輩に向かって歓声を上げてましたよ。
スタイルもいいし、長い髪をなびかせてる凱旋するアルセラ先輩はかっこいいんですよ。だから、私もですけど部隊の女騎士はほとんど髪の毛伸ばして先輩と同じ髪型にしてます。
平民ながら莫大な量の魔力を持ち剣さばきも一流で力も強く次々と魔獣をけちらしてく。部隊内でも貴族出身の魔法騎士はプライドが高いから面と向かってアルセラ先輩に言わないですけど、話題にはよく出てましたよ。動きが凄くてとてもじゃないけど真似できないって。
騎士団への入団希望者も男女問わず増えてるそうですから。たぶん、アルセラ先輩のおかげです。知ってます?ここ数年の騎士募集のポスター。明らかにアルセラ先輩っぽい姿絵ですから」
「え?そうなの?確かに子どもからはよく声援をもらってたと思うけど」
ちらっとセレンティア様のことを思い出してちょっと顔が熱くなる。
「アルセラ先輩は周りの評判なんて全く気にしてませんもんね。そこが魅力でもあるんですけど、だからこそ評判を気にして頑張ってるユリウス先輩にとっては、無自覚に注目を搔っ攫っていくアルセラ先輩が面白くない存在だったのではないでしょうか。それでちょっとした悪戯をした」
「そんな理由でそんなことする?」
「わかりません。私の勝手な憶測なのでとても査問会では言えませんでした。
でもユリウス先輩、アルセラ先輩を村の救護院に運び込んだ後、私が何も言ってないのに”ア・ル・セ・ラ・の装具は隠しておけ”って言いました。初めから取り違えを知ってるような口ぶりでした。そもそもあの時私が隠さずに報告していれば・・」
「うーん、そうかぁ。ユリウスの気持ちは正直わからないけど。
確かにその時に報告していたら補修部のみんなは責任を感じることもなく苦しまずに済んだはず。
私は今は補修部のみんなの思いを知っているから、その件に関してはカリーナもよく反省してほしい。もちろん、私も深く反省する。本当に武装具に対してもっともっと心配りしておかなければならなかった」
「はい、猛省します」カリーナは涙を拭いて真っすぐ私を見て言い切ってくれた。
散々話して飲んでカリーナもお酒が回ってきた(私は酔っぱらってない)様子だ。
いつの間にか他の客の姿もなくなってそろそろ私たちも帰ろうかと思い始めたころ、コトンとベリーパイがのった小皿が置かれた。
「アルセラ、カリーナ、これ私たちから奢り」
パインコーン亭のおかみさんが少し困ったような顔をして話しかけてきた。
「ごめんよ、突然、話しかけちゃって。
アルセラもカリーナも今夜はここ数か月で一番すっきりした顔をしてるなと思って」
「フフありがとう、おかみさん。うん、そうですね、ようやく気持ちに区切りがつけられそうです。今までも付けていたつもりだったんだけど」
「私もです。また初心に返って一からやり直します」
「そうかい、それは良かった。
アルセラ、騎士を辞めてそろそろ4ヶ月くらい経つかい?アルセラは故郷のメッツァの教会には連絡を取ってるんだよね。何か言ってきたかい?」
「ええ、教会には毎月仕送りしてますから。いつもお礼の手紙ももらってますよ。ちょうど来月神父様が王国教会協会の会合か何かで近くまで来るから、足を延ばしてこちらに寄るってありました」
「そうかい、怪我のことも知らせたんだね」
「あ、そういえば怪我の事ははっきり伝えてなかったかも・・心配するかもなと思って伝えるのをためらっていたら、なんか時間も経って余計にいい出しにくくなってしまって」
「ええ?なんで。じゃあアイーダはアルセラの怪我の事をまだ知らないのかい」
「アイーダってシスターアイーダのことですか。おかみさんなんで知ってるんですか?・・はい、たぶん知らないです」
おかみさんがカウンターに身を乗り出すように私に近づき小声で話した。
「どおりでアルセラが魔法騎士を辞めてしばらく経つのに、アイーダが何も言ってこないわけだ。
知らないのかい?アイーダは聖魔法が使えるんだよ」
「ええ?聖魔法?」
カリーナが驚きの声を上げる。
「それなら先輩の魔素を取り払えるかもしれないじゃないですか?!でも聖魔法なんて使える人が本当にいるんですか」
カリーナが驚きの声を上げるのも無理はない。
聖魔法はかなり珍しい魔法だ。聖魔法の使い手が実際にいることを私は今まで聞いたことがない。
一般的な治療魔法は患者本人の治癒能力を促進させて治すイメージで、その人自体の体力が治り具合を左右させる。
私は体が強かったので魔獣からの結構な傷を受けた割には治りが良かった。治療を担当した治療師には私の脅威の治り具合を驚かれたくらいだ。それでも魔素の影響は残った。
聖魔法はその仕組みがあまり解明されていない魔法だ。なんせ使える人が極端に少ない。
聖魔法にかかれば患者の体力、治癒能力関係なく治ってしまうらしい。魔素も取り除けると言われている、まさに魔法の中の魔法だ。
「アイーダは私と旦那がまだ魔法騎士をやっていた頃、奇跡の聖女とあだ名された人さ。
どんな重病も大けがも治してしまうと評判で彼女のいた王都の治療院は連日患者の列が絶えなかったって話さ。
それでとうとう王家が保護を名目に囲ってしまって、国の管理の下治療が行われるようになったんだよ。高額な治療費を払わないと治療を受けさせてもらえなくなって、ほぼご貴族様専用になっちまった。
でも一年程で力を酷使しさせられ過ぎて、ついには魔力枯渇症状になってしまって治療が全くできなくなってしまったんだ。
当時、王太子と婚約までしたんだけど、王家は治療ができないなら用はないとばかりに王太子と婚約破棄させてメッツァの教会に押し付けたんだよ。どうだろ、あの騒動からもう20年近くになるかねぇ」
「そんな!初めて聞きました。シスターアイーダはいつも穏やかに笑っている人で、そんなひどい目にあっていたなんて、知らなかった・・・」
通常減った魔力は寝たり飲食によって時間と共に回復するのだが、魔力枯渇症状は回復を上回るほど魔力を使い続けることで、魔力の回路が壊れて魔力が回復しなくなってしまう症状だ。
魔力操作が未熟な子どもがなりやすく、小さい頃にまず教わることだ。
軽症なら時間をかけて魔力回路が回復し魔力も戻ることがある。それが魔法が使えなくなるほどなんて、どれだけ酷使しさせられたのか。
おかみさんが声を潜めた。
「当時を知る者も皆、王家が絡んでいるから口を開く者はいないのさ。でも、ここだけの話アイーダの魔力は回復しているんだよ」
「俺の目はアイーダに治してもらったんだ」
左目に眼帯をつけたパインコーン亭の大将も話に加わった。
「俺は魔法騎士時代に魔獣に両目をやられたんだが、アイーダがわざわざメッツァからお忍びでやって来てくれて治してくれたんだ。本当に奇跡のようだった。もう8年程前の話だ。
左目はつぶれていたのにすっかり治っちまったから、怪我を知ってる奴らに不審がられるだろ。だから俺は人前では左目に眼帯をしてる。
当時アイーダは大した額でもないのに礼を受け取ろうとしなかった。だから趣味の料理を振る舞ったんだ。そしたら美味しいって褒めてもらえて、それをきっかけにこれからは料理の道に生きようとこの食堂を開く決心をしたんだ。全く頭が上がらない存在だよ」
「そうだんたんですか。だからシスターアイーダが調合する薬草は効きがいいのかな」
「アルセラ、一度アイーダに話をしてごらん、もしかしたら治してもらえるかもしれないよ。魔法騎士にだって戻れるかもしれないんだよ」
「そのアイーダさん?も聖魔法がまた使えるようになったなら別に周りに隠さなくてもいいんじゃないですか」
カリーナの言葉におかみさんが頭を振る。
「一度にかなりの魔力を使うらしくてね。患者の症状によっては魔法を使った後2日は寝込むって聞いたよ。
たぶん王家が魔法が使えると知ったらまた囲って無理やり酷使させるだろうね。
アイーダはできるだけ目立たないように生活したいって言っていたよ」
「そうかアルセラ先輩の後遺症がもし治ったら、アイーダさんの聖魔法がまだ使えるって周囲にバレちゃう可能性がありますよね。
アルセラ先輩が魔法騎士を辞めたことを駐屯地内で知らない人はいませんから。もちろん後遺症が治るなら私も嬉しいですけど・・」
「そうなんだよねぇ・・」
「確かになぁ・・」
私以外の3人がうーんと唸っていたが、私の気持ちは不思議なほど揺ぐことなく決まっていた。
負傷した後しばらくは魔法騎士にまだまだ未練はあった。
再び魔法騎士として討伐に出られれば、喜んでくれる周りの人たちも多いだろう。
でも、そうしたら否応にもシスターアイーダの存在が表に出てしまう。シスターアイーダを望まない状況に追い込んで、犠牲にしてまで私は魔法騎士に戻りたいとは思わない。
魔法騎士は私以外にもいる。
魔法騎士ではない私を認めてくれる人もいる。
「私はこのまま後遺症と付き合っていきますよ。日常生活は困ってないし。
確かに魔法騎士として魔獣と戦って国を守ることはできないけど、魔獣と対峙するだけがこの国を守ることじゃないから。私は今できることを精一杯やることにします!」
「ああ、ちげえねぇ。俺たちだって今もパインコーン亭ここで国を守ってんだったな」
大将が二かッと笑って大きく頷いた。
シスターアイーダの話を聞いてから2週間ほど経ち、西の国境近くのメッツァからはるばる北部の街ブオリまで神父さまが来てくれた。
他に適当な場所もないので、いつものパインコーン亭で食事をすることにした。
「アルセラちゃーん、元気にしてた?あ、そうだ!怪我をしたと聞いたよ。何で儂にすぐに知らせてくれなかったの~。儂、悲し―」
「えっと神父さまご無沙汰しております。お元気そうで何よりです。私も元気ですから、泣きまねはやめてください」
神父さまは若干淋しくなった頭頂部を見せつけながら両手で顔を隠し下を向いて「しくしく」と言っている。
神父さま、しばらく会わないうちにキャラ変していた。以前は、もっとどこにでもいる感じの神父さまだったのに。
「儂ね、教会協会の全国会議に参加して、ライバルの王都の神父からアルセラが怪我をしたことを聞いてもうほんとにびっくりしちゃって。何も聞いてなかったしー。ライバル神父が嘘ついてるんじゃないと殴りかかろうとしたところを周りに止められてね。詳しく聞いたら魔法騎士も辞めたと知って、またびっくりしちゃってぇ。アルセラの仕送り額全く変わっておらんし。本当に混乱して危うくはげてしまいそうだったー」
「・・女神様に仕える神父さまが暴力は良くないんじゃないですかね。それから神父さま、その口調誰の影響ですか。気持ち悪いですよ。ついでに言わせてもらうと若干手遅れのような・・・」
「えー、こういうのいまどきの若者たちの間で流行ってるんじゃないのー。あの神父嘘を教えおって、受賞を逃した腹いせか。神父の風上にもおけんわ」
「ヒドイ話デスねー。神父さま、連絡が遅くなってすみません。実は魔獣に切りつけられて、その際魔素が体に入り込んで時々痛みが走るんです。今は騎士を辞めて武装具補修部にいます。給与は多少減りましたが、仕送り金額を下げる程減ってはないんですよ」
「そうか、辛い思いをしたね。もしや、我々からの期待が重荷なっていたか、すまなかったな」
口調も様子もすっかり元に戻った神父さまは慈悲深く私を見つめ、そして頭を下げた。
「いえ、孤児院のみんなからの手紙や絵は励みになっても重荷になんてなってませんよ。ただ、騎士として戦ってない私の現状を知らせるのは、孤児院のみんなをちょっとがっかりさせてしまうかなと思っていたのは確かですけど」
僅かに声が震えてしまう。昔から神父さまを前にすると張りつめていた気が緩んでしまう。
「やはり、すまなかった。これまでのアルセラの頑張りに我々は無邪気さに隠して、ただただ無責任に期待という名の重荷を背負わせておっただけだった。もっとアルセラ自身を甘やかしたり支えるべきだったのに私の力不足だ。すまなかった。
そしてありがとう、アルセラ。よう頑張ったな、本当にすごいぞ。
辛い思いをしても腐らず、人を妬んだり恨むことなく真っすぐ育った、儂の自慢の子どもの一人じゃて」
「周りで支えてくれた人たちがいてくれて・・、その人たちがいなかったら私も、どうなっていたかわかりません」
流れる涙はぽたぽたと膝を濡らした。
「よしよし、アルセラは大きくなっても泣き虫じゃ。腕っぷしは強いのにな。アルセラは本当によく頑張ってる」
いつかのヴェルのように頭をなでられた。私もう22歳になるのに。
「そうじゃ、聞いてくれるか。アルセラのおかげで、本年度のベスト教会アワードをメッツァ教会が受賞したんだ。この前の全国大会はこれの表彰式があって参加したんじゃよ」
「おめでとうございます!凄いですね。ベスト教会アワード、・・て、なんですか」
「うんうん、ありがとう。このアワードは王国内の教会中で最も優れた活動をした教会に贈られる名誉ある賞じゃ。
実はアルセラから仕送りを送ってもらっていたじゃろ。メッツァ教会としては定期にこれだけの額が収入としてあるのは本当に助かったんじゃ。
孤児院の子どもたちにもな、毎年お下がりじゃない自分だけの洋服を誕生日プレゼントとして渡したり、おやつが週に3回出るようになったり。
しかし、ただ施されておるばかりじゃいかんからな。労働をする対価として駄賃を渡すことにしたんだよ。アルセラの仕送りを元手にな。
駄賃といっても僅かだが、子どもたちの意識も変わってなみんな一生懸命励んでおるよ。
薬草作りの手伝いや大きな子どもたちは町に出て清掃や草むしりなどを、小さい子どもらも教会や孤児院内の掃除などできることをやり教会から駄賃を出す。この活動が認められ今年度のベスト教会アワードをもらったんじゃ。
フォフォ、幼い子どもたちに人気の仕事があってな。教会にある女神様像を拭く仕事なんだが、もう毎日小さな子どもらが雑巾を持って行列ができる人気ぶりでの、おかげで我が教会の女神様像はいつもピカピカじゃ。
もし女神様像ピカピカアワードがあったら、これもメッツァ教会が間違いなく受賞するわ。フォフォフォ」
「そんなふうに私の仕送りを使っていただいたんですね、ありがとうございます。お役に立ててうれしいです。フフフ、私も見てみたいです、ピカピカの女神様像」
「そうじゃろ。どうだろう・・アルセラよ、教会に帰らぬか。一度アイーダと話してみても良いのじゃないかのう」
神父様がちらりと大将とおかみさんの方を見ながら言う。
「いえ。神父さま。私はこのままここに残って補修部の仕事を続けたいと思ってます。どんな私でも受け入れてやるって言ってくれた人がいるんです」
「そうか、アイーダの話は聞いておるようじゃな。それでもここに残る決心をしたか。わかった。アルセラの決めたことを応援しよう。
しかしアルセラにそんなことを言ったのはどんな人物だ。一度会ってみたいのう」
「あ、今の職場の先輩です」
「ふむ、もしや金髪で緑目のちょっとへらへらした感じの男かの?」
「ええ、神父さま凄い!そんなことも分かるんですか?!」
「いや、まあこれくらい生きておるとな・・。
けっこう前から向こうのカウンター席から、チラチラこちらを見たり手をひらひら振っておる者をそうそう無視し続けるのも限界じゃて。かなりしつこい奴じゃな」
「え?向こうの?」
振り返るとエレクシさんが手を振りながらカウンター席から立ち上がってこちらに向かってきた。
ありがとうございました




