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15 捕獲しました

 不審な男は周囲をきょろきょろと見渡すと、廊下へ足早に歩いていった。リオンとエミリアは目を合わせて頷き、気づかれないように男の後を追っていく。


 男は、夜会の参加者は立ち入らない屋敷の奥、階段をのぼって二階まで歩いている。そして、部屋のドアをひとつひとつ目視すると、ひとつの部屋で立ち止まる。周囲を警戒しながら、男は静かにその部屋に入っていった。


「入っていきましたね」

「ああ。エミリアは巡回中の騎士団へ声をかけてくれ。俺は部屋の前を見張る」

「わかりました。リオン様、くれぐれも気を付けてくださいね」

「エミリアも、絶対に無茶しないでくれ」


 リオンはエミリアの目を見て厳しい顔で言う。


(リオン様、よっぽど私の行動が心配なのね。心配かけてしまってるのは私のせいなんだろうけど)


 リオンに心配されるのは存外悪くないと思ってしまっていて、エミリアは苦笑する。リオンへ小さく頷くと、エミリアは歩いてきた来た廊下を戻っていった。


 部屋の中では何かごぞごぞと物音がしている。いつでも男が部屋を出てきてもいいようにリオンは部屋の前で仁王立ちしていた。音がやみ、ドアがゆっくりと開かれる。不審な男がリオンの姿に気付いて、目を大きく見開いた。


「貴様、この部屋で一体何をしていた?この屋敷の人間ではないだろう」

「チッ!」


 男はすぐに部屋の中へはいり、窓の方へ走っていく。リオンは男を追いかけて部屋の中へ入るが、男は窓を開いて窓の外から飛び降りた。


「へっ、捕まってたまるかよ」


 男は着地してそう言い放つと、走り出す。だが、すぐに足を止めてまた舌打ちをした。男の目の前には、ドレス姿で構えているエミリアがいる。


「ここは絶対に通さない」

「はあ?たかが令嬢ごときが何を言う!」


 男は懐から短剣を取り出してエミリアへ振りかざす。エミリアはそれを避けるが、ドレス姿なので動きずらい。避けることしかできず、エミリアは避けながら少しずつ距離を取る。

 エミリアはくるっと一回りして男の背後に回るが男はすぐにエミリアの方を向き、エミリアへ短剣を振りかざした。


 だが、エミリアはそれをしゃがんでよける。すると、男の目の前には恐ろしい形相をしたリオンがいた。リオンは短剣を持つ男の腕を薙ぎ払うと、もう片方の手の拳を男に向けた。


 メリッと男の頬にリオンの拳がクリーンヒットする。そのまま男はものすごい勢いで吹っ飛ばされた。


 ドオオオン!


 ものすごい轟音と共に、男は壁に激突し、めり込む。男は、気を失ったまま地面に倒れこんだ。


「リオン様、お見事です」


(よかった。あの部屋の窓の下に待機していたのは正解だったわ。男が窓から飛び降りれば、リオン様もきっと同じように飛び降りてくる。リオン様の方に男を誘導すれば、きっとリオン様がどうにかしてくれると思ったけど、算段通りだった!)


 エミリアは嬉しそうにリオンを見上げて微笑むが、リオンは神妙な顔をしている。 


「そんなことより、エミリア、怪我はしていないか?」


 リオンはエミリアの手をとりエミリアを立ち上がらせると、エミリアの体や顔、あちこちを見て心配そうに尋ねた。


「私は大丈夫ですよ」


 ほら、と言うようにエミリアは両手を広げて見せると、リオンはそんなエミリアに抱き着いた。


「えっ、リオン様!?」

「よかった、エミリアが無事で本当によかった」


 リオンがエミリアを抱きしめている間に、騎士たちが駆け付けたようでバタバタと近くを走っている音がする。


「あの、リオン様、人が……」

「そんなの構わない。今はエミリアのことが一番だ」


 そう言って、リオンはぎゅうっと抱きしめる力を強くする。


「おやおや、お熱いことで。二人とも、不審者を見つけた上に捕獲までしてくれてありがとうな」


 近くからカインの声がする。足音と話声からするに、どうやら不審者は騎士団に連行されて行ったようだ。


「さて、壁を壊したことについては騎士団の方でなんとかするとして、主催者が二人に礼を言いたいそうだ。夜会は中止せずに続けるそうだし、これからダンスも始まるようだぞ。二人で行ってくるといい」




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