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悪魔の本質

 「踊りましょうだぁ....?何洒落た寝言言ってやがんだ。寝言なら寝て言えってんだ。」


 「主様はお洒落に興味がない方ですからね。冗談が通じない事は分かっていましたがモテませんよ?あの少女にも。」


 ブチッ


 太いゴムのような何かの切れる音がした。その瞬間ベルフェゴールのこめかみには無数の青筋が立っており、その何本かが切れて内出血が起きていた。色白なベルフェゴールの肌にはアザが生まれ、思い切り殴られたかのような痛々しいシミを作っていた。


 さっきの音はベルフェゴールの血管の切れる音だったようで、青筋が切れるという言葉があるがあの言葉はベルフェゴールにとって比喩ではなかったようだ。


 しかし一瞬にしてアザのような内出血は色が薄くなり、完全に元の健康的な肌色に戻っていた。


 「怠惰故の特性ですね。流石です。」


 「オイ、しつけぇぞ。俺がアイツに恋してるだと?ガキじゃねぇんだから色恋沙汰に繋げるんじゃねぇ!」


 ミーシャへ向けて手刀を放つがミーシャは一瞬にして空中へと跳び、体を捻った。避けられたことでベルフェゴールの手刀は届かずに空を切ることとなってしまった。


 「チッ。」


 「おや、手刀のようなただの暴力など芸が無いですね。このように美しく行きましょう....!」


 懐から取り出した物は三節棍のような物だった。美しさなど微塵も感じられないような無骨な物だった。

 ただ一つ、禍々しいと感じられるものが取り付けられていた。3つの棍棒のうち両端2つに鎌が付けられていた。まるで鎖鎌のようだ。


 「ちっ....!なんつーもん使ってやがんだ!」


 「主様が帰らないと仰るのならばこちらも実力行使でいかせていただきます。」


 心底ダルいと吐き捨てるベルフェゴールであった。

―――――――――――――――

 「なんか先生達騒がしくない?」


 休み時間になるとすぐに教師陣が一斉に職員室へ向かい、ただ事ではなかった。


 「なんかグラウンドでよく分からない砂嵐、地盤沈下、その他諸々の小規模な天変地異っぽいものが起こってるらしいよー。」


 「へ、へぇ....」


 絶対にベル君だ。ベル君は何と戦ってるのやら.....大体なんでうちの学校で?


 「こりゃ5時間目の体育は無しかねぇ!」


 「瀬那ちゃんやりたくないだけでしょ....」


 「へへへ。まぁねー。結依は体育好きだし残念か?」


 「少しね....でも私達3人の中でも2人は運動嫌いでしょ?私だけ残念がってもどうせ同意なんかしないでしょ?」


 『私達運動嫌いでーす。』


 「はは....」


 「これは代わりに自習かな!遥、今のうちに絵しりとり始めておこうぜ!」


 「睡眠時間確保だぁ!」


 運動が苦手な生徒からしたら体育など疲れるうえに汗をかくだけの教科でしかない。遥と瀬那は運動が得意なタイプでは無いのでこの事態には胸を高鳴らせていた。


 「2人とも気が早いなぁ。まだどうなるか分からないよ?」


 「おいおい結依くん、君は分かっていないね。今私たちが体育でやっているのはサッカー!サッカーを室内でやろうだなんていくら脳が筋肉に侵されている体育教師でも考えるはずが―」


 「おーい、お前ら聞いておけー。5時間目の体育はグラウンドから体育館に移動だ。間違えずにちゃんと覚えておけよー。」


 『.....』


 「....2人とも?」


 『おのれ体育教師め!!』


 学年で一番仲が良いのではないかと思うほど揃った遥と瀬那の心からの叫びであった。


 「あ、あははは....」

―――――――――――――――


 「バン」


 空気が振動し、その直後に大地が揺れ動いた。辺りでは爆発跡のようにクレーターがいくつもできていた。千切れた鎖や叩き折られた鎌の残骸が転がっていた。


 「オイ、俺はテメェをここまで頑丈に作った覚えはねぇぞ?」


 目の前には散々使い古されたボロ雑巾のような見た目になったミーシャがフラフラとした状態で立ち上がり、自嘲気味に笑って言った。


 「そうですかねぇ。私は結構耐久だけならあると思っていましたよ?」


 鋭い瞳はベルフェゴールをまっすぐ捉えていたがその瞳はベルフェゴールへの憎しみなどではなく、単純な恐怖がこもっていた。


 「なんだよ、まだ軽口叩けるじゃねぇか。」


 「もう一度お聞きしますが私と共に帰る気はないのでしょうか?」


 「そりゃ勿論。さてと、じゃぁこっちも聞くことがある。テメェは誰の差金でここに来た?」


 「言ったはずです。私自身の決断で―」


 「お前自身の決断なんてありえねぇんだよ。今回はピンポイントでここに来た。しかもアイツの存在を知った状態でな。」


 ベルフェゴールにはおおよその見当はついていたがあくまで憶測にすぎなかった。ベルフェゴールは直感での行動が嫌いなタイプなのだった。


 「大方予想はついてるがどうせあのジジイだろ?俺を連れ返せだのなんだの。」


 「何度も言ったはずですよ。そんな命令を受けてなどいないと。」


 「そうかよ。お前は賢く作ったつもりだったがそうじゃなかったみてぇだな。俺は俺の思うように動かねぇ眷属はいらねぇんだよ。お前を殺す、今、ここで。」


 ベルフェゴールの決して大きくない体躯からとてつもない殺気が溢れた。自分の主人の見たことのない覇気にミーシャは身体中の細胞が強張り、毛が逆立つのを感じた。


 (なるほど、今まで主様に消されていった同族たちはこのような気分だったのですね。)


 死の恐怖を味わいながらベルフェゴールに八つ裂きにされることをぼんやりと考えながら目を瞑ろうとした瞬間。


 「ストップ!」


 さっきまで聞こえなかったはずの声が荒れ果てたグラウンドに響いた。

 ベルフェゴールとミーシャは揃って声のする方向へと顔を向けた


 「....テメェ」


 「何故あなたがここに....?」


 遥だった。

 意外な登場人物に2人は驚き、動くことを放棄していた。今の遥には今朝のような締まりのない笑顔は浮かんでおらず息を切らしながら真面目な顔付きで2人を目の中に捉えていた。


 「何しに来やがった....」


 「ベル君を止めに来た。」


 「へぇ....お前を殺しに来た悪魔に情でも湧いたか?今この瞬間目にしただけの俺の“失敗作”に?」


 「どんな状況なのかは私には全く分からない。見当もつかない。でも好きな人が目の前で殺しをするのを見たくない、目の前の女の子を助けてあげたいだけ。」


 「.....」

 「.....」

 「.....」


 「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!そういやお前頭おかしいんだったなぁ!やっぱ何考えてんのかわっかんねぇ女だ!」


 「あなた、何を言っているんです?私たちのような悪魔などあなたたち人間にとって有害でしかない存在ですよ!?」


 ミーシャは自分を助けようとしている遙に対して正気を疑うような目を向けている。唯一の希望である遥のことすらも拒む死に急いだ少女のようにしかみえないがミーシャの言うことは至極真っ当であった。


 「考えてることなんて今言ったよね?私は私の好きな人が目の前で殺しをするのを見たくないだけなの!君のことは知らないし私の命なんてベル君が守ってくれるの。」


 「オイコラ、テメェ何勝手なこと言ってやがんだ!テメェの願いは聞いてやるけどわがままを聞くつもりはねぇんだぞ!どけ!」                    

「いくら主様が先程まであなたを守っていたとしても今の状況では話が変わってきます!邪魔をしようとしたら十中八九あなたも殺されます。説得しようなんて無駄ですよ!」           

 

 すでにミーシャから遥への殺意は消えていたようで遙の身を案じて逃げるように促している。

 

 「もう一度お願い。ベル君、やめて。」

 

 「ふん、自分の本音すら出せずに俺への言葉を嘘で固めて自分でさえ分からなくなった奴の言うことなんて誰が信じるかよ。」


 「....」


 「こっちはずっと分かってんだよ。テメェの言葉に本音なんか全く混ざってねぇだろ。俺を好きだのなんだのあんなことよくもまぁ言えたもんだ。」

 

 「....じゃないもん」


 「あぁ?」


 「それだけは完全なじゃないもん!」

 

 「それは俺が昔の男の姿をしてたからだろ?」


 「.....」

 

 遥は黙っていた。何かを考えているかのように目が動き、ベルフェゴールに向いて一瞬で別の方向へ向きを変えた。足が震え、やがて意を決したように拳を握ってベルフェゴールへ向き直った。


 「3年前、私の幼馴染の渡が消えちゃったの。みんなは事故だとか誘拐だとか言ってたし警察の人達も捜査を打ち切っちゃってご両親もお葬式を挙げて誰も渡が生きてると思ってなくてずっと辛かった。でも私だけは諦めたくなかったの。それでね、ちょうどそのタイミングから私にも霊感とか感じることができるようになった。偶然とは思えないよね?それから私は昔から渡と一緒にやってたみたいに儀式とかを続けたんだ。何か分かるんじゃないかって思いながら、天使にでも悪魔にでも願うために。」


 遥の言葉には恐怖と希望が混ざっていた。その言葉を聞いたベルフェゴールは黙っていた。ベルフェゴールにも何かの迷いが生じているように目が泳いでいる。


 「ねぇ、渡なんでしょ?その体、声、顔。全部覚えてるよ?私忘れてなかったよ?」

 

 もはや遥の瞳の焦点は合っていなかった。瞳孔が開き、脂汗をかきながらふらついた足取りでベルフェゴールへと歩み寄る。


 (コイツ、ミーシャとのやり取りとアイツの体に反応しておかしくなり始めやがった。全てを話すかここでアイツとの契約を無効にするか.....。)


 契約の無視は悪魔にとって破滅と同じ意味を持つが契約者との関係が薄れている今ならベルフェゴールに不可能なものではなくなっている。


 『おい悪魔、騒がしくて可愛らしい俺の幼なじみを守ってやってくれねぇか….』


 ふっとある男の顔がベルフェゴールに浮かんだ。彼にとっての何かが揺らいだ。遥に全てを話すのか。ここで全てを無かったことにするのか悩んでいた思考が一気にクリアになった。


 「渡ぅ、私だよ、遥だよ?覚えてない?幼馴染の鷹山遥。」


 さっきまで声を張り上げて仲裁に入ろうとした勇気ある遥の顔は今にも泣きそうだ。目には涙が溜まっていて声も震えている。

 

 「少し前、3年前の話をしてやるよ。」


 「3年前って....やっぱり何かが!?」


 「―愛するものを守るために悪魔に魂を売る契約をした男がいたんだよ。」

 言い訳をさせてくださいお願いします。

 更新が遅くなった理由が2つあってですねぇ。1つが自分は高校生故にテスト勉強、課題、部活etcで時間管理が上手くいかなかったんです....

 2つ目が致命的なことにキーボードが動かなくなってスマホのキーボード入力を使ってたんですよ。それだけならまだしも完成した頃にデータが消えちゃったんですよ実にまずいっすよね。

 ということで投稿が遅くなりました。サボりではないです。

 と、前置きが長くなりましたが第4話完成しました。まだ読者の方は少ないですが楽しみにしてくださった方がもし1人でもいてくださったのなら大変お待たせしました。

 『お、流れ変わったぞ?』と思った方はいるかもしれませんが大丈夫です、想定内です。明るく楽しいだけの異種族ラブコメなんてつまらないじゃないですか。悪魔ですし。

 感想や反応もお待ちしております、参考にもさせていただきたいです。では第5話でお会いしましょう。

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