運命と悪魔の遭遇
私の名前は鷹山 遥。ごく普通の平凡な女子高生。
私は何か、不思議なものに憧れていた。
そんなオカルトやSFなどを小学生ならまだしも高校生になってまで追い求めている自分を周りは変な目で見ていた。そりゃそうだ。
そこそこの年の女子高生が黒魔術や悪魔召喚などにハマっていたら周りは正直引くだろう。
誰だってそー思う 私だってそー思う
周りからしたら『何言ってんだコイツは』としか思えない。我ながら言ってて悲しくなること言うじゃないの。
だがこの私“鷹山 遥”は今この瞬間にそれらを信じていたことが間違っていないと知った。
「よぉ、お嬢ちゃん。」
そこに立っていた“彼”はシニカルに嘲笑うかのように見下すかのように笑った。
「お前の望みを言え。どんな望みも叶えてやる。お前が払う代償はたった一つ。それは…」
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今日も今日とて訪れる退屈な授業が終わり、担任からの連絡事項を聞いた後の生徒たちは部活に行ったり、そのまま帰るなどそれぞれである。
「ふぅー、やっと今日も学校終わったー。」
「はーるかっ!」
「うわっ!びっくりしたぁ.... 瀬那どうしたの?」
「ふっふっふ、実は今日ね、慎也くん達とカラオケ行くんだけど遥もどう?」
「ほう?2年間ずっと片想いをしている坂上慎也くんとカラオケですかぁ。」
「ち、違うもん!そんなんじゃないもん!そ、そういう遥だって運命の人がどうとか言ってなかった?」
「う゛っ..... いつの話か忘れたけどよく覚えてたね....」
「なんか占いでは運命の人がそのうち現れるとか言ってたはずじゃない?」
「そ、それは.... あー!そういえば私予定あったんだー!」
「あ、逃げた!それにいつもそんなこと言って一緒に遊ばないじゃん!遊びは学生の本分だよ!」
「学生の本分は勉強だよ。また機会があれば誘ってよ。」
「むぅ.... まぁ良いでしょう。良いとしましょう。今度は絶対だよー!」
「うん。また今度ね。」
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学校が終わり、部活に行くわけでも友達としゃべるわけでもなく私は通学路にある古風なオカルトショップへと向かった。
店に入り、今日はどんな事をしようかと店内をフラフラしていた。何かと怪しいものばかり置いてあるがどれも見ていて飽きないので嫌いではない。ふと1冊の本の表紙が目を引いた。それはおどろおどろしい怪物のイラストと共に一つの単語が書いてあった。
「悪魔召喚....?」
降霊術や召喚の類は何度か試したことはあるが当然のようにことごとく失敗である。もちろんそんな事は成功しないだろうということは分かってやっていた。だが成功しないと分かっていてもロマンというものはあるものだ。雰囲気や気分などで楽しめればそれでいいのである。
「やったことないしこれをやってみようかな。」
私は本と召喚に必要なものを手に取り、レジへと向かった。
「遥ちゃん、今日は悪魔かい?相変わらず物好きだねぇ。」
なんだかんだ私はこの店の常連になっていたのだ。
えっへん(何も誇らしいわけではないが)
「店長さんこそ、その手の店をやっててよく言うますよ。」
「そりゃそうか。その物好きのお陰で俺は食っていけてるからな。それよりも毎度のことながら気をつけなよ。」
「店長さん考えすぎですよ。そんな実際に成功するわけないじゃないですか。」
「それもそうだけどオカルトショップの店員に言わないでおくれよ.... まぁ気をつけるに越したことはないけどね。」
帰路に着くために店を出るとふと足元に違和感を感じた。
「あ... 靴紐千切れた。」
不吉ということもあるがきっとただの偶然だ。靴紐が切れたり黒猫を見かけると不吉などと言うがこじつけもいいとこだ。靴紐が千切れるのは長い間使い古しているだけだし黒猫なんて風評被害もいいところだ。
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「ただいまー と言っても誰もいないもんですがねぇ...」
我が家は両親が高校生の一人娘を置いて旅行に行くというラブコメでしか見ないような家族なのだ。
ちくせう.... そんな親が存在したとは誰が想像しただろうか。
「ま、いっか。」
いてもいなくても私は自由にやるだけなのだ。そんなこんなで夜ご飯をどうするか考えながら部屋へと向かい、この後の事を思い出した。
「さて、やりますかね。」
鞄から必要なものを出し、着々と準備を進める。
羊皮紙、蝋燭、お香、悪魔の紋章。 これらをいい感じに並べて待つだけである。
手軽であら簡単
召喚を始めてから数分経過したが音沙汰無しでいつも通りの結果になってきた。
「10分経っても変化なしですか.... やっぱ出るわけないよねぇ、片付けよ。」
そういうオカルトチックな物にハマっているとはいえ、それらが所詮は存在しない物であることは理解している。
そう思った瞬間
何かが爆発したような激しい音がした。
まさかお香に蝋燭の火が移っていたか、いや燃え移っただけで爆発はしないはずだなどと考えていたがそれらの考えは的外れなものだった。
何もない空間にバチバチと紫電が走り、人型のシルエットが浮かんでいたのだ。その直後、姿がハッキリとした。
男の人だった。
私と同年代くらいか、少し上くらいのような体つきである。顔立ちは均整が取れて整っており、いわゆる美形である。するどい目つきはにやにやと笑っており、全てを見透かし、見下すようである。紅く美しい瞳は宝石を嵌め込んだかのようだ。
しかし、明らかに人とは違う点が1つある。
角だ。
黒髪のショートヘアーにヤギのような左右非対称な角が生えており、異様だった。
「よぉ、お嬢ちゃん。」
「........え?」
声が出なかった。
「大悪魔のこの俺を呼び出す命知らずな死に急ぎ野郎はお前か?」
理解に時間がかかりすぎる。
「お前の望みを言え。どんな望みも叶えてやる。お前が払う代償はたった一つ。それはお前の魂だ。」
「私の....望み?」
「....望みは無ぇのか?俺たち悪魔は召喚した奴の望みを叶えるかソイツが死なねぇ限り戻れねぇんだ。早くしろ。ダルイんだよ。」
見るからにイライラしているようだ。
「あの....」
「あ?」
「私、何か用があって召喚した訳じゃなくて... どうすればいいですか?」
「望みが無ぇのか?遊びで召喚しやがった奴かよめんどくせぇ」
「すいません....」
「めんどくせぇなぁ....とりあえずお前を殺して帰る」
その彼は手を上に向かって突き上げ、振り下ろした。その瞬間見えない斬撃が飛んできた。見えないのに何故分かったかって?
理由は単純明快。壁が 裂けたのだ。
洒落にならんって。
「チッ 外したか。」
「ちょちょちょちょっと!いきなり何すんですか!私のプリティーフェイスが傷付いたらどうすんですか!」
「知らん。俺はテメェの遊びに付き合うために来たわけじゃねぇんだよ。」
何故だ、急に人が変わったかのようだった。
「ちょ、ヤバい。召喚は成功だけどある意味失敗すぎるって!」
そんなことを言ってる間にも斬撃やらビームやらが飛んできて家がグッチャグチャである。
望み、家直してもらうのありかな。部屋はもう逃げられそうにも無いのでとりあえず外に出て無我夢中で走った。
「オラ!俺は気が短ぇんだ!とっとと死ね!」
「嫌ですよ!曲がりなりにも人間として17年間生きてたんです!人生100年時代なんですよ!」
「あぁ、めんどくせぇなぁ。」
「何か対処法が確か本にあったはず....! 」
『悪魔は名前を知られたら服従しなければならない』
「悪魔の名前なんて分かるわけないでしょーが!」
「何してやがんだ!出てこい!」
出てこいも何も部屋に隠れられないから家出ちゃいましたけど.... 持久力にはそこそこの自身があるが悪魔に追いかけられるという混乱した状況ではどこまでその持久力が続くことやら。
「確かあの悪魔は自分のことを大悪魔と称していたはず....もしや!」
「ハッ!本なんか見たところでどうにかなるわけねぇだろうがよ!」
「あった、ソロモン72柱!その中から見つけるには何かヒントがあったかな....?」
走りながら後ろを振り返ると誰もいなかった。どうやら撒けたようだ。
「ふぅ....とりあえず今のうちにソロモン72柱のことを調べないと。そういえばあの悪魔は確かずっと“めんどくさい”とか“ダルい”とか言ってたような気が」
そうなると怠惰を司る悪魔になるのか?
「ソロモン72柱で怠惰といえば....あっ、これだ!」
「やぁっと見つけたぁ!」
「うわぁ!?」
見つかってしまった....こうなったら一か八か賭けるしかないようだ。
「散々逃げ回りやがって、最初から待ち伏せすりゃ良かったんだ。だからいい加減楽になr」
「あなたの名前は!」
「あ?」
「あなたの名前は“ベルフェゴール”ですよね!」
今にも襲い掛かろうとしていた悪魔の動きが油の切れたロボットのように止まった。
「お、まえ....なんで分かった?」
「本とあなたの言ったことから予想しただけですよ。」
「チッ、そうかよ....で、その事を知ってるって事は俺を従わせたいんだろ?俺を服従させてどうするつもりだ?金か?男か?」
「私をなんだと思ってるんですか....違いますよ!まぁ強いて言うなら....」
「強いて言うなら何だよ?」
「その....私と、一緒にいてくれませんか?」
「は?」
「端的に言うと一目惚れしちゃいました!」
「お前どういう趣味してやがんだ....」
「どういう趣味も何もあなた今人間の姿じゃないですか。」
「あー、そういやそうだったな....良いだろう。聞き入れるぞ、その願い。」
「え!本当ですか?」
「ああ、本当だ。そもそもお前は俺の名前を見破ったから俺はお前に従わねぇといけねぇんだからな。」
「やったー!」
「....まさか人間ってコイツみてぇな奴ばっかりじゃねぇよな」
「え?あぁ、そういえばあなたの名前ってベルフェゴールでしたよね?なんて呼べば良いんですか?」
「あぁ?好きに呼べ」
「なら、うーん.....あ!ベルフェゴールだからベル君はどうですか?」
「ベル君だぁ....?まぁ勝手にしろ」
「やったー!よろしくね、ベル君!」
「おまっ!抱きつくな!」
「えー?良いじゃないですかー。」
「頭擦り付けるんじゃねぇ!離れろ!」
こうして私は命拾いをし、運命の人(?)と出会ったのだった。
興味を持って第一話を開きここまで読んでくださった方々ありがとうございます!
小説家志望の高校生の拙い書き物ですが、続きが気になった方がいたらリアクションや感想をどうかお願いします。
また、誤字等もありましたらご指摘お願いします。
最後に、低頻度になってしまうかもしれませんが2話以降も更新する予定でいますので遥とベルの行く末を一緒に見守ってください!