五、お買い物
五、お買い物
「これはこれは、聖女様……ですよね。お付きの方は見慣れない方……おほん。失礼しました。このような店に、何用でしょう?」
ちょっと細身なおじさんだ。
真面目そうな顔つきだわ。信用できそうなお店かも。
「えっと、この人の服を買い取って、別の旅服を見繕ってください。それと、私の旅服とブーツも」
「えっ? いえ。分かりました。そちらは少し値の張る代物と存じますが……本当に買い取りでよろしいので?」
「ええ。構いません。お願いします」
こういうやり取りって、実は見てただけで自分でするのは……初めてで緊張するぅ。
勇者様は連れて行かれたし……自分のはどれがいいかな~。
「お待たせいたしました。査定額はこのくらいですが、いかがでしょうか。あ、聖女様に嘘偽りでお取引など致しませんよ!
わたしの女房も、以前お世話になりまして、それはもう、本当に感謝しておりますので!」
ああ、助かったぁ。
査定とか相場までは分からないし、騙されたらどうしようと思ってたのよね。
「それは素晴らしい心掛けですね。あなたとご家族が、これからも健康でいられるように祈りましょう」
「ははぁ! ありがとうございます!」
正直な人には、ちゃんと祈ってあげないとね。
――聖なる祈り。我が祈り、願いを込めて。清らかなる者を照らしたまえ。
「聖なる祈り、我の祈りを捧げ、この者らに健やかなれ。日々の祝福がありますように」
――我、女神の子セレーナの名において、真なる祈りを捧ぐ。
「おお……ありがたや。ありがたや……ありがとうございます聖女様。このように祈って頂けるなど、なんとお礼を申し上げれば……」
「いえいえ。真面目な方は好きです。そういう方に、健やかで居て頂かなくては」
「ははぁ……! ……そうだ。そちらの方の、今お召しのものは査定額から差し引いてしまっておりますが、聖女様の服とブーツはそのままお持ちください」
「そういうわけにはいかないわ。ちゃんとお代を取ってください」
「いえいえ! 普段はご寄付もままなりませんで、心ばかりですがどうぞ、お納めください」
「……そうですか。ではありがたく。大切に使わせて頂きますね」
**
あ~緊張した。
お店を出るまでめっちゃ見られるし。
結構な額……金貨が十枚と銀貨、銅貨も沢山……。
あんな感じで良かったのかな。
普段は祈るだけなのに、自分の服とブーツを寄付してもらっちゃった。
「ねえ勇者様。こういうのって、ありなのかな? 悪いことしちゃったかしら……」
祈ったせいで、品物を取ってしまったような罪悪感が残る。
「いいんじゃないか。あんなに感謝されるんだ。聖女様の祈りは、本当に良いものなんだろう」
「そ、それは……そうだけど」
効果に嘘はない。
祈りが残ってる間は、病気なんてしないだろう。
でも……それを対価にして何かを貰うなんて、私はした事がないから。
「うん? 教会はそれを商売にしてるんだ。聖女様が貰うか、教会が貰うかに違いはないだろう」
「商売……なのかな」
考えた事もなかった。
私はただの善意で……でも、そうか。教会は寄付を沢山貰って、そのお金や物を、私が貰ったり使ったりしてるんだものね。
「ううん。そうね。私一人、きれいごとの中に居るつもりだったみたい」
「そうか。賢いな、聖女様は」
なんか、褒められたんですけど。
……まぁ……ちょっと、ヘンな感じだけど。
でも……。
「偉そうよね。勇者様は。おいくつなのかしら」
おお、何かサラっと聞けた~。
「年か、いくつだったかな。忘れてしまった」
はー?
「そんな顔をしてくれるな。少なくとも、聖女様よりは随分と上だろうさ」
なにそれ。
「何ですか。ナヨナヨキャラの次は、謎キャラですか」
あーあ。肩をすくめたりして、適当に流すのがお上手だこと!
「もういいです。次は武器とか買わないと。何が得意とかあるんですか?」
「そうだな……品を見てから決めよう。だいたい何でも使える」
ほー?
弱っちそうなのに……随分と大きく出たな~。
見栄張っちゃって。
**
「で、結局ナイフ三本と剣二本。鎖かたびらと手足の革あてですか」
「予算はどうだった?」
「足りてるわ。でも、旅支度にどれだけ掛かるのか、私には分からないから十分かどうかは……」
「ナイフや革あての値段で、おおよその見当はつく。無い物を一から揃えるとして……一週間程度なら、銀貨四枚もあれば十分だろう」
「へえ……。それよりは十分に残ったけど。ん? だけどそんな値段で、さすがにテントも一緒には買えないでしょ?」
「そんなものは買わん。マント一枚あれば十分だ」
「へっ?」
野宿は覚悟してたけど、テントも無いの?
マントでくるまるの?
まじ……?
「荷物になるだけだ。水をどうするつもりだ。道中に確保できない事を考えて、少し多めに買わなければな。こっちの地理は全く分からないからメドが立たん」
「う、馬とか……買わないの?」
「教会で交渉してくれ。でないといくらあっても足りないぞ」
「うぅ……私の私物……持っていきたいのが、結構あるんだけど……」
「……物による」
あぁ…………。
最悪。
最悪よ……。
「やっぱり、教会に帰る。やっていける自信ないし」
「そう出来るなら、それも良いかもしれん。きちんと聞いてみるんだな」
出来るなら……帰りたい。
毎日、何不自由なく生活してたのに、旅だとか言われて、テントも何も無い野宿とか……想像もできない。
馬も無いとしたら?
歩くの?
ずーっとよ?
ブーツでも足が……一定時間ごとに治癒しないと、マメがつぶれちゃうじゃないのよ……。
――「面白い」 「続き!」 「まぁ、もう少し読んでもいいか」
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どうぞよろしくお願い致します。 作者: 稲山 裕
週に2~3回更新です。
「なぜか皆から愛されて大公爵の養女になった話~内向的だけどそれなりに楽しく過ごしています?~『オロレアの民 ~その古代種は奇跡を持つ~』」
こちらも書いていますので、よろしくお願いします。
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