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龍つかいの憂鬱  作者: 河辺 螢
龍の国の龍つかいと、龍つかいにつかえる龍
34/49

4-8

 久々の王宮。前回とは違う意味で視線が痛い。

 あのルヴェイン様のつがいのちんちくりん

から

 あのルヴェイン様のつがいのちんちくりんが男を侍らせている

に悪役ぶりが昇格してしまった。

 侍従に扮していても男前は変わらない。男前の夫を持ちながら、男前の男を連れ歩く悪女。…夫なのに。胃が痛い。


 謁見の間には、前とは違う王様がいた。

 ルヴェインは従者を装い、私の後ろ、壁寄りに控えている。隣にいてほしいのに。

「遠方よりはるばるご足労だった」

「麗しきご尊顔を拝見し、恐悦にございます。ルヴェインが妻、レーナ・ガルディーニ・ドラゴネッティにございます」

 新しい若い王様はルヴェインの兄で、ここの王族は皆言葉以上に「麗しきご尊顔」をしている。じっと観察はできないけれど、ルヴェインにもどことなく似ていて、ルヴェインを25%柔和にするとああいう顔になるのかもしれない。

「おまえはこの先、その姿でうろつくつもりか」

 後ろに控えているルヴェインに向けて王様が話しかけると、一礼して隣に来てくれた。

「ルドール王国より参りました、ルヴェイン・ランツェッタでございます。妻だけの呼び出しに何事かと憂慮しておりましたが、入国がままならず、かような方法を取らせていただきました」

 それって、密入国の報告とクレームでは…。

 王様はそれを笑ってさらりと流した。

「恩赦は式の後になっていたんだ。これでも早めた。許せ。奥方はアンジェラが相談したいことがあるそうだ。聞いてやってはくれないだろうか」

 やはり、式への招待はついでで、本命はアンジェラ様のことなのね。

「元よりそのつもりで参りました」

 私が頭を下げて引き受けると、すぐにルヴェインが

「聞くのと引き受けるのとは別だ」

と返した。

 王命を受けて、引き受けないなんてことがある?

 隣でルヴェインは王様をこわーい目で睨んでいた。もちろん覇気は含んでないけど、王様は慣れっこなのか大して気にもしてない様子で、

「…わかった、わかった。王命ではなく、兄弟間の相談事だ。出来ないと判断したなら断ってもいい。それでいいな?」

「ご配慮いただき、ありがとうございます」

 ルヴェインは納得した様子で、いかもにも臣下っぽくにこやかな笑みを添えて王に頭を下げた。

 ああ、ルヴェインが一緒に来てなかったら、私は断れない申し出に縛られるところだった。ルヴェインがいてくれて本当に良かった。


 その後別室に案内されると、ルヴェインの兄弟がそろっていた。この場では皆さん人型をしている。そこにさっき謁見したばかりの王様も加わった。王様はさっきと違ってずいぶんくつろいだ顔になっていた。

 そう言えば、私がこうしてルヴェインの兄弟と顔を合わすのは初めて。かつてこの国に来た時に夜会に現れた王族の皆様が皆見目麗しい方々だったのは覚えているけど、龍人の令嬢方に絡まれ、誰が誰かまではよくわかっていなかった。

 髪と目の色を変え、私の後ろにいてもそれがルヴェインだとわからない人はいなかった。そこはさすが兄弟と言ったところか。


 簡単に自己紹介があった。

 王様にして長兄のフェデリコ様。奥様は他国のお姫様で、王子が二人いらっしゃる。

 次兄のロベルト様。奥様は龍寄りの龍人で、普段は龍としてお過ごしらしい。

 間もなく結婚される三番目の兄のラウル様。結婚後もドラゴネッティで住むことになるらしい。花嫁であるレティシア様は明日お着きになり、王都の中央通りの広場でお迎えの式典があると聞いている。

 姉のアウレリア様は南のゴルディアという国の公爵家に嫁がれたらしく、今回は単身で里帰り中。

 四番目の兄のリディオ様は、自称もはや王族ではない方。他国に定住し、商売をしているらしい。この方も結婚式参加のため一次帰国。

 六番目にして五男のルヴェイン。

 そのすぐ下が今回のお呼び出しの相手、妹のアンジェラ様。北の国ノルドランシアの王家に嫁いでいる。今回は旦那様も一緒にお越しになっているとのこと。

 そして弟のレアンドロ様はまだ学生で、ルヴェインが国を出た後他国に留学し、こちらも一時帰国したところ。

 八人兄弟、皆美形。ご紹介を受けながら眼福を感じつつ、ロイヤルな皆様にそぐわない自分にちょっと恐縮した。印象としては、圧はあるけど龍っぽいというか、見た目は艶やか中身はあっさりしているように見えた。

 とかくどなたも予定が満載で、ざっくりと顔合わせが終わるとすぐに解散になった。


 ラウル様は今回の主役なので中でも一番お忙しそうな様子ながらも私に声をかけてきた。

「ルヴェイン使い殿、急な呼び出しになって悪かったね」

 悪かったなんてのは口だけで、面白がっているのがその表情からみえみえだった。

「おまえがレーナを呼べばいいとか、けしかけたんだろう」

 ルヴェインが愚痴りながら睨んでも気にもせず、

「呼ぶ口実に結婚式を使ってもいいって言っただけだよ。詳しくはアンジェラから聞けばいいさ。なんせ君たち夫婦は僕にとっても恩人だからね。来てくれて嬉しいよ。恩赦が出るってわかってたらもっと早くに連名で招待状を出してたんだけど」

 やはり、国外追放中だったから招待がなかったのか。

「招待状が結婚前の名前だったのって、意味があるんですか?」

「いや、君がどう名乗っているのかわからなかったからね。多分結婚してるだろうとは思ってたけど」

 そうか、嫌がらせ的な意味はなかったんだ。ちょっと安心した。

「奥様はルヴェインのこと、恐がってないんですか?」

 気になって聞いてみると、

「見れば恐いと思うよ。でもそこを守ってあげるとまた愛が深まる訳だ」

 そう言ってけらけら笑っているこの人は、かなり悪い人だということはわかった。


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