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龍つかいの憂鬱  作者: 河辺 螢
龍つかいの龍の寵愛
21/49

3-3

 三年が経ち、ようやく成人を果たし、レーナを迎えに行った。

 レーナは待っていてくれた。三年の月日を経ても変わることなく、昨日まで一緒に暮らしていたかのように身近に感じる。そばにいるだけで心が穏やかになっていった。


 国に連れて帰り、ようやく共に暮らせるようになった。それなのに結婚の話は進まなかった。

 父の許可などどうでもいい。二人で婚姻の儀式を執り行ってしまおう。そう思って準備を進めたが、儀式で使う赤い木の実は何度取り寄せても届け先を誤り、崩れていたり、腐っていたり、邪魔されているかのように手に入らなかった。

 新居となった風の宮で二人で過ごす時間はほとんどなく、知り合いもいないこの国で一人で暮らすレーナが心配だった。今は大人しくしていても、きっと退屈してしまうだろう。一緒に王都を回ってみたいが、そんな時間も取れない。王城から自由に出入りできるよう、自分の眷属であることを示すペンダントを渡した。ペンダントには守りの力を付与した。何かあってもその身を守れるように。そして何かあれば必ず自分に伝わるように。


 ルヴェインが成人を目指すようになってから、何度か他国の王女と会うことを命じられた。

 龍にとってのつがいは唯一の存在、自分のそれはレーナだ。それなのに何故レーナ以外の女の相手をしろというのか。

「他国の来客を相手にするのは当然だ。交流は王族の務めだ」

と言われたが、それなら自分でなくても他の兄弟でいいはずだ。父王が何を考えているのかわからなかった。

 どの女も人となった自分を見て目を輝かせ、頬を赤くし、にこやかに話しかけてくる。他国との交流のため、任務と言われれば応じるしかなかったが、婚約者がいる男に遠慮することなく腕を絡めてくるような女に好感は持てなかった。

 つれないルヴェインの対応に怒った王女の一人から聞いた話では、父王はルヴェインとの縁談をほのめかしていたようだ。年頃の王女のいるいくつかの国に話を持ちかけ、外交上の有利な条件を引き出そうとしているようだった。もしそれが真実ならあまりに不誠実で腹立たしい。

 レーナを国に招いた後も続き、ルヴェインは自ら婚約者がいることを話し、父に代わり謝罪した。この先いつまでこんなことをしなければいけないのか。


 やみくもに増えていく仕事。それは王や王太子である長兄のフェデリコがこなしていたものだと気付いた。幼い頃から国政に携わることを前提に教育されてきた兄達とは違い、ルヴェインにはその知識が足りず、どれを誰に聞けばいいかさえわからず、時間ばかりとられる。

 父王は兄弟の中で一番力の強いルヴェインが成人したことで、ルヴェインにこの国を継がせることを思い立ったようだ。

 龍は力を重視し、強いものに従う。父王はつがいは理解できないが、強き者に従う龍の在り方には敏感だった。国をまとめるには覇気の強いルヴェインを王にすることが望ましいと思ったのかもしれない。しかし今さら王太子を変えるようなことをすれば後継者問題で国を乱すことになり、他国にも隙を与えることになる。

 ルヴェインは兄であるフェデリコに相談を持ち掛け、自分は国政に関わる気はなくその能力もないこと、この状況が続くなら国を出るつもりであることを伝えた。

 フェデリコは既に王の仕事の大半を引き継いでいたが、このところ文官たちの様子がおかしく、報告が遅く、書類が回って来なくなり、何かあるとは思っていたようだ。


 ルヴェイン達の曽祖父は龍の気質の強い覇王であり、その王から国を引き継いだ祖父はずいぶん苦労しながらこの国を人と龍が共存できる穏やかな国へと導いていった。祖父母に育てられたルヴェインは、祖父が語る当時の苦労話を「またその話か」と思いながらも、祖父の平穏な国づくりへの信念は心の中に刻み込まれていた。

 戦乱の時代ならともかく、今の時代に力で統治する王など不要だ。そのことは他の兄弟たちとも意見は一致していた。

 ルヴェインは自分に回されるようになった仕事をフェデリコ側に戻した。兄達や宰相は執務の流れを再検討し、王抜きでも兄と宰相側で国を動かせるように図った。元々国を引き継ぐ準備は進んでいたのだ。それを父王が気まぐれに変な方向に舵を切ろうとしているだけだ。

 父王に気づかせないようにするため、一気に仕事をなくすことはできなかったが、レーナと共に過ごせる時が来るのもそう遠くないように思えた。


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