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龍つかいの憂鬱  作者: 河辺 螢
龍つかいの逆襲
18/49

2-8

 自分の国に入ってからも移動には結構時間がかかる。ルドール王国は小さな国なんだけど、国境近くには高い山があって馬車が通れる道も限られている。

 何とか冬になる前に戻れそうで安心した。行きはたった二日だったのに、やっぱりよその国は遠いなあ。

 家に連絡していなかったことに気が付いて、今更ながら手紙を書いた。ドラゴネッティでやらかして結婚するのをやめたこと、只今陸路帰国中で、もうすぐ家に戻れそうなことを書いて家に送った。

 自分の国に入ってからも旅費が足りなくなり、途中の街で収穫のお手伝いをしてお金を稼いだ。丁度収穫祭の季節で、祭りのお手伝いもして、飲めや歌えやしてたら二週間が過ぎていた。


 国に戻ってから三週間ちょい。ようやく家に近い街までたどり着き、あとは家まで歩くのみ。

 ここからなら、口笛が届くかな。

 期待半分で龍を呼ぶ口笛を吹いてみた。お迎え、来ないかな。

 …。

 ……。

 …誰も来ない。当然か。私を乗せるなと脅されてる連中だからね。戻ったらもうあんな理不尽な命令に従う必要ないって、再教育しなくちゃ。

 絶対に乗る。うちの龍、全員に乗ってやる。

 あ、お土産買ってなかった。せめて龍たちにだけでも何かお土産があったほうがいいよね。

 街を出る前に果物屋さんに寄って、オレンジやリンゴなど、鞄に入るだけ買い込んだ。

 重くなったリュックを背に黙々と家に向かって歩いていると、遠くに龍の姿が見えた。…かと思うと突然急降下してきた!

 体当たり寸前で当たらなかったのは、私の反射神経か、たまたま取り逃したのか、それでも風圧でしりもちをつき、起き上がる間もなく再度戻ってきた龍に体をわしづかみされ、宙ぶらりんのまま連れ去られていく…

「ひゃあああああああっ!」

 家が、街が小さくなる。どんどん高度が上がり、森の方に向かってる。

 私、餌になるの? オレンジで許してもらえない??

 見えてきたうちの家。ここで降ろしてほしい。森まで連れて行かれたら…

「降ろしてぇ!」

 願いがかなったのか、龍が私を宙に放り投げた。ふわりと浮かんだものの、そこから真っ逆さまに落ちていく。

「ぎゃあああああああああああああああっ」

 駄目だ、死んだ。

 そう覚悟をしていたら、ぼよん、と弾む体。

 私が落ちたのは何か柔らかい物の上だった。

 黒い鱗…。大きな、大きな…、…龍?

「全く、いつまで待たせる気だ」

「る、る、るるる」

「三カ月を待てない奴が、半年も待たせるとは、いい根性している」

 この口の悪い黒い龍。そもそもしゃべる龍自体がレアだ。金色のちょっときつい目、不機嫌な顔。それでもハンサムな腹立つ龍。

「る、ルヴェ、ルヴェヴェヴェ?? …何で? 何でここに?」

「何でじゃない。一日で行けるところを半年だぞ」

「人間は飛べないのっ」

「俺がいつでも乗せてやると言っているのに、何だってわざわざ遠回りをして…。そんなことならフラヴィオに頼まれた方がよっぽどましだ」

 フラヴィオに…。私が乗ったのがフラヴィオだって、知ってる?

「事情は聴いた。湖の温泉場からならおまえを乗せて戻ったのは間違いじゃない。おまえよりよっぽど的確な判断だ」

 そう言いながらも、まだぷりぷり怒ってる。

「覚悟を聞かせろと言っておきながら、俺に言い訳もさせずに勝手に出ていきやがって。…本当に喰ってやろうか」

「ぐえっ、」

 頭を噛まれた。頭くらい丸呑みできそうなほど大きな口。だけど甘噛みで、驚いたけどそんなに痛くはない。

「あんまりおいしくないと思うけど。…ルヴェインの気が済むなら、喰われてもいいよ」

 私がそう言うと、ぱっと口を離したかと思うと影が一気に小さくなった。そして伸びてきた手が私の両頬を挟み、そのまま強引に唇を重ねられ…、重ね、…、うぐっ、…うぐぐぐぐぐ、

 ぷはぁ!

 し、…死ぬかと思った。窒息するかと思った。

「まだ喰い足りん。後で覚えてろ」

 そしてぎゅっと抱きしめられて、耳元で、

「会いたかった…」

とつぶやかれると、私もこくりと頷くしかない。

 怒りたいのに、怒れない。

 どうしたことだ。あんなにルヴェインのこと、怒ってたのに。

 二度とあんな生活送りたくないと思ってたのに。

 婚約がなくなって、喜んでたのに。


「そこの二人、とっとと家に入って来い!」

「公衆の面前で迷惑なんだよ。このバカップル!」

 龍舎から兄達の罵声が響いた。龍たちも興味津々で首を伸ばして見てる。

 ルヴェインのラフな格好。シャツのボタンを二つも緩め、腕まくりをして、今の今まで働いていたみたいな格好だ。…うちに、いたの?

「どういうことか、説明してもらっていい?」

「手っ取り早く言えば、おまえはこれからも俺に仕えるってことだ、龍仕え殿」

「龍仕えじゃないもん、龍使いだもん!」

 ルヴェインに手を引かれ、父母と兄達が待つわが家へ。

 なんか、うちになじんでない?

 王宮では見られなかった、生意気で本当に楽しそうな顔して。


 どんな言い訳が聞けるんだろう。

 どんな覚悟を聞かせてくれるんだろう。

 そして私はどうなるんだろう。


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