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ミッションコード:0Z《ゼロゼット》  作者: くろえ
激闘!バケモノVS化け物
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宇宙空港の攻防

こってりとファンデーションを塗りたぐった顔で精一杯クールな表情を装った女性記者が、カメラに向かって話し出す。

「はい、エベルナ宇宙空港です。今私は、太陽系中から集まった報道陣で溢れかえりそうな空港ロビーにいます。

私たちは1時間ほど前に出された地球連邦政府軍によるエベルナ宙域の規制により、足止めされている状態です。軍はこの規制を「ハルモニアの暴露」と呼ばれる一連の騒動を収拾するためとしていますが、依然「リーベンゾル後宮の生存者」の情報に関しましては事実確認中の姿勢を崩していません。

騒動の発端となった元アイドル、ハルモニア・ピアーズさんは、現在軍公安局に身柄を拘束されているものと思われ、連邦政府内では父親であるピアーズ事務次官の責任を問う声も上がっている模様です・・・。」

マルギーが隣を走るA・Jに声を掛けた。

「あのスパイ・アイドル、もう頭に『元』が付いてるよ?」

「当然だ。もうアイドルなんかやってられるか!」A・Jが人の頭しか見えないロビーのあちこちを見回す。

「ピアーズ事務次官ももう終わりだ。あの親子、どっちも裏じゃ相当えげつない事やってたらしいからな。」

「そんなの、どうだっていいでしょ!?早く探さないと!!」シンディが口をとがらせる。背の低い彼女はすっかり人に埋もれ、見回してみても報道記者達の背中しか見えない。

いっそ、こいつらどつき倒してやろうかしら!?焦りと苛立ちに思わず拳を握りしめた時、通信機が鳴った。

『あった!あったッスよ!!』

シンディの腕、ピンクのリストバンド型通信機から、ロディががなり立てた。


「・・・うわぁ、こんなところに。」 マルギーが怯えたようにつぶやいた。

何故かマーメイドの巨大なブロンズ像がそびえる噴水脇。様々な観葉植物の大きな植木鉢と一緒に据えられた簡易ベンチの座席裏に、それはあった。

KH時限爆弾。今までのカプセル型と違い分厚いハード本ほどの大きさの四角形で、養生テープで固定されている。デジタル画面は『00:08:10』と表示されている。

「ロディちゃん、そのスパイ・ビー優秀やなぁ。ワイと手ぇ組んで商売せぇへん?メッチャ売れるでぇ、それ。」

「いや、今はそれどころじゃないッスよ!・・・ナムさん、最後の一つは本当に地下のエネルギー制御室にあるみたいっす!!」

ロディがタブレットをのぞき込みながら早口で告げた。相当焦っている。無理もない。

「いや、スゲェのはレヴィちゃんだよ。」ナムはかがんで爆弾を確認し始めたスレヴィに笑いかけた。

スパイ・ビーの爆発物探知機能を使っての発見ではあったが、この広い宇宙空港に仕掛けられた2つの爆弾をたった3機のビーで見つけられたのは、スレヴィのお陰だった。

爆弾(花火)をしかけるんはな、どこが一番敵を倒せるかっちゅうのを考えてやるもんなんや。」

宇宙空港の見取図を見るなり彼はそう言って仕掛けた場所を幾つかのポイントに絞った。その一つが、この噴水周辺だ。

ロビーの中央に位置し行き交う人が多く、2階~3階が回廊になってる吹き抜けの場所。KH時限弾が炸裂すれば、隅々までKH線が行き渡る。

そうなったら、今宇宙空港内にいる者達は誰1人助からなかっただろう。

「よし!あと一つだな。俺が行く!レヴィちゃん、悪ぃがそいつ止めたら一緒に来てくれ!」

「・・・アカンな。」

「へ?」

「アカン、一緒には行けへん。」

スレヴィが振り向いて顔を向けてきた。その顔は真っ青だった。

「こいつ、もう一個の爆弾と連動しとる。えげつない仕掛けやでぇ、同時に止めな、即ドッカーン、や!」

事情を飲み込むのにしばしの間を要した。・・・つまり、それって・・・。

「ええええぇぇぇぇ!!!!!?」

全員で絶叫した時だった。


ドン!と重い音と共に、涼しげに水浴びしているマーメイド像の首が吹っ飛んだ!

悲鳴が上がり、ロビー中が騒然となる。・・・敵襲だ!

A・Jが銃を抜き、2階回廊から身を乗り出してライフルを構える武装兵を狙撃した事で、周囲が大混乱に陥った。悲鳴をまき散らしながら報道記者やカメラマン達が逃げ出した。

マルギーが簡易ベンチや植木を倒してバリケードを造り、それにロディが「どっかんクッション爆弾」をぶつけ、強度を確保する。

その内側に全員で転がり込み、ロディは肩で息をした。

「・・・どっかんクッション、打ち止めっすよ。・・・って、ナムさん!!?」

ナムがいない!?ロディは慌てて悪趣味な市松模様のTシャツを捜して辺りを見回した。

『ロディ、通信機と工具、借りてくぜ。無事に返す自信は無いけど。』

驚いて振り向くと、後ろで縮こまっているシンディのリスト型通信機から兄貴分の陽気な声がした。

『爆弾見つけたら連絡する。レヴィちゃん、そん時止め方教えてくれ! A・J悪ぃ、そこは任せた!!』

「リグナム、貴様ぁ!!」

A・Jが喚くのを押しのけ、シンディが悲鳴を上げた。

「ロディさん!モカさんもいない!!」

「えぇ!どういう事ッスか!!?」

銃撃が始まり、弾丸の豪雨に晒されたマーメイド像の破壊音にロディの声はかき消された。

マルギーが伏せたまま横目で爆弾のデジタル画面を確認する。

『00:06:03』。状況は最悪だ。


悲鳴と怒号が交錯する宇宙空港ロビーを全速力で突っ切り従業員通路入り口前までたどり着いたナムは、いきなりTシャツの裾を掴まれ驚いて立ち止まった。

「モカ!?」

「足・・・速いねぇ・・・。」

モカがTシャツをしっかりと握りしめて息を切らしていた。

「な、なんで?!」

「連れてって!一緒に行く!!」

「えぇ!?いや、でも・・・」

「私、このままみんなの足手まといになるなんて嫌!お願い!」

「・・・」

ナムは真っ直ぐに自分を見上げてくる大きな目を見返した。

あの時の目だ。火星基地のシャワー室でキメラ植物と共闘した時の、エベルナへ発つ前にリュイと戦った時の、あの強い闘志を秘めた目。

コレなら、イケる!

「よし!行くぞ後5分!!」

「はい!!」

モカの頼もしい返事を合図に、ナムは通用口扉を蹴破った。

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