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ミッションコード:0Z《ゼロゼット》  作者: くろえ
激闘!バケモノVS化け物
92/409

パーフェクト・リュイ

咆哮と共に繰り出される拳が地面を大きくえぐる。轟音が砂塵と粉々に砕けた鉱石を派手にまき散らした。

狂気にギラつく目が拳をかわした標的を即座に捕らえ、巨躯に見合わぬ俊敏さで振り向き腕を一振する。

背後を取ろうと跳躍したリュイはもの凄い力でなぎ払われたが、すぐに体勢を整え着地、間髪入れずに地を蹴った。

足の膝関節を横から狙ってブーツの底をたたき込む。さすがにグラつく敵の首を腕で締め上げ、髪を掴んで大きく捻る!

ゴキッ!!と嫌な音が採掘場に鳴り響き、リュイが解放すると同時にそれはくずおれた。

速い。そして、強い。

ナムは崖下でモカを抱きしめながら、崖の上ではロディや、A・J達が呆然と、石くずだらけの地面に倒れる()()を冷たく見下ろすリュイを見守った。

「よ、よかった。局長が来てくれたら、もう安心ッス!」

ロディは安堵に息をつき、放れた所でA・Jと隠れているシンディに親指を立てて笑顔を送る。

口を開けたまま固まってるA・Jの横でそれを見たシンディが、嬉しそうに頷いた。

何があっても局長が守ってくれるよ・・・。モカの言葉が思い出された。

あれ、ホントだったんだ。シンディはニッコリ微笑んだ。

「・・・パーフェクト・リュイ。まさにその通りやな・・・。」

興奮を押し殺して震えるスレヴィの言葉に、ロディがごんぶと眉毛をつり上げた。

「な、なんッスか、それ?」

「あれ、知らないの?」 答えたのは崖下の光景に釘付けになってるマルギーだ。

「どんなダイ・ハード・ミッションも必ず完遂して生還する。あの禿ネズミ(エメルヒ)が押しつける死んでも当たり前な無茶ぶりでも完璧(パーフェクト)に成し遂げる。

最強で無敵の傭兵・パーフェクト・リュイ。エベルナの基地じゃ、彼のことみんなそう呼んでるよ。」

「・・・初耳ッス。」ロディは複雑な思いで再び崖下に目線を落とした。

倒した相手にはもう一瞥もくれてやらない。そんな態度でそれから放れていくリュイの、仏頂面が怖かった。

局長、こんなチャラそーな二つ名付けられてるって知ったらメチャクチャ怒りそうなんッスけど。そしたら多分、ナムさんが八つ当たりされるんッスよね。大丈夫かな・・・。


「やむを得ん・・・時間が無い!」

ロディはサムソンは忌まわし気に舌打ちにハッと我に返った。

ぼんやりしてる場合じゃなかった!宇宙空港ゲートのKH時限弾!!ヤバイっす!!!

「おい!お前、何してる!?」

A・Jが鋭く叫んだ。

サムソンは片手で銃を構えていた。空いた手でジャケットの内ポケットからスコープを取り出し目に当てる。

銃を扱いに長けたA・Jには、サムソンが何を狙っているのかすぐにわかった。

「さっきからお前ら何かおかしいぞ!?どうしてタークを狙撃する!?お前らの『主』だろう!!?」

「・・・残念ながら、それは違う。」

律儀に答えたサムソンはA・Jが言うとおり、リーベンゾル・タークと呼ばれる()()に照準を合わせ、トリガーに指を掛け部下達に指示を出す。

「ヤツが倒れたらすぐに回収に走れ!撤収する!傭兵基地にいる『同志』達を宇宙港ゲートへ呼び戻せ!!」

サムソンはすぐに異変に気付いた。部下の返事が、無い。

銃を下ろし、ゆっくりと振り返る。

部下達は1人残らず地に伏していた。

苦痛に呻く彼らを見下ろす襲撃者が佇んで居た。

「・・・あの女医、ドクター・タッカーといったか?彼女の要求をのんで部下達の手当と引き替えに見逃してやったが、やはり貴様はとどめを刺すべきだったな。」

「うるせぇ、黙れ。」襲撃者が激しい憎悪をその目に宿らせサムソンを睨む。

シャトルのエンジン音が聞こえる。見上げると上空をトーキョー大学の特殊シャトルが旋回していた。

昇降口が大きく開き、エーコが身を乗り出して何か叫んでいる。

「なるほど、貴様も崖下の男もアレに乗ってきたか。で、俺を倒すつもりのようだが、その武器(エモノ)2本であの様だった。今は1本だ。勝負にならんぞ?」

「黙れと言っている!!」襲撃者は声を荒げた。

基地のA棟で見せしめにされた折れたトンファ。それを持っていた右腕は血まみれで、ガッチリと添え木がしてあった。

左肩と右足も負傷しており、応急処置が施されている。

立っているのが不思議なくらいの有様にそぐわない怒気に、周囲の空気が張り詰める。

「二度とそんな口聞けなくしてやるよ・・・!!」

テオヴァルトの左腕で、トンファがひゅん、と唸った。


リュイは無言で「敵」から放れ、放心した顔でモカを抱いたままへたり込んでいるナムの方へ歩いた。

ぶん殴るつもりだった。理由は・・・ないが。

しかし、手前まで来て足を止めた。肩越しに後ろを確認する。

まさか、()()が、立ち上がろうとは・・・。

()()は、ゆっくりと身を起こすと、両手であらぬ方向へ曲がった首をゴキリ、と元に戻した。

そして、笑った。リュイでも、ナムでもなく、モカを見て。

エンジン音が聞こえる。トーキョー大学のシャトルが崖下まで垂直降下してきたのだ。

開け放たれたままの昇降口からエーコが崖下の息子を指さしながら中に向かって何か喚いている。どうやらナムを助けに来るつもりでコクピットの操縦士に檄を飛ばしているらしい。

「・・・行け。」

「・・・へ?」

リュイの一言に、呆けていたナムが我に返る。

「宇宙空港ゲートへ行け。あと18分。」

弾かれたように立ち上るナムに背を向け、リュイは再び「敵」と向き合った。

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