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ミッションコード:0Z《ゼロゼット》  作者: くろえ
衛星都市マッシモの奇跡
7/403

巨乳が来たりてぶっ放す!?

破壊されゆくカルメンの店に、その女 は現れた。


「はぁ~い♡ マイ・ダーリ~ン♡♡♡ 」


蕩けるようなアニメ声。

どこぞの戦場を思わせる殺伐とした店内に、まったくそぐわない声だった。


「おぉ!♡ なんだい、マイ・スィートハニー♡♡♡ 」


突然の事だった。

猛り狂っていた「義腕の巨人」がガラリと態度を変えたのだ。

彼はとっても素敵な笑顔で窓辺にピョン!と飛びついた。

あまりにも急で意外な豹変。血に飢え暴れる手負いのヒグマが可愛く尾を振る子犬になった。

ついでに、タイミングも最悪だった。

「ぅおおわぁ!!?」

電磁ナイフを握りしめ、玉砕覚悟で巨人の懐に切り込もうとしていたテオは、元はカウンターだった瓦礫の山に頭から突っ込み撃沈した。

「な、なんだ???」

店の隅で蹲っていたフラット達が、おそるおそる顔を上げる。

ガラスが吹っ飛び枠が歪んだ窓辺には、鼻の下をデレッと伸ばした「義腕の巨人」と若い女の笑顔が見えた。


「ごめんなさいねぇン、マックス♡。お取り込み中だったか・し・ら♡」

大きな濃紺の瞳、赤みがかったブルネットの長い髪。

窓の外から店内を覗くベビーフェイスの可愛い女。彼女は肩に担いだ大きなバッグをよいしょ、と勢いつけて持ち直した。

タイト・ミニのワンピースの大きく開いた胸元で、豊かな双丘がプルンと揺れる。

とんでもなく見事な 巨 乳 !

可憐な顔立ちとは裏腹に、魅惑的で危険なおムネは今まで出会ったどの美女より比べようもなくデカかった。

「でも許してネ♡ ちょ~っと 緊急事態 なの♡」

「はっはっは♡ お馬鹿さんだな、マイ・ハニー♡ 

俺は全てにおいて、君が緊急事態で最優先なのさ♡♡♡」

「いやン嬉しい♡ それホント?」

「おいおい当然じゃないか、マイプリティ♡

もう大丈夫だよ、マイエンジェル♡♡♡ さぁ言ってごらん?一体何があったんだい?」

店内の誰もがポカンと口を開け、ただ呆然と見守る中。

女が壊れた窓枠越しに、巨人の胸にしなだれかかる。

「あぁン、ダーリン♡ ス・テ・キ♡」

肩のバックがガチャリと鳴った。中身は重たい物らしい。


「じゃ、教えるわね。・・・敵 襲 よ ♡♡♡」

「なにっ!!?」


「義腕の巨人」=マックスと瓦礫の中に埋もれたテオ、そしてフラット。

3人同時に血相を変える。

女がひらりと窓枠を越え、店の中に入ってきた。

それを目にしたフラットが、間近に迫る危機を察して鋭く叫ぶ!

「マズイ!伏せろ!!!」

次の瞬間。

さっきの修羅場で破壊され、ガラスなどない窓という窓から 光弾の嵐 が飛来した!

「ぎゃーーーーーっっっ!!?」

店主が再び、絶叫した。


赤く輝く灼熱の弾が店内をさらに破壊する。

コンクリート壁やタイルの床が赤く焼け解け、木製のテーブル・椅子などが火を噴く間もなく炭になる。

大量に放り込まれる熱源に、室内温度がドンドン上がる。全員なす術なく床に伏せ、頭を抱えて必死で耐える。肌を焼くほど空気が熱いが、逃げるどころの話じゃない。

この猛攻では立ち上がる事すらままならない。このままでは本気でマズい。誰もがそう思い始めた時だった。


「電磁弾の短機関銃とアサルトライフルの銃撃ね。

どっちも一般人が持ってる護身用の武器じゃ無い。

つまり、敵さんも 私達とご同業者 って事ねン♡」


一緒に伏せてる巨乳の女がささやいた。

彼女は慌てた様子も見せず、大きく開いたワンピースの胸、深い谷間に手を入れる。

取り出したのは タバコの箱 とピンク色した可愛いライター。

重さ(ベビィ)で知られる銘柄のタバコを一本、口に咥えて火を付ける。


「・・・調子に乗りやがって。ムカつくぜ!!!」


「・・・へ?」

すぐ側で伏せていたナムとロディが女の顔を見て、絶句した。

形相が激変している。

可愛らしかった女の顔は別人のように変わり果て、総毛立つほど 凶悪 だった!


「いい加減にしろやクソボケ共があぁぁーーーーーっっっ!!!」


銃声に負けない怒号を放ち、女がガバッと立ち上がる。

そして傍らのバッグから何かを掴んで引っ張り出すと、 ピンヒールの生足で歪んだ窓枠を蹴り飛ばした!

「!!?」

女が肩に担いだ物を見て、今度はフラットが絶句する。

対装甲車弾装填の、肩撃ち式のロケット砲。

戦車を吹っ飛ばす逸物である。慌てて外を確認した。

一区画ほど先に古びて寂れた雑居ビルが見える。そこに集って身を隠す武装した男達の集団も。

その距離、目測で約30m。

フラットは心底ゾッとした!

「おい待て!この近距離でぶっ放す気か!?

下手するとコッチもタダじゃ済まないぞ!止めろ!!!」

制止は女の耳を素通りした。


ボヒュン!


意外と控えめな発射音が響き、店内に硝煙が充満した。

間髪入れず爆音と爆風、横殴りの 衝撃波 がカルメンの店に襲いかかる!

わずか一区画先の雑居ビルは見事に爆発、倒壊した。

吹きすさぶ硝煙混じりの風に髪をなびかせ、巨乳女がランチャー担いで崩れ行くビルに中指立てて恫喝した!

「ウチのダンナの邪魔してんじゃねぇ! 地獄に落ちとけ、雑魚共が!!!」

「はっはっは。俺の女房、いい女だろ?」

「冗談じゃねぇよふざけんなっっっ!!!」

ヨメ(?)の勇姿にご満悦。

喜色満面の「義腕の巨人」にナムが速攻、怒鳴り返した。




爆風が止むのをひたすら待ち、辺りが静まり返った頃合いを見て、フラットは床に伏せたまま慎重に顔を上げた。

素早く外の様子を確認する。

襲撃者の攻撃が止んでいる。連中がどうなったのかは考えたくもないが、脱出のチャンスには違いない。

「裏から出るぞ!

全員、頭を上げずに移動しろ!急げ!!」

その指示にいち早く従ったのは、サンダースだった。

いつの間にか意識を取り戻していたらしい。トルーマンの横で伏せていた彼は、フラットの指示などまったく聞いていなかった。

「ひぃぃ!!」

引きつった声で叫ぶなりガバッと跳ね起き、一目散に裏口を目指す。

「補佐官!危ない!!」

上司の無茶で身勝手な逃走に、驚いたトルーマンが身を起す。

・・・その時!


パァン!!!


乾いた銃声が響いた。

電磁銃の銃撃では無いが、性能の良い拳銃の狙い澄ました一撃だった。


「・・・うっ!」


くぐもった悲鳴が上がる。 フラットは唇を噛みしめた。


(撃たれた!?

どっちだ、サンダースか、トルーマンか・・・?!)


凶弾の犠牲者がくずおれる。身体をくの字に折り曲げて膝からガクッと床に沈む 。

それはサンダースとトルーマン、どちらでもなかった。

ナムの弟分、ロディ。

腹部から滴り落ちる鮮血は、異様に色濃く、鮮やかだった。


「・・・えっ・・・?」


兄貴分・ナムが目を剥き、言葉をなくす。

ドサリ、と倒れたロディの側に、窓の外から飛んできた何かが落ちて転がった。

大人の拳大ほどの、金属製の丸い固まり。

お下品なポーズを取っていた巨人の女房が手を頬に当て、大きな両目を丸くする。


「あらやだ、手榴弾?」


一瞬の後。

カルメンの酒場(バー)はついに建屋ごと倒壊した。

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