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ミッションコード:0Z《ゼロゼット》  作者: くろえ
ルーキー来襲!嵐を呼ぶファーストミッション
27/409

諜報員始めの1歩→修羅場

フェイが心細そうに辺りを見回しながら言った。

「ねぇ、やっぱり辞めようよ。僕、怖いよ・・・。」

「ダイジョブだって!心配しすぎだよ。」

コンポンがニンマリと笑う。

「俺らだけでも入り込めたじゃん。こんなの楽勝だって!

お荷物みたいに言われて黙ってんの癪だろ?やってやろうぜ!」

コンポンとフェイは、工業地帯、すっかり日の暮れたバイオテクノロジー研究所に戻ってきていた。

研究所の入り口ゲートはセキュリティパスがないと通れない。コンポンはナムが最初に潜入した時説明がてら使った諜報機器をちょろまかして来ていた。

建屋などへの侵入時、監視カメラに偽映像を読み込ませて異常なしと誤認させる、小型モバイル型電波発信機「ごまかしっ子君」。ロディ制作&命名の優れモノである。

2人は外壁に張り巡らされたセキュリティをかいくぐって潜入した。

「スルの、うまいね。人がモノ盗むとこなんて始めてみた。」

「これも楽勝!財布とかスルの得意だったんだ。いい腕してるだろ♪

行こうぜ、ほら、調べるのはあの建物だ!」

2人で隠れる植込みの影から、コンポンが敷地内一番奥にある倉庫のような造りの建屋を指差した。

あまり大きくない、所々ひびの入った外壁の古い平屋の建物だ。中の様子は見えない。数少ない窓は鉄格子がはめ込まれているうえにブラインドで閉ざされている。

「あの建物、ナムさんは機材倉庫だって言ってたよね。なんでアレを調べるの?」

「ターゲットのオッサン見張ってる時さ、退屈でよそ見してたらあの端の窓が少しだけ開いたんだ。

白い服(白衣の事らしい)着た女の人が、何か外に捨ててた。虫でもつまみ出したんだろな。

んで、ちょっとだけ中が見えてさ。エレベーターに人が乗るとこが見えたんだ。」

「それが何?」

「あんなショボい建物に、目で睨んで開けるタイプのエレベーターって、おかしいだろ?」

網膜認証のセキュリティシステムだ。

確かにそんな厳重なシステムで守られるものが、機材倉庫にあるのはおかしい。

「あんなボロい建物に地下があるって事だね?なるほど怪しいね。」

ようやくフェイが興味を持ち始めた。意気込むコンポンは思わず握った拳を振り回した。

「だろぉ?この倉庫、絶対何かすっげぇヒミツ隠してるんだぜ!」


「ああ、そーだよそのとーり!!」


「へ?」

背後からいきなり不機嫌そうな声がした。

と、思った途端、コンポンはガシッと頭をわし掴まれた。

「見っけたぞガキンチョ共!勝手にこんなとこまで来きやがって!!」

「いでででで!ナムさん、なんでここに!!?」

ぎりぎりとコンポンの頭を握りしめながら、ナムは逃げ出そうとするフェイの襟首を捕まえた。

「盗聴盗撮には気をつけろって言ってあんだろ!何企んでっかも丸わかりだ!

この建物のセキュリティは『ごまかしっこ君』でどうにかなるもんじゃねぇぞ、辞めとけ!」

「ナムさん、あそこに何があるか知ってんの?」

「地下があって厳重に守られてるなんかがあるってのはもう優秀なバックヤードちゃんが調査済み!

今回のミッションとはカンケーないだろが!」

「痛い痛い痛い痛いって!!」

「えー!そんなの調べられるんだったら、見張りとか尾行とかせずに最初からバックヤードで全部調べたらいいじゃないですかー!」

「だから、お前らの訓練兼ねてたんだよ!場合によっちゃ機械に頼るより追っかけるほうがいい時もあるんだし!・・・ロディ、こっちはとっ捕まえたぞ。そっちは?」

「ちょ、いい加減放してよ!あだだだだだ!!」

胸のランニングマンからロディの焦った声が応答してきた。

『まだ追いついてないっす。

こっちは発信機に気づかれてんのが痛いっすね。途中で外して捨ててるっぽいっす。』

「シンディは盗聴機に気づいて捨てたとよ。お前らより賢いじゃん。」

「あれ、シンディもいなくなっちゃってたの?」

「痛て、マジで痛てぇって!」

「ほれ、帰るぞ。さっきも言ったけど、ここのセキュリティはエゲツねぇくらいヤバイんだ。

こっから先、1歩でも建屋に近づいてたら・・・。」

「え、僕たちそんなに危ないとこだったの?!」

「あ~~~もう!!!痛てぇって言ってんだろー!!!」

ずっと頭を握りしめられていたコンポンが渾身の力で体をよじり、ナムの手を振り払った。

その結果、自由になったコンポンは勢い余って大きくよろめき、足を1歩、前へ踏み出すことになった。

「あ。」

3人同時に間の抜けた声でハモった次の瞬間。


ジリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!


けたたましい非常通知ベルが夜の静寂に轟いた。

一斉に灯されたサーチライトが眩しいほどに3人を照らす。

静まり返っていた周辺の実験棟から短銃や電磁ムチ、電磁ステッキを構えたヤバイ人相の警備員が怒涛の勢いで飛び出してきた。

件の機材倉庫に至っては地面から防護壁がせり上がり、窓も入口もガッチリ塞いで要塞みたいになっている。

「わー、マジでえげつねー・・・。」

半ば呆然とつぶやいたコンポンを、ナムは本日3度めのヘッドロックでシメあげた。


マルス郊外、工業地帯の一角には高くそびえる電波塔がある。

人が寝静まる時間にそのてっぺんから見る景色は、まばらに点在する街灯の明かり以外は漆黒の闇だ。

だからこそ、鳴り響く非常通知ベルの騒音と同時に灯った研究所中の明かりが目立つ事この上ない。

『まぁたおっぱじめましたか、あの坊主は。』

ピアス型通信機が鳴り、回線を開くと苦笑気味の声がした。

『俺が行きましょうか?』

「・・・いや、いい。お前はもう1匹の迷子拾いに行け。」

『了解。でも俺がそっち、ですか?』

「お前が行かねぇなら、アイアン・メイデンかバカップルの女房が行く事になる。」

『そいつぁヤベぇな。迷子見つける前に戦争が始まっちまう。了解、すぐ戻ります。』

通信は切れた。

もう一カ所、注意を引く所があった。

アーミースーツを着た男達が、ざっと数えて8人。研究所の内部に入り込もうとしている。

暗視スコープを覗くと研究所裏手の通用門で守衛を襲っている様子が見て取れた。

ナム達が鳴らした非常通知ベルに慌てる守衛数名を後ろから捕らえ、スタンガンを押しつけ意識を奪う。

手際がいい。プロの仕事だ。

電波塔に吹き付ける風が強くなってきた。火星ではよく砂嵐がおきる。その兆候である。

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