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ミッションコード:0Z《ゼロゼット》  作者: くろえ
衛星都市マッシモの奇跡
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嵐を呼んじゃうスナイパー

確かに何かの冗談だとしか思えない、とんでもなく悪趣味な出で立ち。

しかもメチャクチャ派手だった。地球連邦政府「官僚」一行はしばし呆然と立ち尽くす。


「お!アンタ、この車の人?」


そのショッキングピンクの少年が人懐こい笑顔を向けてきた。

癖の強いイエローブロンドの髪、明るいグリーンの瞳。

顔立ちもなかなか良い。もう何年かしたら女どもが放っておかない結構な男前になりそうだ。

だからなのかもしれない。

サンダースはつい、つぶやいた。


「・・・お前、頭 大丈夫か?」

「なんだよそれ???」


ショッキングピンクの少年は「心底わからない」といった表情になった。

ごん太眉毛の少年が顔を背け、暗く重たいため息ついた。

どうやら苦労しているらしい。彼の心情を推して知るには充分すぎる面持ちだった。

「ま、いいや。

これさぁ、さっきアンタ達の知り合って奴から預かったんだ。

『大事なモンだから直接手渡してくれ』って言われてさ。ずっと待ってたんだ。」

そう言って、ショッピングピンクの少年が片手に持った何かを差し出してきた。

手のひらの上にのるほどの、コロンとした小さな包み。

茶色い包装紙に包まれた、丸い形の物だった。


「!!?」


サンダースの側に居たボディガードが顔色を変えた。

彼はいきなり左手を振り上げ、包みを少年の手から払い飛ばした!

「おわ?!」

驚く少年2人を押しのけ、ジャケットの下に装着していたショルダーフォルスターから銃を抜く。

宙をふっ飛ぶ包みを狙い、続けざまに発砲した!


ドン!ドン!ドン!


銃弾は小さな標的を際どくかすめて弾き飛ばし、空高くまで遠ざける。

発砲から、3秒後。

その包みは、爆発 した!


バァン!!!


爆音が耳をつんざき、バラバラ破片が降り注ぐ。

悲鳴を上げるどころじゃ無い。裏路地の集う者達は、何が起ったのかすらわからず身を竦めて固まった。

「トルーマン、補佐官を頼む!」

ボディガードはフォルスターに銃を押し込み、呆気にとられて立ち尽くすショッピングピンクの少年に襲い掛かった!

腕を掴んでねじり上げ、車のボディに押しつける。拘束された少年は当然驚き、悲鳴を上げて必死でもがいた。


「痛ててて!ちょ、痛てぇって!」

「なんだ今のは!知ってる事を全部吐け!」

「知らねぇって何も!俺達はアンタらの知り合いってのに頼まれただけで!」

「ふざけるな!この界隈に知り合いなどおらん!」

「いや、ホントにそう言ってたんだよ!他には何も知らないんだって!」

ごん太眉毛の少年が泣きそうな顔ですがってきた。

「ホントなんッスよ!俺ら、なんも知らねぇンッス!

頼んできた奴が結構な駄賃くれたから預かっただけッスよ!

ウチの兄貴、放してくれッス!その人、見た目ほどおかしい人じゃ無ぇンッスよ!!!」

暴れる少年2人を相手にボディガードは苦戦した。


ボッッッ!!


鈍い音がした。

突然、車体に顔を押しつけられたショッキングピンクの少年の鼻先に、小さな丸い穴が開いた。

「・・・へ?」

少年達は再び呆気にとられ、状況を忘れて固まった。

その一方で、ボディガードが俊敏に動く。

玄人(プロ)の目には一目瞭然。政府官僚が乗る高級車に穿たれた穴は、紛うことなく 銃痕 だった!


「トルーマン、来い!」


茫然自失の少年達を2人まとめて突き飛ばし、ボディガードは車体の裏手に飛び込んだ。

秘書のトルーマンも転がり込む。腕には無様に狼狽えるサンダースをしっかり抱きかかえていた。

タイミングは「間一髪」。

次の瞬間、サンダースの高級車は 銃弾の嵐 に見舞われた!


バンバンバンドンドンダァンダンダン!

ドバババババンズドドドダンダダン!!!


フロントガラスが砕け散り、ミラーもハンドルも原形留めず木っ端微塵、金の掛った革張りシートはズタズタに裂け中身の緩衝剤をまき散らす。

強化金属の車体がみるみる蜂の巣になっていく。情け容赦ない 銃撃 だった!

「ひぃぃ!何とかしろ、フラット!!」

頭を抱えて蹲るサンダースが裏返った声で叫ぶ。その隣では顔面蒼白のトルーマンが首にかけた十字架を握り、何かブツブツつぶやいていた。

 フラット と呼ばれたボディガードは身を屈めて車の後部に回りこんだ。

車体から少しだけ顔を覗かせ周囲の状況を確認する。

2区画ほど離れた雑居ビル。その非常階段に黒いコンバットスーツの人影が見えた。


(あれは・・・女?)


人影は小柄で、華奢だった。遠目で見る限りでは、まだ年若い女性に見える。

銃器はスナイパーライフル、おそらく有効射程距離の長い強力な改造ライフルだ。

いったい何に取憑かれてるのか、相手は狂ったように撃ち続ける。

1分間に600発を撃ち放つ機関銃(マシンガン)のような、息もつけない怒濤の連射。これでは盾にしている車体が保たない!

(・・・どうする?!)

フラットは唇を噛みしめた。


「急げ!やべぇぞ早く入れ!」


凶弾が奏でる轟音に紛れ、慌てふためく声がした。

首を巡らせ見回すと、さっき突き飛ばした少年2人の姿が見えた。

車脇地面にあるマンホールの蓋をこじ開け、中に入ろうとしている。少々太り気味なごんぶと眉毛の少年が狭い入口につっかかるのを、ショッキングピンクの少年が必死で押し込もうと奮闘していた。

「早く降りろっつの!オラ!」

 げしっ!

「うげ!?」

ショッキングピンクの少年が舎弟の頭を情け容赦なく踏みつける。

入ると言うより、たたき落とされる勢いで、ごんぶと眉毛の少年はマンホールの中に消えていった。

それを見届け、自分も入ろうとする兄貴分。フラットは彼の襟首を捕まえた。


「ぅげ! ちょ、何すんだよ!」

「トルーマン!補佐官をこっちへ!!」

「ジョーダンだろ?!来んなよ!

俺らカンケーねぇし、逃げるんならてめぇらで勝手に・・・!」


無駄な話をしている場合じゃない。

再びフォルスターから銃を抜き、その銃口をふざけたシルクハットに押しつける。

「・・・。」

兄貴分の苦情は黙殺された。




何もそこまで撃たなくたって!?

そう突っ込みたくなるような、壮絶極まる銃撃だった。

精神状態が心配される、謎の女スナイパー。彼女は狙撃(?)に失敗し、獲物を全員取り逃がした。

しかし、彼女の獲物が地中にもぐり姿を消して4秒後。

サンダースの高級車は見事に 爆発 。火柱立てて 炎上 した。

普段、ひっそりしている大都市の裏路地はかつて無いほど騒然となった。


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