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ミッションコード:0Z《ゼロゼット》  作者: くろえ
ぶっ込み指令!極秘ファイル奪還作戦
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爆弾マニアとトリガーハッピー

摩天楼に浮かぶホログラフィ映像で一方的に語られるギド・ワルズ革命軍の「犯行声明」は続く。

『今、同胞による2度目の爆破が行われた!

我々の「粛正」は、地球連邦政府の腐った官僚共とと癒着する悪徳企業のオフィスビルに行われる。

これで終わりではない。無駄な抵抗はしないことだ!!』

強面の中年男が唾を飛ばす勢いでがなり立てている。

気合いの入っただみ声はS&M社ビルの非常階段にもガンガン聞こえてくる。

「思い出したで。こいつ、ギド・ワルズの首領や。

懸賞金がついとる札付き野郎で、マネーカード50枚(5千万エン)の賞金首や!」

「そのようッスね。ギド・ワルズ事態はアーバイン合衆国中で暴れ回ってる反地球連邦勢力ッスけど、首領は用心深くてなかなか姿を見せないって有名ッス。

このご大層な演説も、きっと他の小惑星にあるアジトからの生中継ッスよ。」

スレヴィのつぶやきをロディがタブレット端末をいじりながら捕捉する。

採光用の窓からのスコープを覗き、外の様子を伺ったA・Jが舌打ちした。

「装甲車が見える。地球連邦政府軍の対テロ組織特殊歩兵部隊が到着した、急がないとマズいぞ!」

「ンなこたわかってんよ!」

ナムは苛立たしげに言い捨てた。

「ロディ、まだか!?」

「もうちょいッス!」

ロディのタブレットを操作する手が早くなる。侵入と同時に放ったカメラ搭載蜂型ロボ(スパイ・ビー)から送られる画像を解析してビルの構造や状況を把握しようとしているのだ。

「落ち着いて下さいナムさん。気持ちはわかるッスけど・・・。」

ナムは奥歯を噛みしめ唸った。

一刻も早くモカ達を捜し出したい。それが本音だった。

しかしエメルヒは根っからの悪党だ。自分の欲を満たすためならなんだってする。そんなヤツとやり合う以上、こっちにも切り札が必要だ。

エベルナの基地から盗まれた、極秘データのディスク・プレート。アレと引き替えならモカ達の身柄を自由に出来る。その為に爆弾騒ぎのどさくさに紛れてS&M社ビルに不法侵入したのだ。

エベルナの基地に出入りした者達の面子は割れている。そいつらを見つけ出しプレートの行方を聞き出さなければならないが、連邦政府軍に見つかればタダでは済まない。ギド・ワルズの仲間だと勘ぐられでもしたら、言い訳もできずに極悪人の墓場・土星(強制収容所)送りになる。

ナムが苛立ち荒れるのも無理もなかった。


「・・・誰か来る!」

A・Jが鋭く叫んだ。

誰かが非常階段を上ってくる足音が聞こえる。その数は3,4人といったところか。

アタフタと慌てるナム達の前に現れたのは、警備員の制服を着た男達。彼らは一つ下の踊り場で立ち止まり、全員大きく目を剥いた。

「なんだキミ達は!ここで何をしている!?」

「いや、その、あのですね・・・。」

「ここは会社の中だぞ!?なんでキミ達みたいな子供がいるんだ!?

・・・つか、何だキミは?その格好はどうしたんだ???」

フォルスターに収まっている銃に手を掛けるA・Jを押さえ、ナムは必死に打開策を考えた。

社員証がないと入れないセキュリティ・システムの企業ビルに侵入し、非常階段に潜んでいたのである。ナムのぶっ飛んだ出で立ちも相手の懐疑心を盛大にあおっている。怪しい者じゃないなんて言って通じるワケがない。

(こりゃ、強行手段に出るきゃねーかなー・・・。)

ナムは殺気漲るA・Jを押さえる腕の力を緩めようとした。


「なんでいるか、やて?その言葉、そっくり返したるわ!」


スレヴィが整備員達の前に歩み出た。

突然高圧的になった不審者に、警備員達の目がさらに大きく見開かれる。

ナム達も呆気にとられ、不敵に笑うスレヴィを眺めた。


「お前、それマイト(ダイナマイト)やろ?

クラッシックな爆弾(花火)やが、高層ビルの要所要所に仕掛けて爆発させりゃ、み~んなまとめてぺっちゃんこや。

このビルに居る一般人ごとビルの解体ショーやらかす気かい!エゲツねぇやっちゃな!!」


守銭奴スレヴィは少々アブない思考の爆弾マニアでもある。

そのマニアが睨むのは、警備員達の一番後ろでコンクリートブロックほどの箱を抱えた小柄な男。

即座にナムはA・Jの腕を手放した。


A・Jは短銃を得意とする。その腕前は諜報員見習いあるまじく、狙った獲物は逃さない。

天才的な凄腕ガン・マンだが、銃のグリップを握るとガラリと人柄が変貌する。

普段冷静で退廃的な雰囲気を漂わせる中性的な美少年がトリガーハッピーな狂戦士になる様は、言葉では言いがたい。

「エーちゃんの銃にマジ弾入ってたら血の海だったな・・・。」

「練習用のゴム弾なんッスね?・・・よかった・・・。」

抱き合うようにして身をすくめていたナムとロディがつぶやいた。

諜報員は実弾使用を許可されていない。

しかし床一面に埋め尽くすほど転がった空薬莢と強化ゴム製の弾が、銃撃の凄まじさを物語っていた。

「立て、貴様!!」

怒り収まらないA・Jが青痣だらけになった偽警備員の1人を引きずり立たせ胸ぐらを掴み上げた。

「貴様ら、ギド・ワルズだな!?やり方が汚いぞ!何のために無関係の人間を巻き込む!!」

偽警備員は切れて血がにじむ唇を歪めて笑ったが、何も語ろうとはしなかった。

「待てエーちゃん!ビル吹っ飛ばすんなら他にも仕掛けた場所があるはずだ。」

A・Jは横目でナムを睨んだが、黙って意図をくみ取った。

「・・・吐け!」

練習用の銃とはいえ、45口径ある銃口を偽警備員に突きつけた。


その時、非常階段の一つ上のフロアへ入る扉が乱暴に開いた。

非常階段に銃を構えた武装兵達が躍り込んで来る。

新手である。武装兵達はすぐに降りて来ず、踊り場で銃を構えナム達に狙いを定めた!

「銃を捨てろ!抵抗すると射殺する!!」

先陣切って乗込んできた大柄の武装兵がA・Jに向かって叫ぶ。

A・Jは偽警備兵に銃口を突きつけたまま、自分を狙う銃口を見据えた。

さっさとホールドアップして固まるナム達を尻目に、極めて冷静な声できっぱり告げた。


「 断 る 。」


「・・・マジッスか・・・???」

絶望的なロディのつぶやきは黙殺された。

A・Jは偽警備兵を振り捨てた左手をジャケットの内側に突っ込み、もう1丁ごっつい短銃を抜き出した!

2丁拳銃である。

構えるのとセーフィティを外すのとは同時だった。

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