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ミッションコード:0Z《ゼロゼット》  作者: くろえ
ぶっ込み指令!極秘ファイル奪還作戦
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乙女がこだわるサイズ感

「だーかーらー、そういきり立つなって!

こんなガチテロ、こっちも想定外だ。俺の預かり知ったこっちゃねーよ。そうだろぉ?

はぁ?謀って嵌めた?・・・おいおい、人聞き悪ぃ事言うなよ。

若ぇ内からそんなひねくれてっと、リュイみてぇになっちまうぞ!リグナムよぃ!」

喚くナムをにやけた顔で軽くあしらう、頭が禿げ上がった小柄の男。

エベルナ特殊諜報傭兵部隊統括司令・エメルヒである。

意地悪くニヤニヤ笑いながらモカのキャスケットの通信機に話す部隊最高権力者を、モカ達3人は黙って見守っていた。

突然現れたエメルヒにモカ達は助けられた。高層ビルの瓦礫が落ちてくる公園で、キノコのオブジェの下で身動き取れなくなっていた所を救い出してくれたのだ。

しかし3人は有無を言わさず公園から連れ出され、すぐの高層ビル街裏路地に押し込められた。

あっという間にナム達と引き離され、エメルヒの手中に落ちてしまったのだ。

「・・・でもまぁ、杞憂ってヤツだぁな。見せてもらったぜぇ?今の対応をよぉ。

爆発時の咄嗟の退避行動、奇襲へのカウンター攻撃。さっすがパーフェクト・リュイの愛弟子だねぇ♪

これならギド・ワルズなんざ敵じゃぁねーな。ミッション続行だ。極秘ファイルの奪還、頼んだぜ!」

『あんな冷血暴君知ったこっちゃねぇよ!!誰が愛弟子だゴルァーーー!!』

大音量で炸裂したナムの怒声に顔をしかめ、エメルヒは通信を切った。

「・・・リュイの話になる荒れやがる。ま、いっつもあんだけイビられてりゃ当然ってぇやつか。

帽子、返すぜ。いきなり取り上げて悪かったな。」

「近寄るんじゃないわよ!!」

振り向いて人なつこい笑顔を見せるエメルヒにシンディが噛みついた。

「モカさんに手ぇ出したら、タダじゃおかないわよ!?」

「止めて、シンディ!」

モカは拳を握りしめる義妹を慌てて捕まえ下がらせた。

目の前に居る男は悪党だが、局長・リュイの上官である。下手に逆らうとリュイにその責めが行く。

それだけは避けたい。自分のためにリュイが苦境に立たされる事態にだけは、なって欲しくなかった。

「スミマセン、統括司令殿・・・。助けに来て下さって、有り難うございます・・・。」

嫌がるシンディの肩を抱いて、モカは一緒に深く頭を下げた。

「モカちゃん、か?」

エメルヒが聞いてきた。

「・・・はい。」

モカは唇を噛みしめた。


「・・・綺麗になったなぁ~~~!!!」


・・・は?

思いがけない言葉にモカは顔を上げた。

目の前に喜色満面のエメルヒの顔。驚いてシンディと一緒に後ずさる。

エメルヒはモカを上から下まで眺め回し、感嘆のため息をついた。

「いやいやいやいや!どーだよこれは!?

女ってのはわかんねぇもんだ、ちぃっと見ねぇ内にすっかり変っちまう!

見違えたぜモカちゃん!すっかりベッピンになっちまってよぉ!」

「え?えええぇぇぇ!?」

この手の褒め言葉になれていないモカの頬が、パァッと赤くなった。

「何テキトーな事言ってんのよ!白々しい!」

シンディが手厳しく怒鳴りつけた。

「アンタ、今までモカさんの顔ちゃんと見た事なかったくせに!私、知ってんだから!」

「シンディ!!」

最高権力者をアンタ呼ばわりする義妹に、さすがのモカも声を荒げた。

「いいってことよ。シンディちゃんが怒るのもモカちゃんを心配してのこった。可愛いじゃねぇか。」

エメルヒは禿げた頭をなで上げて苦笑した。


実はエメルヒ、モカをまともに見た事がない。

つまり今の今までモカの顔なんて知らなかったのである。

そもそもモカはこの男を徹底的に避けていた。エメルヒの人を「手駒」としか思わない冷酷さを恐れ、必死で逃げまくる事数年間。改めて顔を合わせるのは、何と今日が初めてなのだ。

「シンディちゃんよぃ。確かに俺ぁ、ちゃんとモカちゃんを『見た』事ぁねぇ。

でもな、一度だけちゃんと『会った』事ぁあるんだよ。なぁ、モカちゃん?

もう6年前になるか。リュイの野郎がリーベンゾルから帰還して、初めてモカちゃんを基地に連れてきた時だったよなぁ?」

「なにそれ?会ったのに、顔見てないの?」

シンディが首を傾げる。

「だってよぉ。リュイの後ろに隠れて出てきてくれねーんだもん。

声かけてもビクビクオドオドして返事してくれねーし、、リュイのケツにしがみついて離しゃしねぇ。

そん時ゃ頭クリクリに刈上げられてるわ、チビでガリガリに痩せてるわで、とても女の子にゃ見えなかったもんだが・・・。

まさかこぉんな可愛い子ちゃんだったたぁなぁ!いや将来が楽しみだ。こりゃいい女になるぞぉ♡」

「アタシもそう思う。」

いつの間にか、マルギーがエメルヒと並んでモカを眺めてウンウンと頷いていた。

「モカさんは可愛いよ?特別美人じゃないけどさ、妙な色気があるんだよね。」

「色気!?そんなことないよ!私、ムネちっちゃいし?!」

「いやいや、全体のバランスがいいんだよね。ダイナマイツ・ボディなお姉ちゃんはそこいら中にごまんといるけど、均整が取れた女体って希なのよ。」

「にょ、女体って!?だから私、ムネちっちゃいんだってば!!」

「いや~、さすが黄金比率の女!ホント、カレシが羨ましー♡ 」

「止めてー!私、ムネちっちゃいのぉぉぉ!!!」

すっかり取り乱すモカの妙なこだわりように、エメルヒがシンディに聞いた。

「・・・モカちゃん、なんでムネにこだわっとんの?」

「・・・知らない。」

すっかり呆れたシンディは怒りも嫌悪も忘れて首をフルフルと横に振る。

「黄金比率の女っちゅーのもよくわからんが・・・。そーか!モカちゃん、カレシいるのかー!♪

それでこんなに綺麗になったってぇワケか!なるほどねぇ!!」

「きゃああぁぁ!違うんですぅ~!」

真っ赤な顔を両手で覆いイヤイヤと首を振るモカに、エメルヒがにじり寄る。

「で、どこのどいつだ?こんな可愛いこちゃん射止めやがったのは?」

「え!?あの、そ、それは・・・。」

問い詰められて妙な窮地に陥ったモカが言葉に詰まった時だった。


ドォォォン!!!


空気が震え地面が揺れた。

今度は目の前に建つビルの2,3階部分が爆発し、真っ赤な火を噴いて燃え上がった。

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