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バッドエンドのその先に  作者: つよけん
第2章「伝説の剣の行方」
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情報収集へ2

 俺とナナはセカン街まで辿り着き、メインストリートを何食わぬ顔で歩いていた。

 ここはアジトがあるサド王国から南東に進んだ場所にある。

 セカン街はライ島とレフ島を結ぶ大きなセンター橋のふもとに存在して、人間と魔物が唯一平和的に共存出来ている街である。

 何故、共存が出来ているのかと問われれば、誰しもがこう答えるだろう。

 彼女には可能だと。

 この街を収めている者が人間と魔物のハーフであり、絶対的強者である。

 平和的な思考の持ち主で、争いごとを好まない。

 もしも逆らえばこの街を追放されるとか甘ったるい考え方は一切なく、問題を起こしたり喧嘩するだけで躊躇なくその場で死刑が確定するのだ。

 この時点で平和的とはなんだと突っ込みたくなるのだが、今は考えずに置いておこう。

 1人しかいない絶対的強者なのに事件をすぐに察知できる物なのかとも問われれば、誰しもがこう答えるだろう。

 彼女には可能だと。

 このセカン街全体を感知魔法で覆いつくして、不穏な動きが少しでもあると勝手に上級魔法を発動し何もかもを蒸発させてしまう恐ろしい固有魔法を有している。

 無属性魔法を常時使用しているので魔力量は底がないはずだ。

 そんな都合のいい魔法なんてこの世界に存在してよい物なのかと問われれば、誰しもがこう答えるだろう。

 彼女になら扱えるんです。

 それもこれも俺が全部設定したん事なんだけどな。

 おそらくこの世界で魔王よりも強く、俺よりも強い最強の人物である事は間違いない事実である。

 ただ彼女の名前や容姿は設定で考えておらず、表立っての行動が無い為、謎の多い支配者としてこのセカン街を陰から収めている重要人物である。

 一つ言える事は彼女が平和的存在であるからこそ、この街がとても穏やかで中立的な場所として栄えている事は間違いないだろう。

 前置きはこのぐらいにして……。

 まずは情報収集をする前に軽い腹ごしらえをしようと、人が混雑する大きな一本道の両脇でやっている露天で、歩きながら食べる物を買う事にした。


「2つで銅貨10枚だよ」

「ありがと」


 ナナはたんぱくなお礼を言って露天の店主に銅貨を渡す。

 店主は銅貨を確認してから手際よく現世で言うコロッケみたいな食べ物を袋に詰めた。

 それを彼女が受け取って、一つを俺へと差し出してくる。


「はい!モドキヤキ!」

「おう!サンキュー」


 説明するまでもなく、モドキヤキとはコロッケみたいな物である。

 何故モドキヤキ?と言われると設定する際にコロッケだと味気ないネーミングだったので、俺が適当に名付けたセカン街の名物だ。

 コロッケと味は大差なく変わらないが、現世の物より腹持ちが良く、1つでお腹いっぱいになれる。

 原理は分からんが、自分が設定したらしい……その辺の詳しい箇所は覚えてないけど。

 兎にも角にも手軽で満足が出来る良い品であることは確かだ。

 俺は歩きながら1分も立たないうちにモドキヤキを完食する。


「あ、トモキ兄ちゃんちょっと止まって」


 ナナが突然、俺の顔を見て指示を出してきた。

 不意にナナは俺へ接近して彼女の手が俺の頬っぺたに付いていたモドキヤキの欠片を手に取ると、それを彼女は素早く口へと運び喋りだす。


「そんなに急いで食べても体に悪いぞ」


 俺は照れ臭そうに答えた。


「き、汚いだろ、別に食べなくてもカスを払うだけでもよかったんじゃ?」

「むぅ……私が食べたかったんだからいいじゃん」


 そんな感じで俺達は数秒間だけ見つめ合った。

 俺はさっきナナの部屋で起こった恥ずかしい事件の事が頭をよぎる。

 ナナも意識していたようで、お互いに体をすぐに離れさせた。

 まだキス未遂に終わってしまったが、このままの調子だといずれ……。

 って俺は何考えてるんだ!今後このような事が起らないように注意しないと!

 ここは話の内容をがらっと変えようと、少しだけ焦ったようにナナへ会話を投げかける。


「で、伝説の剣の情報をどうやって探そうか……」


 それを言ってから直ぐに俺達は自然に足を動かし、センター橋の方向へと自然にゆっくり歩きだす。


「安心して。一応、当てがあるからセンター街に来たの」

「それは心強いな」


 ナナは自信満々に胸を張ると、くるっと一回転半体を横回転させて俺の方向を向き、器用に後ろ歩きで歩行しながらもう一度喋りだした。


「この先のセンター橋の一角に、情報屋さんがあるの。ここは人間も魔物も共存できる場所だし、お金さえ払えば平和的に情報を入手できるってわけ」


 そんな便利な場所が存在するのか。情報屋と言うのは初耳だから、俺の知らない領域である。

 だけど、そう易々と情報なんて入手出来る物なのだろうか。ましてや伝説の剣だぞ。

 あったとしてもどれだけのお金を要求されるか。

 もしかすると二束三文で売った伝説の剣以上の値もあるやもしれない……。

 最初っから売ってなければ済んだ話だと言われれば、耳が痛いけどね。

 それよりも……だ。こんな人で混雑している場所でよく後ろ向き歩きとかできるな。

 誰かにぶつかりそうだと思ったが、彼女は後ろに目でもついてるんじゃないかと言わんばかりに器用に避けていた。


「よく後ろ向きで歩けるな」

「人の気配を読めばそこまで難しい事じゃないよ?トモキ兄ちゃんも出来るんじゃない?」


 ナナは簡単そうに俺の質問に答えた。

 後ろ向きに歩けない訳じゃないだろうけど、そこまで自信満々には出来ないと思う。

 その後、ナナは話が終わったのかもう一度前へ向き直して、俺達は他愛のない話をしながら前へ進んだ。


 しばらくメインストリートを歩くと、大きな白いレンガ作りのセンター橋の入口へと到着した。

 以前も今も入口には門番が立っており、恐らく通行手形が無いと通れない仕組みとなっている。

 でも、なんで今も門番が?

 たとえ通行手形を持っていたとして、橋を渡ってレフ島に行こうとしても、途中で橋は崩壊しているはずだ。

 何故ならレフ島はあの忌まわしき大事件の起きた場所なのだから……。

 考えないように気を付けているが、やっぱり記憶はこびり付いているようで、ふとした拍子に思い出してしまうな。

 俺は何事もなかったように、ナナに問い掛ける。


「なんだか少し雰囲気が変わったな」


 先程の道とは別の場所にいると錯覚するぐらい、人混みが無くなりガラッと状況が変わっていた。

 ちょっとうす気味悪い気がする。


「この辺りは魔物の方が多いからね。中立と言っても表立っては行動してないだけで、裏では色々人間には不満があるみたいだから」


 ナナは少し不穏な事を口にすると、迷わず歩みを進めた。

 センター橋の入口を通り過ぎて、橋の下にある通路へと入っていく。

 堂々と歩いていると、やたらこちらをジロジロと見てくる奴らばかりだった。

 争いごとが出来る環境だったら、絶対に絡まれているだろうと考えていると。


「おじさーん。いる?」


 ナナはホームレスが住んでそうな貧相な家に大声で誰かを呼んでいた。

 しばらくしても返事が無いようだったから、俺は留守なのかと思っていたその時、3テンポぐらい遅れて貧相な家の中の遠くの方からやまびこの様に声が返ってくる。


「……」


 まだはっきりとした声は聞き取れないが、反応はあるのでしばらく待てば誰か出てくるのだろうか。

 と言うよりも、どうしてこの小さな貧相な家なのに、奥行きある声が聞こえてくるのか……。


「あ、トモキ兄ちゃん言い忘れてたんけど……」

「ん?どうした?」

「情報屋のおじさんは……」


 と、ナナが言おうとした時だった。

 何やらすごい奇声が段々と近づいてくるのが分かる。

 その後、3秒後ぐらいだろうか、突然奇声が止んだと思ったら……。

 目の前の貧相な家の屋根が突如ぶち破られて、中から50代ぐらいの毛むくじゃらの男性が飛び出してきた。


「ナナちゅぁーん!どぉーしたのぉぉぉぉ!!」


 空中で毛むくじゃらの男性はポーズを決めながら発言すると、勢いよく地面へと着地する。

 少しバランスを崩していたようだったが、ビシッと腕を組んで何事もなかったように仁王立ちしていた。

 ナナはその様子を一部始終見た後に、添えるように残りの言葉を発言する。


「……少し変な人だけど、いい人だから安心して」

「お、おう」


 何ひとつ安心できないのが本音だ……。

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