第七話 主人公を作ろう、マッパで!
「Mさん?」
「ん?」
「民の私への信仰度も少しあがって、順調にエネルギーが増えてきたから、そろそろ美少女キャラを作って、ハーレムで働かせようと思うんだけど……」
「やっぱりハーレムって、そのハーレムか!!」
「うん……、違うの?」
確かにもともとは、ハーレムというのは複数の女性をはべらせて遊ぶ、男性のための施設である。貴族であったり、大金持ちであったり、王であったり、そのような権力やお金を持った、恵まれた人達のための、特別な場所なのだ。特に王にとっては、よき跡継ぎを作るための大切な場である。
しかし「異世界」における「ハーレム状態」、というのはそれとは異なる。主人公一人に対して多くの女性が群がり、モテモテとなることなのだ!(くわっ。
「じゃあ……、ハーレムの看板に群がってたみんなのためのハーレムは、作らない方がいい?」
「いや……、それは考え方次第かもしれないな……。Rがこの世界をどういうものにしたいか、何をしたいか、によると思う。でも信仰を得てエネルギーをもらうだけなら、別のことでがいい気がする」
「うん、わかった。じゃあ今日は、主人公と美少女キャラを作るね」
「え? 主人公? そういうのがいる世界なのかこれは」
「うん……。駄目かな?」
「そりゃあ、駄目だと思うけどね……。ある世界が、ある一人の人物、主人公のために作られたものなんていうなら、それは政治的ポリシー的には、『独裁』と言っても過言ではないからな」
「独裁だと、何が悪いの?」
「うーん……、基本的人権やら、社会契約論的にとか、うーん……。まあ、神がよしとするなら別にいいんじゃないかな?」
「うんわかった!!」
Rはハーレムの看板のそばに、イケメン金髪青眼の美男子(主人公)をマッパで登場させた。彼はなぜか、日本語を喋った。
「うーーん……、ここは?」
主人公は、自分がマッパであることに気づいて、一瞬ほほを赤らめたが、こんなことで狼狽していては主人公足り得ない、とばかりにかっこよく立ち上がった。
「きゃあああああwwwww 勇者さまああwww」喜ぶR。
「勇者属性ももってるのか。まあ、そうだろうな」いらっとくるM。
「もちろんそうよ! さらにいうとこの子は、ドラゴンの子孫にしてRガルドの末裔にして剣術と魔法の達人にして料理の鉄人にしてTOEIC1級(?)にして今年の抱かれたいキャラナンバーワンなの。Mさんとは格が違うのよ!」
「いや……、この俺をキャラごときと比べるな」
勇者は看板を見てつぶやいた。
「ハーレム? 知らない言葉だな。俺には関係ない。俺は常に最強の戦士であり続けるだけだ。例えマッパであろうともな!」
「ふぉおおおおおおおwwww!!!」 Rが地球上空でぐるぐると回転してMは目が回りそうになった。せめてだれかこの勇者に旅人の服でも着せてやってくれ、とMは吐きそうになりながらそう思った。




