第六話 ハーレム、だと?
ハーレム! ハーレム!
「Mさん?」
「ん?」
「ここまで順調だよね?」
「うん……、なぜだ?」
「それがね……」
Rは右手を上げて、人差し指を立てた。その指の先に、電気使用量メーターのようなものが現れた。その数字は「3805114」となっている。
「私のエネルギーが、ずっとじわじわ減ってるの」
「ふむ……」
確かにメーターは少しずつ減っている。下一桁が4だったのが、今は4と3の間になっていた。でもそれだけ見ても、Mにはエネルギーなのか何なのかわからない。
「ちょっと……、何かにエネルギーを使ってみてもらえるかな?」
「うん、ちょっとだけだよ」
Rは身体を住人と同じ大きさにしてある町に降臨し、空き地に行ってひとつの看板を立てた。Mがそれを見ると、看板にはこう書かれていた。
┌────┐
│ハーレム│
└─┬┬─┘
||
┴┴
「な……、なんだこれは……」
「だって……、異世界にはハーレムが必要だって、言われたんだよ」
「誰にだ……」
「誰にって……、小説家になろうっていうサイトで知り合った、知らない人にだよ」
MはするっとRの身体から抜け出し、どこからか巨大なハンマーを取り出し、看板を壊そうとした。
「待ってぇえええ!! その前にこのメーターを見て!」
Rが人差し指をMの顔に突き付けた。数字は「3805108」となっていた。
「その看板を作るのに、5ポイントも使っちゃったんだよ!」
Mはカウンターをしばらく見つめていたが、構わず再び看板に向かってハンマーを振り上げた。その時、周囲から声がした。
「やめろ!! お若いの!」
「それを壊すとは、何ごとだぁあああ!」
「うわーーん! うわーーん!(号泣」
Mは不気味そうに周囲を見回した。いつの間にか、四等身のおもちゃのようなキャラたち(?)が、集まってきていた。見た所どれも男性キャラのようだ。
「お前ら……、おもちゃの癖に色気づきやがって!!」 Mの目がぎらりと光る。
しん、と静まり返るキャラたち。
「違うんじゃお若いの、そうではないんじゃ……」
ひとりの老人が恐る恐る歩み出て、そう言った。
「わしらは、女神さまの作ったこの看板を、大切にしたい。わしらの願いはそれだけなんじゃ……」
「女神……。Rを女神だと理解してのことだったのか……」
「うむ……。女神さまがこの町のために作ってくださったこの看板を、わしらはこれからも、大切にしていかねばならん」
老人は、看板に向かって手を合わせた。
┌────┐
│ハーレム│
└─┬┬─┘
||
┴┴
その瞬間、「コイーーン!」、という、マリオ(?)がコインを叩く時のような音がした。Rが驚きの声を上げた。
「あ!! Mさん!! エネルギーのカウンターが、10ポイント上がったよ!」
「何!?」
確かに、カウンターは「3805118」となっている。Rは、エネルギー10ポイントをゲットした!!
「やったね!! でもちょっとしょぼいね!」
「確かに……合掌一回で看板2つ分のエネルギー、か……」
ざわ……、ざわ……。
女神であるRの、「しょぼいね!」、という感想を聞いて、キャラたちの間にざわめきが起こった。
「俺達も祈ろう!」
「そうだ!! 俺達も!」
「ハーレム!! ハーレムううううう!!」
「Rさま! Rさまーーー!!」
コイーン!! コイーン!! コイーン!! コイーン!! コイーン!! コイーン……。ものすごい数の、コインSEが鳴り響き、Rのエネルギーカウンターは、どんどん上がっていった。
「やったよMさん! これで一週間分くらいのエネルギーをゲットできたよ!」
「むう……」
Mがハンマーを降ろした。それを見てキャラたちが歓声を上げた。
「おお、女神様の下僕が許してくだされたぞ!」
「やったああああ!!」
「ハーレム!! ハーレム!!」
「うわあああい!! ぱふぱふ!! ぱふぱふぱふ!!」
おい、お前ら……、とMは突っ込みを入れそうになったが、Rのエネルギーのためだと思い、黙っていた。Rは「ハーレム」、という看板の前で、にこやかな笑顔をキャラたちにふりまき、手を振っていた。こうして「ポニーテール惑星」初の、「ハーレム」という看板が誕生したのだ!(くわっ!!