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第十九話 蘇生失敗の恐怖、地の王出現

 お城の謁見室えっけんしつに転送されたアンノ・パーティー。その状況は、酷かった。


・勇者アンノ  死亡

・ミコン姫   傷

・赤毛の女兵士 死亡

・魔術師    傷

・僧侶     死亡

・発明家    死亡

・遊び人    死亡

・ライター   死亡

・芸術家    


「み、みなさんどうされたのですが!」 芸術家が悲鳴のような声を上げた。


「お前……、そういえばさっきいなかったな。どこに行ってた?」Mが質問した。


「あなたは?」


「俺はM。女神とともに、お前達を見守っていた、精霊のようなものだ」


「そうなのですね、すごい身体を持った、たのもしい精霊様ですね。私は……、みなさんとははぐれてしまっていたんです。スケッチをして、あまりの天気の良さに楽器を弾きながら何曲か歌って、気が付いたら、みなさんの姿がどこにもなくて……。そのうち日が暮れてきて、その後気づいたらここに……」


「そうか……、不注意だがそのおかげで助かった、ともいえるな」


Mは、さきほどであった野良弓士たちと、3人の裏切りの話を芸術家に聞かせた。


「そんなことが……」


「まあ、全員が少し不用心すぎた」


 入口でざわめきが起こり、一行がそちらを見ると、兵士に付き添われて僧侶が入ってきた。彼はミコン姫と幼女の手当を始めた。肉体に受けた損傷を癒し、体力を回復させ、異常状態を直すのが僧侶の役目だ。


「亡くなられた方が、6人も……」僧侶はうめいた。重苦しい雰囲気。たまらずRは身体を見える化させ、僧侶に詰め寄った。


「なんでそんな顔をするの? 僧侶が復活の呪文を使えば、死んだ人も生き返る、そういう設定にしたはずだよ!」


「い、いや……、私達が古くより学んでいた知識では、僧侶の復活の呪文による蘇生の確率は、80%……。失敗したら遺体は損壊し、二度と蘇生できなくなります」


「そう、なの??」


「ええ……」


「ちょっと待ってね。その確率を、100%にしてみるから」Rが右手を上げた。指で空中をなぞると、そこにゲームの設定画面のような、緑に光る文字が表示された。おお、と僧侶が驚きの声を上げた。その瞬間、コイーン、という音がして、Rへの信仰度が上がった。


「これね……、駄目みたい。ロックがかかってる……。ロックをかけたのは、地の王デュノワール? 私以外の神様の名前みたいだね」


「地の王……、か。クトゥルフや異世界憲法の神とはまた別の神なのかな? サーチしてみることは出来るか?」


「うん」Rは目を閉じ、惑星表面をスキャンした。


「あ……、危なく見落とす所だったよ、新しい神は、地下500メートルにいるみたい。地下100階あるダンジョンの、最下層だね、そこで……」Rはぶるっと身体を震わせた。


「どうした?」


「うん……、すごいものが見えちゃった。そのデュノワールという神はね、●●●●に●●●●を●●●●として与えることで、ものすごい量のエネルギーをゲットしているみたい。怖いよ……」


「うーーーん……」


 ひょっとしたら、善と悪が真正面からぶつかりあい、雌雄を決するとしたら、悪の方が勝つのかもしれない。悪にはそれほどの魅力がある。地球ではそれを、「警察力」という圧倒的な正義の武力で、なんとか抑えこんでいただけなのかもしれない。まだまだ未開なこの惑星で、そのような善と悪との戦いが起こったとしたら、果たして善に勝ち目はあるのだろうか……。難しいかもしれない……、とそこまで考えたMは、Rに一つの提案をした。



「今ロックされている以外の、すべての設定を、Rの権限でロックすることは可能かな?」


「あ、できそうだよ。全部ロックしておくね」


「ああ……」


 蘇生率は80%、それは変えられなかった。だが考えようによっては、0%でロックされてないだけ、マシなのかもしれない。まだ希望は残されている。


「じゃあ、蘇生呪文をかけてもいいでしょうか?」僧侶が言った。


「うん……」Rが言った。


 ※作者註

   ここからは、一人蘇生させようとするたびに、

   作者が10面のダイスを振って成否を決定します。

   出目が10なら蘇生は失敗し、遺体は埋葬される。

   どうなることやら……。



 まず、勇者アンノは……、成功……。「女神様……」、アンノは悔しそうに顔を歪めた。


続いて赤毛の女兵士、成功。

僧侶、成功。

発明家、成功。

遊び人、成功。

ライター、失敗した!! ライターは埋葬されます。


 ぎり……、とMがまた歯軋りをした。


(R、面倒だ。裏切り者とさっきの野良弓士には、俺とRだけで奇襲をかけて殲滅しよう。そのあと異世界憲法神、地の王、クトゥルフ神の順に退治だ! 大丈夫、俺が絶対なんとかする!)


(う、うん……。でも……)


(ええい、まどろっこしい!!)


「うおおおおおおお!!!」Mがそう叫ぶと、Mの身体はバキバキと変形し、彼は巨大な赤鬼となった。


(Mさん何それ、怖いよ!! 初めてみたよ!!)


驚くRをかるがると小脇に抱え、MはRとともに天井をすり抜け上空へ飛んだ。


「Mさん! Mさんもこういうことできたんだね! すごい!」


「ああ、言ったろ? 俺も以前、日本を乗っ取ろうとしたことがあるって」


「でもこれは駄目だよ。反則だよ。自分達で作ったキャラを、自分達で殺すなんて」


「そうも言ってられないだろ?」(俺はもうお前の涙は見たくないのだ)


Mは湖の方向の見当をつけ、そこに降下した。果たして、そこには裏切り者3人と、十数人の弓士たちが火を囲み、肉を食らい、酒を飲んでいた。


「R、目をつむってろ」


「う、うん」Rは目を閉じ、赤鬼に筋肉質の胸板にしっかりとしがみついた。殺戮は一瞬にして終わった。Mは冒険者から奪った剣を腰にぶら下げた。再び上空に飛んだMは、今度は東を目指して飛んだ。砂漠の町がそちらにはあり、異世界に詳しい、異世界憲法の神がいるはずだった。

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