表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/33

第十八話 初めての全滅。プレイヤー・キル!

ちょ、ハードモードすぎw

 膝より少し少し下あたりまでの、丈の長めな雑草が生える草原を行く「アンノ・パーティー」であったが、湖に向かって下っていくに従い、周囲の風景に変化が見られた。灌木かんぼくや、葉が生い茂った高木たかぎなど、人が隠れられそうな場所がそこかしこに見られ始めた。湖のほとりには、さらに多くの灌木と木々が群生しているのだった。暮れかけた太陽が、さらに危険度を増していた。


(駄目だ……、戦闘に不慣れな仲間でここは危険すぎる!) MがRに警告する。


(うん……、でもアンノ君の意見を優先したいの)


(アンノのことを考えるなら、ここで一度ストップすべきだけどね)


Rは返事をしなかった。少しだけ、イケメン金髪勇者様であるアンノが困る顔を見たかったからだ。だが……。


 トスッ


「え?」


 軽い音がして、ミコン姫がアンノを見た。アンノが右手をあげ、びっくりした顔でミコン姫を見つめ返す。アンノの左胸に、矢が突き刺さっていた。倒れるアンノ。


「アンノ様!!」


駆け寄ろうとしたミコン姫の足にも、数本の矢が刺さり、たまらず草むらに転がった。


「姫!!」


叫んだ赤毛の女兵士の兜のすきまに、数本の矢が突き立った。膝を突き、後ろに倒れる女兵士。慌てて攻撃魔法を詠唱し始めた魔術師(幼女様)が、後ろからの攻撃で失神し、倒れ込んだ。


(なんなのこれ……、何が起こってるの?)パニックに陥るR。MはそんなRを落ち着かせるための案を考えようとしたが、それより優先なのはこの状況の把握だと判断し周囲を観察する。こんな時にRの「スキャン」の能力があると便利なのに、とMは思う。


(R、周囲をスキャンしてみてくれ)


(う……、うん……)Rが震えながら答える。そうか、Rは本格的な戦闘は、初めて経験するのだった、とMは考え、すこし後悔した。神社でのバトルも、その後のアマテラスとの最終決戦でも、Rは自ら何かをしたわけではなかったのだ。すべてが幸運だった。ただそれだけのことだったのだ。こんなか弱い少女が、最強の女神であると勘違いしてしまっていた俺は本当に馬鹿だった。と、Mが瞬時のうちにそこまで思考した後、Rはフィールド周辺を赤い光でスキャンし状況を把握した。だがその間に僧侶、発明家、ライター、遊び人が死亡した。パーティーで無傷なのは、MとRを除けば、武芸家、格闘家、冒険者、だけであった。魔術師(幼女様)は気絶し、ミコン姫は足に受けた傷の痛みに、顔を歪めて草の上を転がっていた。そんな二人を、武芸家、格闘家、冒険者、加えて、灌木や樹木に隠れていたやさぐれ者たちがゾロゾロと取り囲んだ。


(なんでこんなことに……、こんな世界にした覚えないのに!) Rの目から、涙がぽたぽたと落ちた。


(ちっ! 今さらだがしょうがない)Mは、ゆらり、とRの身体から抜け出し、ミコン姫のそばに立った。


「お? もう一人いたか」ボーガンを持ったやさぐれの一人がMに向けて矢を放った。だがその矢はMの心臓を通過し草むらに転がった。


「おお??」


二十人ほどの敵が、Mとミコン姫を取り囲んだ。幼女様はすでに敵に捕らわれ、数人の男達によってもてあそばれていた。


「お前ら!! それ以上動くな!!」 Mの吠えるような声に、すくみ上るやさぐれども。Mは右手を上げた。そこには「吾妻鏡あずまかがみ」のカードが掲げられていた。


(Mさん、やめて……、大丈夫だから……)顔を歪め、ぽろぽろと涙を流しながら、Rが言う。


(大丈夫だって? 何が!!)MがRに向かって吠えた。ひっと身をすくめるR。


(アンノ君が死んだら、最後に立ち寄ったお城で全員復活するように、設定を変えるから。ちょっと難易度高いけど、しょうがないよね。ごめんねアンノ君。ひっく、ひっく)


(ぬう……)憤懣ふんまんやるかたないと言った様子のMであったが、右手を降ろし、ど迫力の声ですごんだ。


「お前ら。今日の所は生かしておいてやろう。次に会った時には、死ぬよりもひどい目に合わせてやる。いいな?」ギロリ。Mはやさぐれども全員に、一瞥いちべつくれた。悪魔のようなその目に、やさぐれどもは震え上がり、あまつさえ腰を抜かしておちっこちびった者さえいた。


 やがて死亡あるいは負傷したメンバーを、銀色の泡のような輝きが包み込む。それはまるでRの必殺技、「鮎の奔流ほんりゅう」のような素敵なビジュアルだ。MとRと、そして死傷したメンバーは、ゆら、とゆらめく次元の裂け目に吸い込まれ、10秒くらいたった後には、スタート地点である草原の町のお城の、謁見えっけんの間に倒れていた。王座には王が座っており、丸い目をいっそう丸くして叫んだ。


「おまえたち、もう戻ってきたんかーーい!」


「お父様……、ごめんなさい……、アンノ様を守れません……、でし……、た……」 ミコン姫がそう言って意識を失った。



(武芸家、格闘家、冒険者がいない! アイツら、最初からアンノのパーティーに参加するつもりはなかったようだな。すべてヤツらの計略だった、ということだ)


 バリバリ、と歯軋りをするM。


(R! 魔王の前にず、すごいみずうみのやさぐれどもの討伐だ!! 大丈夫、俺一人でもなんとかなる。頼むからやらせてくれ!!)


(うん……)Rは、Mがアンノのことを嫌ってるのだと思っていたのだけど、そうでもなさそうだとわかって、すこしほっこりした。だがそんなほっこり感をぶち壊したいかのように、不気味なBGMとナレーションが流れた……。


「女神Rの機転により、なんとか全滅&拉致監禁という最悪の事態を逃れたアンノたちであったが、Rの知らない間に設定をハードモードに変えられたこの世界は、アンノたちをさらに苦しめる! 蘇生魔法の成功率は、80%程度、だと? 次回、緊迫ととなり合わせの灰と埋葬の巻(パクり! おったのしみにーー!!(キリッ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ