第十七話 ざわ……(戦闘の予感
Mは、勇者アンノの様子をうかがっていた。いくら天然美少女(?)であるRが作ったキャラクターであるとは言え、あらゆるチート属性を持っているであろうアンノまでが、この先の湖に、R同様に何の危険も感じていないはずがなかろう、と。
(Mさん?)
(は!!)
Rにまた心を読まれていた! とMは焦った。そうだ、Rだって、ただの天然美少女(?)ではない! その魅力は、俺が一番良く知っているのだ。がんばれR!! と、MはRにすり寄った。
(私、別に何の危険も感じてないわけじゃないよ?)
(え??)Mは驚いた。「すごい湖」、という名前に笑ったRが、その名前に隠されたリスクがないかなどと、考えているようにはとても思えなかったからだ。
(全くリスクを感じてないわけではなかったのか)
(うん、リスクがあるから楽しいんだよ)
(なるほど……)そうか……、確かにそういうのもありだ、とMは思った。だがこのきな臭い感じを、この14人(Mを含む)の中の何人が感じているのだろう。過去、何百回もの戦闘をこなしてきた俺が、この先に待つモノに何か嫌な気配を感じている。Rも、少なからず何かを感じているようだが、果たして他に、そのような気配に気づいている者はいるのか……、とMは一行を観察した。だが彼らの意識は、その様子からは読み取れない。
(大丈夫だよMさん、みんな警戒してるよ。適当に集められた人達だと思ってたけど、ちょっと違うみたいだね)
(そうなのか?)
(うん……、緊張感で空気がぴりぴりして、すごいくらい)
(ああ……、言われてみれば確かにそうだな)
Mは、自分がこのパーティーのメンバーを過小評価していたことを恥じた。確かに空気が違って来ていた。もしかしたら、言葉ではなく空気で会話しているのではないかと思うくらいに、研ぎ澄まされて遊びのない空間が、メンバーの回りに形成されていた。何かがふれれば問答無用でバラバラにする、というような気迫が周囲に漂っていた。
(このような四頭身キャラでさえ、寄らば斬るという殺気を放っている。それなのにこの俺ときたら……)
歯軋りをするMを、Rが優しく慰める。
「大丈夫。Mさんは今は、私専属のアドバイザーだからしょうがないよ! でも港町に着くまでには、Mさんにも頑張ってもらおうと思ってるからね、大丈夫だいじょうぶ!」
「……、え?……」
Mはすごい湖に感じる以上の不安な気持ちを、Rの言葉の中に感じた。
そんな不穏な空気の中で、一行は湖までもうすぐという所までたどり着いていた! 次回、「アンノ、初めての戦闘!!」、お楽しみにい!!




