第十六話 旅立ちと、初めてのビバーク
一気に登場人物が増えてしまったため、あわてて設定を整理。
あと、「アンノ・パーティー」四頭身キャラの名前や設定などのご提案も募集中させていただきます! 我こそはという勇者様はぜひ感想欄でご応募くださいませ。いえーい!
太陽が真南に昇った。どうやらメンバーの準備も整ったようだ。王と王妃が、護衛の兵士達に囲まれ、お城と町を隔てる跳ね橋の手前までやってきて、手を振った。
「お父様!! お母様!!」 ミコン姫が目をうるませながら、手を振りかえした。Rは不思議に思って、アンノに尋ねた。
「ねえ、アンノ君。あのお姫様は、本気でこんな旅に出たいと思ってるのかなあ?」
「え? それはあなたが姫にさせたことではないのですか?」
「違うよ。私はあのお姫様の体型を、四頭身から八頭身に変えただけだから」
「ふむ……、簡単に推測してしまうなら、私のハーレム属性がそうさせた、とでも言えるのかもしれませんが……」
Rはそこで納得して、目を細めて微笑みながら、こくこくと頷いた。だがアンノは、そんなRをちらっと横目で見ながら、後を続けた。
「でも、私はそれだけが理由とは、思いたくないですね。姫にも姫なりのお気持ちがあってのことだと思います。例えばそれは……、姫の好奇心……。まだ見ぬ世界への憧れやスリルを求めるちょっといけない冒険心などが、あるのではないかと推測いたします。そのうち、姫本人に聞いてみたい所ですね」
「そうだね!」
(R……、ミコン姫もこの世界に生きる人間。その思考を読むことくらい、女神であるお前なら簡単だと思うが……)
(うん、でも心を読むなんて、ちょっと悪趣味でやりたくないの。心を読めること自体、アンノ君には知られたくないの)
だったらなんで俺の心はずっと読みまくってするどい突っ込みをズバズバと入れるのか!! とMは言いたかったが、そんな考えを慌てて振り払った。女神RによるMの心を読む能力は、恐るべしであった。
(大丈夫だよMさん、私はMさんの考えがわかっても、軽蔑したりしないからね?)
(あ、ああ……)
そんなこんながあった後、MとR、主人公であるアンノ君とヒロインであるミコン姫、姫の護衛の赤毛の女兵士、プラス、武芸家、格闘家、魔術師、僧侶、冒険者、芸術家、発明家、ライター、遊び人の、総勢14人のおもしろパーティーによる、旅が始まった。多くの町人たちに見送られ、一行は西へと向かった。
Mは空中をふわふわと舞うRの視点から、周囲を観察していた。何もない平原だが、所々に咲く白い花、黄色い花、ピンクの花などが心をくすぐる。そんな中を、2人の八頭身キャラと、10人の四頭身キャラが練り歩く。彼らを見てMは、あることに気づいた。
(人間三人寄れば派閥が生まれるというが、この世界でも、同じだな)
(え?)
(いや……、気が合う者同士なのか利害関係が一致する者同士なのか、この短時間ですでに、このパーティー内での派閥が出来ているのかな、と思ってね)
(うん?)
Rは12人のキャラたちを観察した。確かに、なんとなくではあるが、派閥みたいなものが生まれつつあるような、ないような。
(1)アンノとミコン姫、護衛の赤毛女兵士
(2)魔術師(幼女様)と発明家(めんどくさい人)とライター
(3)芸術家と遊び人と僧侶
(4)武芸家、格闘家、冒険者
(どうしよう、幼女様が、めんどくさい人たちにすり寄られてるよ!)
(まあ、大丈夫だろう。モブキャラの中で、特にマジメな三人というだけだな、それより、気弱な僧侶が少し孤立しつつあるのが心配だな。それに武芸家と格闘家と冒険者は、他の者たちより距離をせばめてはいるものの、まだ一言もしゃべってないぞ……)
(あ、そう言えばそうだね。挨拶くらいすればいいのに)
(そうだな……。でもそういう気配りが出来ないからこそ、強くなれるのかも知れないな)
(うーん……。強くても挨拶が出来ないなんて……。人として終わってるね)
お、おい、二年間もクラスメートと一度も挨拶したことなかったお前がいうか! と突っ込みを入れそうになったが、Mはふるえながらその考えを脳裏から追いやった。
(Mさん?)
(は、はい!)
(ちょっと傷ついたけど、ほんとのことだから許すね?)
(わ、わかった。すまなかった……)
軽い雑談などをしながら歩き続けていた「アンノ・パーティー」だったが、日も暮れ始め、疲労もいい感じに溜まってきたので、このあたりでビバーク(緊急野営)をすることにした。いいキャンプ設置の場所を探していた一行の中で、赤毛の女兵士がミコン姫に向かって言った。
「姫様! ちょっと下り坂になって見づらいですけど、こちらに湖らしきものが」
「湖!?」 興味津々といった声で、ミコン姫が叫んだ。
勇者アンノは右手の平を目の上にかざし、女兵士が指差した方を見つめた。
「確かに湖だね。灌木や、所々に高木もあるから、身を隠すのには悪くなさそうだね。行ってみようか」
アンノは、ちらっとRの方を見た。Rはちょっと困ったような笑顔をして右手を左右にふり、アンノだけに聞こえる声で言った。
「アンノ君。私の判断を確認する必要はないんだよ。私よりアンノ君の方が、いい判断してるし、私はアンノ君の冒険を見守りたいから、だまっていることにするよ」
アンノは微笑み、深く頷いた。
「じゃあ、今日はあの湖のほとりでビバークしよう」
アンノのその言葉に、メンバーの一部は盛り上がった。
「いえええい!! 初めてのビバークだZEーーーwww」
「疲れたーー、早く座り込みてぇえええ!!」
「晩ごはん! 晩ごはん!」
遊び人が腕組みしながら芸術家に話しかけた。
「やっぱり俺達遊び人には夜がよく似合うぜ。ちなみに俺の自前のセーフボックスには、大量の酒が入ってるぜ! さっきこっそり仕入れておいたwww」
「アハハw 僕もお酒は好きですけどあまり強くない方で……。でも今日はお付き合いします。記念すべき旅の第一日目ですから。でもお酒をいただく前に、一曲演奏させていただこうと思っています。今日のみなさんとの出会いを、曲にしたもので……」 芸術家はテレ笑いを浮かべて頭をかいた。
「お前、作曲も出来るのか。いやはや、とんだ遊び人がいたもんだなwww 曲も楽しみだが、その後二人で飲む酒も楽しみだ!」
「はい」にっこり。
一行の後を、ふわふわと追行しながらRは胸のポッケから地図を取り出した。さっき冒険者のブース(?)でかすめとっておいたものだ。
(この湖の名前は……、「すごい湖」……。え?www)ぷっとふきだすR。
(すごい……、湖。何がすごいんだろうな?) Mが不安げに言った。
魔法幼女様が、「トーチライト」の魔法を使い、彼らの周囲は明るく照らされた。暗くなり始めた草原の坂道を、一向は湖に向かって下っていった。しっとりしたピアノの音が流れ始めた。今日のエンディング曲は、しっとりゆったりとした、ムードジャズであった。




