第十五話 8人の新しい仲間と幼女様
旅の支度は続いた。アンノは、武芸家、格闘家、魔術師、僧侶、冒険者、芸術家、発明家、ライター、遊び人、が集合させられた一角に近づいた。一同がアンノを見た。もともと表情がわかりづらい、おもちゃのような四頭身族の顔であったが、今は全くの無表情だ。まず、ライターが言った。
「あなたが勇者様ですね。ここに集められた理由を、今みんなで話し合っていたのですが、もしかして我々を、魔王討伐の旅にスカウトしようとしておられますか?」
「ええ。もしあなたがたさえよろしければ、そうしたいと思っております」アンノが答えた。
「でも、俺達に何ができるんだろうね? ただ酒を飲んで、踊っていればいいならついていくけど」 遊び人が言った。
「それで他の方の士気が下がらないのなら、そういう方がいらっしゃってもいいとは思います。士気に影響するなら、どこかの町か村で、別行動とさせていただくかもしれません」アンノが答えた。
「ふむ……」遊び人が鼻を鳴らした。それは賛同とも批判とも、どちらともとれる印象を一同に与えた。遊び人は、ポケットからハンドスピナーを取り出し片手で器用に回した。
「最終目的は、魔王の討伐という解釈は正しいの? それに参加したいなら参加する、したくないなら参加しない。そういうことでいいのかしら?」魔術師が言った。四頭身キャラだが、他のキャラの半分のサイズもない小ささだ。
(ふおお、幼女様!)Rが叫んだ。
(おい!)Mが苦笑した。
「今の所、港町で発生した不穏な気配が、世界の人達に精神的ダメージを与えつつある、という情報しかないから、まずはその原因の調査が目的だね。現時点での最終目的は、港町の調査。ただしそれは、参加者の命に係わる、怖ろしい結果となる恐れがある。それをふまえて、参加するかどうかを決めてもらえばいいと思う」
「なるほど、港町での調査が、即ラスボスとのバトルにつながる可能性もあるわけね。ちょっと悩む所ね」
「あの……、僧侶は私以外にも、姫様がおりますし、私は不要ではないかと……」若い男性らしき僧侶が言った。
アンノが、ちらっとミコン姫を見た。ミコンはそれに気づいて、僧侶に語りかけた。
「確かに私も僧侶ですから、不要と言えば不要とも言えますけど、私達僧侶は、他の人の大切な回復役。万が一の場合の補佐役も、いてもいいと思いますよ。それに、強力な全体攻撃を持つ敵との戦闘の時には、同じく強力な全体回復魔法によるサポートが、不可欠ですし」
「そう……、ですね。なるほど……」僧侶は納得したようで、参加するかどうかをまじめに検討し始めた様子だ。
(全体攻撃とか全体回復とか、ほんとRPGみたいな世界観だな)Mが言った。
(そうだね……。『異世界憲法』の神が、どんどん設定を変えちゃってるのかも……。私は楽でいいんだけどね)Rは少し考えながらそう言った。
(異世界に詳しい異世界神か……、まあ、クトゥルフ神ほどにはやっかいではなさそうだな。あ、ところでその異世界神は、今どこにいるのかわかるのか?)
(待ってね、スキャンしてみるよ)
Rは一瞬時を止め、ポニーテール惑星を北極から南極まで「スキャン」した。赤い輝線が惑星表面を、なめらかに移動していった。Rは時を再び動かした。
(この大陸のずっと東の方の、砂漠の町にいるみたい。ここからわかるのはその程度かなあ)
(ふむ……、ということは、魔王の正体を突き止めて、解決した後、船か気球を手に入れてそこに移動かな)
(そうだね。RPG的に考えると、きっとそうなるね)
「あの……、勇者様?」 ちょっと線の細い感じの芸術家が恐る恐る、手をあげて言った。
「はい」
「僕はそういう……、魔王とかだとかより、絵や音楽や、詩やムービー、お芝居などを作って生きていたいんだよね。そういう時間も作ってくれるなら、参加してもいいかな、と思うんだけど……。いろんな体験が、いい芸術を生むための貴重な財産でもあるからね……。どうだろう、ちょっとワガママかな?」
遊び人が驚き、笑いながら芸術家に言った。
「俺も遊び人として、結構遊びには自信がある方だが、芸術家っていうものの遊びっぷりも見事なものだな。芸術家こそが、真の遊び人と言えるのかもな、あはははwww」
「そうですね、僕とあなたたちの違いは、美しさに酔うか、お酒に酔うかの違いでしかないのかもしれないですね。アハハ……(困」
アンノは穏やかな表情で答えた。
「来るも自由、来ないのも自由です。ただし、さきほど遊び人の方にお伝えしたように、全体の士気に影響するようなことがあれば、それ以降は別行動とさせていただく場合があるかもしれません。それでよろしければ」
「わかった。じゃあ僕は参加させてもらう。よろしく勇者様」
芸術家はアンノと握手し、アンノの後ろに立つ赤毛の兵士の横に立った。
(あ、ハーレム率が低下! ハーレム率が低下!)
(まあ、いざとなったらボクっこ属性の女性という設定にしてしまえば……)
(Mさん、冗談言わないで!)
(はは……) いや、この世界すべてが冗談みたいなものだろうと、Mは考えそうになってあわててその考えを振り払った。
次に発明家が発言権を求めた。彼は言った。
「僕ら発明家はね、僕たちの発明したもので人類に貢献するために、生まれて来たんだ。そんな僕の時間を奪い、この世界の片すみで起こった事件の調査をさせるなんて、人類への損害だと僕は思うんだが、どう思うかね?」
(あ、Mさんこの人、めんどうくさい人だよ!)
(ああ……。だがなんとなく、俺に似てなくもない思考だ。アンノがなんと答えるか、見ものだな)
そんなMの思考を知ってか知らずか、アンノはにこりと小さく微笑み、言った。
「あなたが何のために生まれてきたか……、それはこの宇宙をお造りになられた、女神さまが一番ご存じのはずだと思いますが……。その女神さまが、魔王討伐を望まれているのですよ。だったら、その女神さまの願いをかなえること以上の、喜びが民としてありましょうか?」
「まあ、仮にそうだとしたら、僕の力を魔王討伐に役立てていただくことも、吝かではないのだが、でもその女神の望みという話自体が、まず疑わしいからな。どうしたものか……」
アンノはRの顔をちら、と見た。Rは微笑み、うなづいた。
「女神さまがおっしゃられています。ありがたいことに、我々にだけ姿を見せてくださり、声を聞かせてくださるそうです。そうすれば、信じていただけますよね?」
(え、この人達だけに? アンノ君も面倒臭いことを言うね。でもしょうがないね)
Rは右手を上げた。カチリ、という音がして、Rの全身を銀粉のような光が包んだ。
「女神さまが姿を、だと? あ!! みえ!!」
発明家は、芸術家の横にふわふわと浮いているRを発見して叫んだ。高校の制服の上に、半透明の白いコートを着たRの姿が、太陽光に照らされ神々しい。Rはかわいくニコリと笑った。
コイーーン、コイーーン。そんなRの笑顔を見て信仰度が上昇し、Rはいくらかのエネルギーを得た。
「そう、私が女神です。私はあなたたちに強制はしません。魔王を倒してくださいと、お願いすることもしません。私に言えることは、これだけです。あなたが楽しいと思えることを、やりなさい。発明家さん、女神からの答えは、これでいいですか?」
「楽しいと思えることを、やりなさい……。楽しいとは……」発明家は、しばらく目を泳がせていたが、やがてその目から涙をこぼし、両ひざをついて手を合わせ言った。「女神よ……。私が間違っていました……。私もぜひ、このパーティーに参加させてください。私が魔王討伐を、楽しいと思える日が来ますように!」
コイーーン、コイーーン、コイイイイン! さらにRへの信仰度が増えたようだ。
(Mさん、やっぱりこの人めんどうくさい人だったよ……)
(はは……)Mは再び苦笑した。
Rは一同を見回して言った。
「わかってくださって何よりです。みなさんにも、同じことをお伝えしておきます。あなたが楽しいと思えることをやりなさい。私がこの宇宙を、そしてあなたがたを創った理由は、それだからです。この世界を一緒に、楽しみましょう。では勇者アンノよ、あとは頼みますよ。また何かあったら呼んでくださいね」
アンノは目を閉じて頭を下げた。Rも目を閉じ、コートをひらめかせながらくるっと回転し、一同に背を向けて右手を上げた。Rの姿が次第に透明になり、消えた。その瞬間、ものすごい数のコインがRの周囲に降り注いだ。ゴゴゴ、という地鳴りがすごい。
(Mさんすごいよ!! エネルギーがガンガン増えてるよ!! うれしいよ!!)Rが目をうるませた。
結局集められた全員が、勇者アンノとともに冒険をすることに決めた。今は4頭身のモブキャラ扱いだが、話が進めば美しい8頭身キャラになり、女神さまに名前で呼んでもらえる日も来るだろう。全員が希望に満ちたりた目をしていた。だがRは、そんな中でも特に背の低い女魔術師に着目し、よだれを垂らしていた。
(幼女まほうつかい……、にゅふり……w)
(おい……w)




