第十話 ヒロイン第一号を作ろう!
ハーレム生活への第一歩。
エンディングが終わると、世界はあっという間に夜になった。さっきまでベッドの端に座っていた主人公「アンノ」は、すでに布団をかぶって寝ている。ついさっきまでは凛々しい勇者の表情であったが、寝顔はまるで子供のようだ。
「夕食は食べたのかな?」
Rはベッドのそばの床にすっと降り立ち、アンノの顔の近くでくんくんと匂いを嗅いだ。
「うん、パンと牛乳っぽい匂いがする。ちゃんと食べたんだね、いい子いい子」
勇者の額をそっとなでたRは、ふわっとコートをひるがえして振り返った。ここまで書き忘れていたがRは、ダークブラウンの高校の制服の上に、白く半透明な、天女の羽衣のようなコートを着ていた。そのコートが、キラ、と光った。
(さっき見たキャラ、盗み見をしていた王女の所に行くんだな)
(うん。アンノ君の恋人第一号だよ)
ふわ、と浮かんで闇の中をすべるように飛ぶ。扉は開けるまでもなくすり抜けた。周囲に意識を拡張させ、四頭身の王女の居場所をスキャンする。見つけた……。
(R……、そういう能力の使用には、エネルギーの消費はしないのか?)
Mが心配そうにRに尋ねた。Rは右手を上げて、エネルギーの消費量を確認した。
(大丈夫みたい。スキャンしてもしなくても、エネルギーの減り方は変わらないよ)
(そうか……)
王女は三階の中央の部屋だ。周囲には多くの兵士達が寝ずの番をしていたがRの透明化の能力の前には無力だ。Rは王女の部屋に忍び込んだ。窓から光をそそぐ月が美しい。ベッドのそばに立ち、おもちゃのような四頭身のお姫様を眺めるR。
(私があなたを、美しくしてあげる。アンノ君の恋人にふさわしいように)
Rは右手をあげて、親指、人差し指、中指を立てて天を指さした。Rが編み出した「鮎の奔流」の能力は、Rがそれを使うごとに進化していた。四頭身であった姫の姿が変わり始める。Rは右手をさらに高く上げ、姫にそそぐパワーを強めた。
(これは……)Mが驚嘆の声を上げた。Mはこれほどまでに美しい女性を見たことがなかった。ふざけながらこの世界をいじり倒しているように見えたRが、本気でこの世界を輝けるものにしようとしているのだという、本気度がこの女性の容姿には垣間見れた。Mは自分の浅はかさを恥じるとともに、Rという美少女(?)への理解を、少し深められた気がした。思いもかけない、Rという少女の魅力の再認識だった。その時……。
コイーーーン!!
(あ!! Mさん、コインをありがとう!!)
Rが拾い上げたコインには、しっかりとMの名が刻まれていた。MがRの信者となりつつあった。その事実にMは震え上がった。
(俺がRを信仰しはじめている、だと? 馬鹿な!!)
(いいのいいの。人間、正直が一番だよ?)
二人があれこれやっているうちに、姫の変化がおさまり容姿は安定していた。透き通るような肌に赤い唇が美しい。怖い夢でも見ているのか、それともエッチな夢でも見ているのか、かすかに眉間によせられた皺にそそられ、Rは思わず姫に襲いかかりそうになった。
(おいwwwww)Mが突っ込みを入れる。
(だ、大丈夫だよ、冗談だよ冗談、ジョークジョークw)Rがはっと我に返り、赤面しながら言う。
思っていた以上にかわいいヒロインを作ってしまったRの心は揺れ動いていた。この娘、アンノ君にはもったいないよ。私のペットにしちゃおうかな。MはそんなRの思考の中に、かつてのMのライバルであった、女神アマテラスの面影を見ていた。
(まさか、これも永劫回帰……、なのか?)
Rは姫のヒロイン設定をONにしながら、ときめく心で考えていた。
(この娘の名前、なんにしようかな。わくわくてかてか!)




