プロローグ 地球を宇宙ごと破壊する
この作品は拙作「MとRの物語」の続編です。よくわからない描写がある場合は、前作を先に読んでおくと、解決するかもしれません。しないかもしれません。
かつて女子高生だった、可憐な美少女(?)Rと、その身体に同居している天才作家Mの魂は、今、地球のはるか上空の宇宙空間を漂っていた。太古より日本を支配してきた女神を打ち滅ぼし、Rは新たな女神となった。それに手を貸した、Rの身体に寄生する魂、Mの気持ちは晴れなかった。なぜならMにとって、消滅した女神アマテラスは、古くからともに「ゲーム」を楽しむ、良きライバルであったからだ。
「Mさん? 私、女神にならない方がよかった?」
「いや……、そうではない。そうではないんだ……」
地球を少し離れた宇宙から、Rの目を通して地球を眺めるM。異次元よりこの相に転位した太古の竜と、眠るRの姿がその像に重なった。竜の放つ悪意のトゲにより、日本に住む人々だけでなく、世界中の人間の精神が、狂い始めていた。人間の文明は、滅びようとしていた。
「R……」
「うん」
「俺はね……、はるか昔から、日本の文化を守ってきた。文化とは、簡単に出来るものではない。長い長い時間をかけて、育っていくものだ。それがこんなにもあっさりと……。俺のこれまでの献身は、なんのためだったのだ」
「Mさん。あの竜は、宇宙そのものなの。運命なの。宇宙が、人間の存在を否定したのよ。生きる価値がないと、判断したのよ」
「そう……、なのか……」
「Mさんは、平成の日本が、いい社会たと思っていた?」
「いや……」
「でしょう? だったら、作り直してしまえばいいの。日本が、この世界が気にいらないなら滅ぼして、異世界を作ればいいだけ。こんな風に」
Rは太平洋に人差し指を向けた。そこに突如、黒い穴が開き、赤いマグマと水が反応し水蒸気があがった。地球上に、かつてないほどの暴風が吹き荒れ、ありとあらゆるものが、宙に舞いあがった。Rの身体が熱くなった。地球上の何かを破壊することが、Rのエネルギーに変換されているようだ。
(ああ!! R……! なんてことを……)
さらにRは破壊を続けた。そのたびにRの身体の温度が、どんどん上昇した。やがてRの身体が、太陽のように強く発光し始めた頃、連綿と続いてきた宇宙の記憶と意識は途切れた。宇宙は死んだ。Mは絶望に目を閉じた。
(Mさん、大丈夫だよ。宇宙は消えてしまったけど、その全部の情報は私がちゃんと記憶してるからね。これから新しい宇宙を作って遊ぶけど、それに飽きたら、全部元通りにできるから。だから大丈夫だいじょうぶ)
Mは頭を抱えた後、放心状態となり、Rの心の中でごろりと横になって動かなくなった。
こうして、MとRの新しいチャレンジが始まったのだ。