鉄とタンパク質と遺跡と
サイバーパンク風日記
全てフィクションです
朝 -6:30-
弱い電気的な震えで目を覚ます。
決して不快ではない。気怠い。
右額からジャックを引き抜きブラインドを上げる。
無限に広がるビル街とダクトパイプ。
薄ら紫色の霞の向こうにオレンジ色の太陽。
全て自然界にはない色だ。
枕元に転がした端末機のダイオードが点滅している。
彼女からのメッセージ。毎朝恒例。
精神状態が不安定な証。
蛍光色に光る画面に短い文章が浮かぶ。早朝出勤への嘆きと日々の愚痴。
彼女の朝は異様に早い。
適当な共感の返信を入力しながら汚い保管庫から冷凍ステーキを1枚取り出す。赤いトナカイの真空パッケージ。真四角の合成肉だ。
俺と同じ合成生体組織。
フライパンに乗せ弱火で焼くと美味い。
ナイフで刻み昨晩の残りの缶入りカーボンパテと一緒に口に放り込む。機械を磨くスポンジに脂を浸透させて固めたらこんな感じの歯ごたえになるのだろう。
塩と脂と糖の味。
皿を洗浄機に入れ水で重いビタミン錠剤を飲み下す。
狭いプラスチックの部屋にオレンジの光。
暖かいシャワー。
緩やかに目が醒める。
今日は発掘調査の日。
忙しい時に何やってんだか