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冷淡教師は自嘲勇者  作者: 三木新一
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冷淡自嘲人間記

冷淡とは・・・・・・物事に関心、興味を示さない孤立人間の事を指します。

今が何年で、何月何日なのかすら分らない。

その為、曜日ごとの時間割が存在しない。

授業の項目は、そのクラスの担任教師により決められる。

敷地面積二万五千五百十六平方メートルある中心部に、コンクリートで建てられた学校、レータノグラ校。ここが、秀村の勤務する学校だ。

秀村の担当クラスは、全八級あるクラスの下から二番目。七級クラスだ。

七級クラスのレベルは、人間の小学校高学年レベルの知識が必要とされるクラスだ。

レータノグラ校は、東と西の二つの棟に分かれており、日の当たるクラスは、一級、二級、三級クラス。そして、職員室のみで、それ以下のクラスは、日の当たらない暗い影に覆われた西棟にある。

上半身を、白色ワイシャツで身に纏い、首に巻き付けているネクタイを引き、黒色の服を羽織ると、七級クラスのある西棟へ向かった

。東棟の廊下は、ほのぼのとした暖かな朝の匂いが、窓を介して自身の体を包む。が、西棟に入るやいなや、環境が一変する。冷たい風が肌を刺し、冷ややかな空気が廊下を充満する。自律神経系が

壊れてもおかしくない悪環境だ。無言で、両の手をポケットに突っ込みながら歩みを続けた後、七級クラス前に到達した。右ポケットから手を抜き取り、二メートルの高さはあるであろう扉を横へ広げた。

扉の向こう側は、廊下の比にならないほどの冷たい空間が完成していた。秀村が右足を教室へ踏み込むと同時に、着席している生徒達が言葉を発した。

「おはようございます」

全生徒四十名在籍するAクラスの生徒は、担任である秀村が教室へ入室すると同時に椅子から腰を上げ、九十度の角度を取ると、静かな声で挨拶をした。

秀村は教壇を見つめ、無言で歩いて向かった。

教壇へ到達したことを、秀村の足音を頼りに、音を拾い、クラスリーダーである野村キュウレンは指示を出す。

「着席!」

その合図を受け、生徒は静かに椅子を後ろへ退き、腰を下ろす。その動作による音は発生しない。

生徒全員の眼差しが、秀村に置かれたのを確認した後、秀村はホームルームを開始した。

「今日の時間割を発表する」

秀村の発言と同時に、生徒は事前に開いていたノートに手を付け、横に置かれていた鉛筆に手を添えた。

「国語、算数、歴史、歴史、実技、実技、自習・・・・・・以上だ」

僅か三秒で告げられた報告を一字一句漏らさずに、生徒はノートへ書き留める。

「続いて、赤の報告だ」

赤の報告とは、生存している旧人間達により結成された反国勢力の通称だ

「赤は現在、西の要所テルバデスを襲撃する作戦を企てているという情報が入った。テルバデスに属する家系の者は、戦闘人員として近い内に召集される。拒否権はない。手紙が通達されたと同時に、即時バルガデス要塞へ向かえ」

世界は、戦乱の世に包まれていた。赤の国が、新世界へ幾度も襲撃し、各地で戦争が起こっていたのだ。その為、僅か十歳の子供も、戦場へ立たなければならなかった。

「続いて、ケムの容態だが・・・・・・」

ケムとは、このクラス在籍する生徒の名だ。だが、一週間前より勃発した東の要所クテリアスでの戦いにより、意識不明の重体となっていたことが、昨日、報告があったのだ。

「・・・・・・死んだ」

秀村が間を置いて放った言葉は、戦死したことを告げる言葉であった。だが、その言葉に驚く者など、一人もおらず、生徒はその報告を、一心不乱にノートにまとめていた。

「ホームルームは以上、五百秒後に国語の授業を開始する。以上だ。」

そう告げ、秀村は教室を跡にした。

秀村が向かったのは、屋上に設置されているバルコニーだ。

バルコニーへは、指を鳴らすだけで移動できる。特定の場所へ、瞬間移動が出来る魔法を発動したのだ。


「レッテンド」



「よう、冷淡教師」

バルコニーへの移動が完了すると同時に、声が聞こえる。

そこで必ず出会うのが、学園序列五位の優等教師キラベレだ。

キラレベは、ライオンの進化した家系、「ラーン」であるが、ライオンの面影はまるでない。

得意魔法は、物理攻撃魔法だ。

キラレベは、秀村が教室を持ったときの第一期生であったが、類い稀な魔法センスにより、僅か一ヶ月で上のクラスへ飛び級した。

一ヶ月の間で、キラレベと共に過ごした時間は教室と、授業の時間のみ。特別な関係を持っていた訳では無かった。

が、その日は唐突に訪れた。

キラレベが、全八段階あるレータノグラ校を僅か二年で卒業してから四年の月日が流れた後、キラレベが教師となって戻ってきたのだ。

その入試試験として、秀村はキラレベの試験官として実技の相手をした。

その戦いに勝利したのは、秀村だった。それも、僅か五秒で決着が着いたのだ。

歴代五大教師の地位に就いている者は皆、自身の持つ魔法を公に後悔していない。

だが、五大教師序列二位に位置する秀村は別だった。

秀村は、五大教師の地位に就く以前から、自身の能力を公の場に公表していた。

能力、「レッテンド」それが、秀村の能力の名称だった。

レッテンドは、瞬間移動の魔法であり、自身が記憶している場へ、瞬時に移動することが出来るというもの

キラレベとの決闘開始直後、キラレベが全方位を警戒する中、秀村は下の階にあるAクラスへ移動し、キラレベが立つ足下をへ向かって、天井を突き破って攻撃したのだ。

この僅か五秒の戦いにより、Aクラスと屋上のコンクリートが壊れてしまった為、その後行われた修理後に建てられたのが、バルコ二ーだった。

ここは、キラレベにとって屈辱と、秀村への尊敬の感情を抱いた場所。二人は、最初の授業が開始される三十秒前まで、この場に居続けた後、それぞれが担当するクラスへ移動した。

教室へレッテンドを使用して戻ると、自身の机に掛けてある資料を、黒板に磁石を使用して止め、

授業の準備を整えた。

整えると同時に、秀村のズボンの右ポケットに入っている時刻通達機械が音を奏でる。

「起立!」

「礼!」

秀村が右ポケットより取り出した時刻通達機械を教卓へ置くと同時に、

「着席!」

の指示が下される。

その指示に、生徒四十名は椅子に腰を下ろす。

その視線が秀村に集ったのを確認した後、

「授業を始める」

といい、黒板に文字を書き連ねていった。

生徒は、いつも同じ服を身に纏い、自分たちに感心をもたない彼の事をこう呼ぶ、


                 黒衣の冷淡教師・・・・・・と

ネタバレ情報・その一


         秀村のもう一つの顔。それは、参謀部隊中将、橋田秀村

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