7話 増える思い出
家に戻り奈穂と早速、カルボナーラを作ることになった。
家に二人きりという状況に緊張感しつつ料理を始める。
奈穂が手伝ってくれると言ったためパスタを茹でることをお願いする。
その間、僕はベーコンなどの材料を刻んでいく。
小さなキッチンに包丁のリズミカルな音が響く。
「料理に関することって覚えてる?」
手を休めず質問をすると奈穂は頷き、控えめに多少自信があると教えてくれた。
結構うまいのだろうと思ったがあえて意地悪をする。
「確かに、パスタ茹でられるからそうかもね」
そう言うと拗ねた声で言い返す。
「他にも出来ますよ、おやつだって作れます」
奈穂のその子どもっぽい行動に距離が近づけたかなと思う。
「じゃあ、タマネギとか炒めてくれる?」
「それ、あんまり変わってないですよね」
奈穂は楽しそうにつっこみを入れ、コンロの火をかける。
当然、僕の家のアパートにはコンロは1つしかないため、奈穂との距離が縮まり、肩があたりそうになる。
その度に僕は気になってパスタどころじゃなくなる。
その気持ちになっているとは思わない奈穂は順調に料理を仕上げていく。
「あとは半熟卵を乗せて……できた!」
完成し満足そうな表情で奈穂がにっこりと喜ぶ。
その自然な表情に僕はにやけそうになる。
しかし、その表情を見られたことが恥ずかしかったのか奈穂すぐに表情を戻し、誤魔化そうと口を開いた。
「えーと、久美子さんが帰宅してから食べますか」
「先に食べよっか」
お母さんのことを久美子さんと呼んだため、違和感を感じながら僕は答えた。
いつ、どうやって知ったか気になった。
僕がバイトに出かけた後にわざわざ尋ねたのだろうか。
そんなことを考えながらテーブルにお皿を運び、席に着く。
二人で向かい合うことになり僕は忘れていた緊張をまた感じる。
「じゃあ、いただきます」
そう言い僕は半熟卵と絡めて啜る。
「おいしー」
自然と感想が漏れた。それを見た向かいの奈穂が微笑み頂く。
「ほんと、美味しいですね」
そう言った奈穂はほんとうに美味しそうに音を立てず上品に頂く。僕はそれを真似しようとしたが緊張していたのか、慣れないことだからか咳き込んでしまった。
「私の真似しようとしなくてもいいですよ」
奈穂は優しく微笑んでくれた。しかしそのことでますます僕は恥ずかしくなり、顔が真っ赤なのが自分でも分かった。