6話 街
「少し休もうか?」
ある程度歩いたため休むことにする。
丁度、ショッピングセンターの屋上に庭園があるためそこに移ることにする。
庭園につながるガラスドアは重く、開けるのに少し力が必要だった。
「気持ちいい」
その分ドアを開けた瞬間、夏の涼しい風が全身を包みこんだ。
しばらくその風に当たりながら屋上から街を眺める。
今いる街はどこまでもビルやマンションが広がっていた。
そしてその間を縫うように線路が伸びていた。奈穂はその景色をぼんやりと見つめていた。
この広い街に見覚えがあるのだろうか。どこか懐かしんでいるようだった。
その景色を何分見ていたのだろうか、分からない。ただ不思議な時が過ぎていった。
僕はそれを邪魔しないように少し後ろのベンチに座っていた。
「すみません、長い時間見てしまって」
「大丈夫だよ、そろそろ夕飯買って帰ろうか」
「そうですね、わかりました」
もう一度、ちらりと街の方を見て優香はガラスドアを通る。そして僕らは食料品売り場に向かう。
「今日の夕飯何か食べたいものある?」
カートを押しながら尋ねる。
「パスタでもいいですか」
遠慮がちだがはっきりと食べたい物を答える奈穂。
何でもいいと言われると予想していたため意外に感じつつ店内を移動する。
「ソースは何がいい?」
「カルボナーラが好きです」
「カルボナーラいいよね、半熟卵と絡めて食べるのが好きなんだよね」
「私もです」
奈穂と今日一日、過ごして懐かしさに近い親近感を僕は感じていた。
やはりどこかで出会ったのではないのかと思うがやはり思い出せないでいた。