24話 父娘
「久美子と直子と……それに奈穂もか」
病室で本を読んでいたお父さんが起き上がる。
酸素マスクを今回はつけてないので少し良くなっていたと見えた。
「体調はどう?」
そんなお父さんに久美子さんが最初に話しかけた。
「特に変わりないよ、もう大丈夫だよ」
笑顔で答えたお父さんは本当に大丈夫そうだったので私は安心した。
「健一さん、これ、今回の本ね」
お母さんが珍しくお父さんのことを健一さんと呼ぶことに違和感を感じた。
おそらく久美子さんに遠慮していたのかもしれない。
そんなことを気にしてないのか、三人は話を続ける。
「おー、いつもありがとね」
紙袋の本を何冊か取り出して礼を言う。
「そういえば、奈穂、お父さんに言いたいことがあったんじゃないの」
何も言えないでいた私に久美子さんが話を振る。
私はその言葉でお父さんのベッドに近づき、お父さんの目を見る。
「ごめんなさい」
私は小さく謝る。
「大丈夫だよ、悪いのはお父さんなんだから、ほんとゴメンな」
お父さんが涙声と涙目で謝る。
「俺は最低な父親だよな、娘にこんな思いをさせて、ほんと最低だよな」
最低を繰り返すお父さん。
「そんなことないよ」
私はそんなお父さんの言葉を否定する。
「そうだよ、こんな立派な娘を育てたんだから」
久美子さんが私の頭に手を乗せる。
「そうだな」
そう言ったお父さんは複雑な目をしていた。
今、お父さんは何を考えているのか私にはわからなかった。
「じゃあ、そろそろ出よっか」
久美子さんの言葉で私たちは病室から出ることにした。




