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2話 零した涙
翌日、夏休みだというのにバイトのために6時に起きた。
そしてそのままリビングに行くと昨日の彼女がソファに座り、周りを落ち着かない様子で見渡していた。
「おはよう」
僕は何と話しかけるか悩んだ結果、安心させるため優しい声で挨拶した。
しかし、彼女は僕を見るなり瞳から涙をこぼした。
その粒は止まることはなく、タオルケットで顔を覆ってしまった。
僕の顔はどこかのヤクザかヤンキーとは程遠い普通の顔だったためにショックは大きい。
ガタイがいいということもない。むしろ痩せ型で太ったほうがいいくらいだ。
僕がショックを受けていると母さんの足音がした。
「……」
母さんがこの状況を見て固まったのが背中越しでもわかった。
僕は弁明するため後ろを向こうとしたが、遅かった。母さんの怒りの一撃が僕の頭を捕え、鈍い痛みを感じさせた。
「何やったの」
僕すらこの状況を理解していないため説明ができない。
困惑していると女の子が落ち着いたようでブランケットから顔を出した。
「すみません、大丈夫です」
そう言った彼女の目は少し赤くなっており、大丈夫だと思うことはできなかった。