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失った思い出  作者: ういもと
第1章 真輝の物語
18/52

18話 写真

気づいたら朝になっていた。


昨日休んでしまったので今日はバイトに行かなければならない。


バイト週6は入れすぎたな。


そんなことを考えながらリビングに行き、電気をつける。そしてそのまま朝食を3人分作る。


「おはよ」


朝食が出来た頃に母さんは起きてきた。お母さんはチラリと3人分の朝食を見て、何かを思ったようだが何も言わなかった。


無言の朝食。


リビングに茶碗と箸が当たる音だけが響く。


「ねえ、真輝、バイトいつ休み?」


そろそろ食べ終えるところで母さんが口を開く。その言葉が重く感じられ、空気が重くなる。


「明日休みだけど」


僕はその雰囲気に当てられ、恐る恐る言葉を伝える。


「じゃあ、明日開けといてくれる?」


わかった、と母さんに答えてバイトに僕は向かった。


ついにこの時が来てしまったと思った。


母さんが奈穂を連れて来て今日が六日目、そして一週間様子を見る約束をして今日が五日目。


明後日がその約束の日だった。


前日に何を話すのか分からず、僕はバイト中ずっと不安だった。



そのバイトから帰宅すると思わぬ人物が出迎えてくれた。前と変わらず少し恥ずかしそうに照れながらお迎えの挨拶をする。


「おかえりなさい」


「ただいま」


一切変わってない奈穂に出会え、目が潤む。もしかしたら僕のことを忘れるのでないのかと不安で仕方なかった。


「ねえ、奈穂。 写真一緒に撮らない?」


奈穂との思い出を残すため提案する。いままで恥ずかしくて言えなかったがすんなり言うことができた。


もしかしたら明後日、いや、明日にはお別れになるかもしれない。


そんな気持ちが僕を動かした。


「え、ど、どうしてですか」


しかし、すんなり言うことができても奈穂に賛成してもらえるとは限らなかった。


「え、えーと、奈穂との思い出を残そうかと思って」


素直な理由が自然と口から出て来た。

しかし告白するほど馬鹿ではなかった。


「あ、そうですか」


奈穂は複雑な表情をしていて、何を考えているのか分からない。しかし真剣に考えてくれていた。


「分かりました、ちょっと待っててもらえますか」


奈穂はそう言い母さんの部屋に入っていった。何故入っていったのか見当もつかず、困惑する。



待つこと10分。母さんの部屋から出て来た奈穂は膝ぐらいのシンプルなスカートとおとなしめの白のブラウスの服に着替えていた。それは僕が一番最初に買ってあげた服だった。よほど気に入ってくれていたのかと思い、嬉しくなる。


「あの、この服装でならいいです」


奈穂のこの言葉ににやけそうになる。


「じゃあ、撮ろっか」


そう言ったもののどこで撮ろうか悩む。


「ここでいいんじゃないですか」


リビングにやってきて奈穂が勧める。僕は反対する理由もなかったため、リビングの壁に二人肩を並べる。


「じゃあ、撮るね」


奈穂が頭を近づけてきたので僕も近づける。そして緊張で震えそうになる手でスマホのシャッターボタンを押す。


パシャッ


「あ……」


画面には二重に二人が写っていた。


「ご、ごめん、もう一回撮るね」


「私が撮りましょうか」


そのほうが良いと思い、奈穂に任せて笑顔を僕はつくろうとする。しかしスマホに写った僕は全く笑えていなかった。


「あ、そういえば体調は大丈夫ですか?」


撮り終えた奈穂が僕のことを心配してくれていたようだったので嬉しくなる。そのため笑顔で大丈夫だと言うことができた。


奈穂が僕に大丈夫かと尋ねることができたが僕が奈穂に大丈夫かと尋ねることはできなかった。


しかし見た感じ記憶が戻っていないのは分かった。


だったら奈穂に何があったのだろうか。

僕は分からないままだった。

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