14限 映画
母の言葉を聞いて以来、記憶のことではなく恋のことで頭が一杯になる。
そのため翌日、映画の後編を観ていたがあまり頭に入らない。
奈穂は横で少しリラックスした様子で映画を観ていた。
最初に会ってから3日しか経っていない。
しかし不思議と昔からこのような雰囲気だったと勘違いするほど奈穂と仲良くなっていると僕は思う。
ふと運命かなと感じたがそんな考えを浮かんだ自分が無性に恥ずかしくなる。
そんな僕の考え関係なしに映画はクライマックスのシーンに突入した。
「っ!」
奈穂は画面に始終釘付けだった。
それはエンドロールに入っても変わらなかった。僕もエンドロールまでしっかり観たい派だったため奈穂を気にしつつ観る。エンドロールには俳優の方が楽しそうに撮影している風景が最後まで流れていた。
「あー、面白かったー」
エンディングロールまでしっかり観た奈穂は満足げな表情を浮かべ、ソファに身を委ねる。
「ほんと、面白いよね」
「何回観ても飽きないよね、魔法同士のぶつかり合いなんて胸が高鳴りますよね、それに学園に隠された防壁魔法なんて凄すぎて鳥肌が立っちゃいました!」
映画の後のためか奈穂が珍しく饒舌になる。
さらに映画と同じようにポーズを取り魔法を唱えた。
しかしそのポーズをとったことが恥ずかしくなったのか頬を赤らめる。
「い、今の忘れてください」
恥ずかしそうに俯向き、消えそうな声の奈穂に僕は愛おしく感じた。
「そろそろ夕飯の支度を始めた方が良いのではないのですか」
さらにそのことから話題を逸らそうとする態度が可愛らしかった。
「そうだね、今夜は生姜焼きでも作ろうかな」
「いいですね、今夜は私がお肉を焼きますよ」
そんなことを話しながら僕たちはキッチンに向かった。
そして一緒に夕飯を作り食べ、その日が終わった。




