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合格祝いの宴会 ④ 飛鳥ちゃんは奮闘する

合格祝い宴会に、やっとメンバーが揃いましたが、敦神父さんが、かなり疲れてるようで・・・疲れの”大元”をとりのぞくべく、飛鳥ちゃん、頑張ります。

 店の2階の居間には、店長、敦神父さん、悟、俊,

私と淳一以外、揃って待っていた。予定の6時を大幅にすぎていてる。



「ごめ~ん。遅くなりました。淳一がいつものように”面倒事”にでくわしたそうです。お腹がすいたでしょう。それと淳一のおばあさまから、煮物をいただきました。」


”おばあさまってほど、上品な婆じゃないけどな”

なんてつぶやく淳一のスネを、後ろから蹴った(もちろん誰にもみえないように)


「寿司とかから揚げとか、まだ車につんだままなんで、今、とってきます」


 と淳一を連れて行こうとすると、俊と悟が運取りに行ってくれる事になった。車は店の駐車場じゃなく、三条教会にあり、私は悟にキーを渡して、また謝って、そしてお礼を言った。


 居間は大混雑だった。花の精霊が半端なくいる。天井に浮いてるのもいるし、何人かは悟にくっついていったけど。


 なんだか敦神父さんの様子がおかしい。よほど疲れてるのかテーブルにツップシて半分寝てる。どこか具合でも悪いとか?。


「ああいいんですよ。飛鳥ちゃん、兄は、自分の意志でそうなったんです。」


 そんな店長も、顔色が良いとは言えないけど。


「店長さん、何かあったんですか?敦神父さん、尋常じゃなくヘバってますけど」


 見ると、敦神父さんの肩やら頭に、何かのっかってる。目を細めてこらしてみる。見えた。


(なにこれ!!)


 半透明のクラゲのようなものが、頭や肩に山のよう乗ってる。花の精霊には見えない。淳一には見えてないようだが、不審な顔をして神父さんを見てる。



「見えますか。あれは、天に戻れなかった消えかけの魂やそのかけらです。もう意思疎通も出来ません」


 ”飛鳥ちゃん、ちょっと”と店長と台所に。丁度いい機会だったので、淳一が神社で巻き込まれた事情を話した。店長からは、今日”敦神父さんと二人でやった事”を説明してくれた。


 なんでも復活祭前に、天に行き損ねた魂をなんとかしたいと、敦神父と店長が、午後から市内を回って歩いたとか。その時にくっついてきたそうだ。


「私は聖水をかけ、一気に浄化するしかないと兄に言ったのですけどね。強行に反対され、あのザマです。あのクラゲのモドキは、何かしらの勘が働くらしく、優しい兄にまとわりついてます。もちろん、私が一度、祓ったのですが、すぐ舞い戻ってくるんです。花の精霊達もあれらを天に連れて行く事はできませんでした」


 店長には、あのクラゲモドキが一つもついてない。ていうか、悟も入って来た私達の事も、クラゲモドキは見えてないかのようだった。多分、敦神父さんからは優しさオーラのようなものを、出てるのだろう。それも桁違いに。


「店長、で、あれ、どうするつもりです?力は弱いんでしょうけど、あの数を背負っていては、さすがの敦神父さんも体力的に限界なんじゃないですか?」


 神父さんと元神父さんの浄霊の様子は、一度だけ見た事あるけど、手間がかかった記憶がある。今回は、その時以上に敦神父さんが疲弊してるので、やっぱりクラゲモドキの影響なのだろうと思うんだけどな。


「いざとなれば、消す事は出来ますが、兄と断絶状態になるような喧嘩をしそうです。それは怖い。」


 やっぱり兄のいう事が第一なんだ。


 さて、そろそろ本格的に準備しないと。取り皿やコップ、飲み物を持っていってと。


「すみません、店長。飲み物は?」

「ああ、しまった。買ってくるの忘れました」


 おや、店長にしては珍しい。同じ商店街の店で買っておくと言っていたのに忘れるなんて。


「丁度いい。若者2人に頼みましょう。今、ラインで頼みました。さて私は教会に香炉を取りに行きます。当然、私じゃなきゃだめでしょうし。淳一君の”二重人格もどきの禰宜”の話しを聞いて、クラゲモドキを天に還す方法を思いつきました。これで天への通路に上手くに乗せる事ができるといいのですが」


 店長はすぐ教会へ向かった。とりあえず私は台所でお湯を沸かす。寿司だもの、お茶が飲みたいという人もいるはず。


 それにしても店長は本当に飲み物の事、忘れてたんだ。少し動揺してるのかも。湯気でくもった窓を見ながら、クラゲモドキの対処法について、考えたが、当たり前だけど、こんな事初めてだし、いい案は出ない。彼らは花の精霊は無視するし、消してもけないのなら、後は、元の場所に置いてくるとかしか思いつかない。


”元いた所に戻してらっしゃい”って、犬や猫を拾ったわけあないんだろうけど。


*** *** *** *** *** ***


 三条教会からは、店長の方が早く帰って来た。


「悟が酒屋の店主の長話につかまりました。いい人なんですが、話し出すと長いのが玉に瑕でね」


 で、香炉をとりだして、サっと火を入れると、独特の香りと煙が漂って来た。よくある線香のニオイじゃない。


「百合の花の精霊さん。あの窓の右上にから見える空に、細い道があるだろう?あそこまで、精霊達で協力して通り道を作ってほしいんだ。クラゲモドキをのがさないように」


 精霊達は、”意味わからない”と言いながらも、協力してくれた。ちょうどトンネルになるように、精霊達はスクラムくんだ。で、それは空のある一点まで続いてる。あそこに”道”とやらがあるのだろうか?私には見えないけど。


 店長は敦神父さんの後ろにいて、淳一は店長の手伝いで、香炉に香をつぎたす役目をおおせつかってる。私は後。最後尾は精霊がふさいでる。そして私はなぜかウチワを店長から渡された。


 ああなるほど、禰宜さんが扇子の風で、迷った魂を送ったように、私があおぐのね。でも私には彼のような不思議な力はないんだけどね。それにウチワだし・・


「じゃあ、飛鳥ちゃん。風よろしくね。大丈夫。クラゲモドキの姿がちゃんと見えてるんだから、その集中力をキープしておけばいいだけ」


 いざ香炉をつけたら、すごく煙がでてむせた。クラゲモドキは途端にパニックになり、精霊で囲まれてる中を飛びまわってる。


 百合の精霊達が、総がかりで作ったトンネルは(結界というと、かっこいいかも)、百合精霊のおかげか、花の香りが強いのと香炉の煙と香りとで、彼らは、精霊を通り抜けるのさえ忘れてしまってるのだろう。


 ウチワの風は、思ったより効果があったよう。ついでに側によってきたクラゲモドキをパシっと打ち飛ばした。あ、ウチワはすり抜ける事が出来ないのね。わかった。きっと特別な力のあるウチワなんだ。


 メチャクチャに飛び回ってたクラゲモドキ達は、しばらくすると、一直線になり部屋から出て行った。空にある”道”とやらについたのだろう。


 最後までノタノタと飛んでるものには、私が超高速であおいで追い立てたし。


「うう、ゲホッゲホ。俺、決めた。煙草は吸わない。電子煙草にする。」


「酒と煙草は20歳からよ。それより、もう香炉の火種をとりだして。けむいので窓を開けるわ」


「先輩、何か見えたんっすか?俺には、気配くらいしかわからなかったんすけど。時々、ウチワで何かを打ってるような感じだったし。」


 ああ、淳一には見えなかったんだ。最後までわけのわからない事をやらされるわ、煙いわで、きっと頭の中は疑問符だらけね。クラゲモドキの事や、その対処法について話すと、納得したようだったが、少し残念そうだった。


「これ、飛鳥先輩だから出来たんですね。無自覚な所がムカつくけど、しょうがない。」


 何を言ってるんだか。ウチワが特別なのよ。まあ、”珈琲・KUBOTA”と、印刷はしてあるけど。


 そんな中、やっと敦神父さんが、パッチリ目が覚めたようだ。


「うわ、香炉炊いたんですか?亘。少し煙いです。あれ、あの子達はどこへ行ったんですか?」


 店長が次第を説明すると、心底安心したように微笑んだ。


「よかった。消されてなくて。そりゃ、もう何も話せない彼らですけど、天に還れてよかったです。」


 やさしい、誰にでもどんなものにも優しい。


 でも、今回の騒動は敦神父さんに原因があるんだから。

そこんとこ忘れないで欲しい。


 釘をさして言ったが、ニヘラっと笑うだけだ。


 だめだ。きっとこんな騒動が、また起きる可能性大だ。


 


 


 

更新は、水曜か木曜の夜午前1時~2時です。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。次かその次の話しで、この連載は完結となります。二人が店から離れる事もあり、区切りがよかったので。続編を予定してますが、若干のご猶予をくださいまし。

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