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合格祝いで宴会 ② 悟は精霊に翻弄される

合格祝いの準備の間、悟はこれまでの事を考えようとします。そこにオンシジウムの花の精霊が、そばに座りましたが、上手くいくでしょうか。

 母さんも一緒に来たそうにしてたけど、気が付かないふりをしてた。淳一の合格祝いでもあるし、母親付きなんて恥ずかしい。


「お世話になったんだから持って行きなさい。後でちゃんと正式にお礼に行くからね」


 だからそういう処が、うっとうしいというか、ただ自宅があるのに格安で下宿させてくれたり、教会で留守番のバイトをさせてくれたり、本当に世話というか面倒をかけた。


 受験勉強が忙しくなり、バイトが出来なくなった時も、店長は僕をおいてくれた。母さんに持たされたサラダと巻き寿司も、結局は僕と淳一の合格祝いの宴会のためだし。



 リビングでは俊が帰ってて、チキンが置いてあった。”これ母からで少しですけどって”と、タッパをテーブルに置いた。


「悟君、ありがとう。本当はお祝いされる立場なのに、気を使わせてしまって。お母さんは来なかったんだ?」


”飛鳥ちゃんに、持ち帰りの寿司を頼んであるんだ。”と、店長は笑顔。巻き寿司は余分だったかな。


「母までいなくなると、さすがに父が可哀想な気がします。結局、家でも合格祝いなんてしなかったし。」


 不思議なめぐり合わせだと思う。両親と顔を合わせたくない、家にいたくないという気持ちから、バイト三昧の日々。偶然とうりがかったこの店で、バイト募集のチラシを見て、3時間のバイトを始めた。


 いろいろ経験したけど、一番は驚いたのは”花の精霊が存在して、僕は見えてたのに気づかなかった”だ。思い出すと痛くて机の下に隠れたくなる。僕は誰もいない所で会話してる危ない奴と思われてただろう。


 敦神父さんは、花の精霊が視えないのを残念そうにしてるけど、すごく役に立ったという記憶がない。ああ、ポッチの僕の話し相手にはなってくれたか。今もオンシジウムの花の精霊が、しなだれかかってくる。


 若くて可愛い女性の姿だけど、精霊じゃね...


<ねえねえ、なんだか今日は宴会をするんですって?それって踊るのあり?それなら私も参加したい。>


 参加したいもなにも、もうリビングの輪の中に入ってるし。彼女は勝手に楽しそうにしゃべってる。僕の目の前には俊がいるので、話しかけたりはしないけど。(そんな事したら現実主義の俊に笑いを通り越して、病院に連れていかれそうだ)


 その俊は、僕のもってきた巻寿司を見てる。変なのかな?もしかして北海道人だけが食べる具が入ってるとか?普通の太巻きなんだけど。


「思い出したよ。昔、母さんが元気な時、運動会にはよくこれを作ってくれくれた。他にはオカズはなかったけど、おいしかった。二人で食べるのが嬉しかったからだ。」


 懐かしそうに語る彼は、ギャンブル狂になった母親からの自立を優先させた。2年もグズグズしてた僕とは反対だ。


「でも、母親ってウザイんだよ。すぐ干渉してくるし、無視すると、今度は泣きがはいるし。でもまあウチは、話しが通じない父親よりはいいけど。」


 理想の父親像は、三条教会の信徒会長さんかな。時々、適格なアドバイスをくれる。”こうしなさい”じゃなく、僕の話しを整理して問題点と選択肢を示してくれる。俊にそう説明したら、”なるほど、そういう父になればいいのだな”とうなずいている。


 もしかして、近々父親になる予定があるとかかと、聞く。”ないから、相手いないから”とムキになって否定してきた。


<わからないわよ。俊はもてなさそうだけど、真面目だから縁談がくるかもね。最近の女子は”真面目で安定してる人”が理想の結婚相手なんだって。でもちょっと、つまんない>


「バブルから目が覚めた世代と言われてる。地味に生活。ミニマム生活とかはやりのようだしね」


 あっとしまった。俊が変な顔をしてる。オンシジウムの精はみえないから当然だ。


「悟、大丈夫か?小論文の事が頭から離れないとかか?もう試験は終わったのに。」


「ああうん。小論文は苦手で、だいぶ悩んだから、テーマが頭にこびりついてるんだ。ははは」


 はぁ、これでごまかせたかな。オンシジウムに、余計なお喋りはしないでとアイコンタクトを送ったら、”一緒に踊りましょう”の意味にとられた。


 だから手をひっぱらないで。オンシジウム。狭いリビングで踊れる訳ないだろう?君みたいに空中で4回転なんて出来ないだから。


 動いたせいでウッカリ敦神父さんを蹴ってしまい、起こしてしまったようだ。


”お願いですから主の元へいって下さい”なんて言ってまた寝てしまった。


 今の寝言?聖書の言葉? そんな文があるんだ。お願いですからなんて、敦神父さんにピッタリな言葉だけどね。


 



水曜日か木曜日の深夜午前1時~2時に更新します。


今回は1話が短めなので連投しました。2話目です。

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