表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/75

クリスマスブッシュ

一人で店番と花のアレンジをまかされた淳一君。ただ、その日に限って大忙しで・・・

 ”クリスマスを花で祝う”・・

 

 花でリースを作ればいいじゃないかと、飛鳥先輩に言ったけれど、”それとは別にね 壁・戸にはリース、テーブルには、花というスタイルを流行らせたいのよ”だと。


 いつもながら商売熱心だよな、先輩。


 今日、土曜日で朝から水瀬花屋でバイト。午前中は、仕入れた鉢物を展示して手入れしたら、開店と同時に飛ぶように売れていった。


”ここの店は、新種ものも多いし、いい株の鉢が多いのよ”

というお客さんの声。店長の仕入れの腕はすごい。ちょうどその店長の昼休憩の時に、お客さんのピークがきた。くそ忙しかった。


 ひと段落して、飛鳥先輩の12月の方針をもう一度、考えてみる。クリスマスの花といえば、ポインセチアやシクラメンが鉢物だけど定番なんだ。生花となると、クリスマスカラーの赤系統の花とグリーンを加えるだけでいいか?


 店のウィンドウを飾るアレンジ花をクリスマスにちなんだものにって指示されたまま、店長と飛鳥先輩は、俺に丸投げして、クリスマスリース講習会に、講師として出かけていった。


 一人で店まわしながら頭の中で構想をねる。”大きめのアレンジでテーマはクリスマス”。店の花を手入れしてると、脇によけられてる花を見つけた。初めて見る花だった。赤い星型の花が小枝にたくさんついてる。レンギョウを赤い花にしたような雰囲気だ。


 容器の名札をみると、クリスマス・ブッシュ という花だった。花に見えた赤い部分はガクだったけれど。


 花をアレンジするには、まずその花の情報を知ることから。この花(本当はガク)は低木なので、多分、根本を割って水をあげないといけないだろう。


 で本格的に調べようとしてところ、お客さんが来た。検索用に立ち上げたPCはそのままにして、応対に。


 ウチの店のクリスマスリースの予約のお客さんだった。リースは、今日、店長と今年の見本を徹夜で作り上げるつもりだった。その写真ををホームページにアップして予約を受け付けるのが、飛鳥先輩の仕事になる。


 事情を説明して、念のため、去年の商品一覧を渡したが、今年の分ができてから再検討するとの事。


”ありがとうございました。お待ちしてます”と声をかけ、そのリースのデザインも少し考えないといけない。そうだ、それに合わせて、リースの材料も整理しておかないと。今まで使えそうなものを、倉庫におきっぱにしてる。


 調べもの再開。やっぱり根をわって水揚げする花だ。ああなるほど、一本じゃなく枝を分けてを使うんだ。ピンクのラナンキュラスとのアレンジの写真もネットで発見。なるほど、赤いけど小さいガクだから添えものでも使えるんだ。


 しばらく考えた後、クリスマスブッシュだけの盛り花にすることにした。方向が決まればあとは迅速に作業・・・にはとりかかれなかった。


「いらっしゃいませ。」

 中年の女性のお客さん。何か助言がほしそうにしてた。

「知り合いが亡くなりまして、ちょっと事情がありまして・・」


 うむ、歯切れが悪い。どんな事情かは知らないけれど、花きゅ~○っとを使って送りたいのか、聞いてみたが、とんでもないと、激しく顔を横にふってる。自分の家でひっそりと故人の冥福を祈りたいのだとか。なんか”花を送れない事情”って複雑そうだ。


 結局、小さなバスケットにいれた”お供え用のアレンジ花”をお買い上げ。550円+消費税。ありがとうございましたと見送り、急いで作業にとりかかる。


 まずは、おおまかな形をスケッチブックに書き出してみる。


「すみませ~ん、白兎宅急便です。お荷物が届いております」


 はいはいはい。宅急便の兄ちゃんから荷物を受け取る。

え?要冷蔵?本州の花卉農家さんからだ。えっと”芍薬”? 店長が、前もってこの時期になるよう注文してたんだ。花はまだ蕾。すぐ店長に連絡したけど、つながらなかった。


 放置はできないよな。水切りして花用の冷蔵庫に入れる作業にかかった。蕾がいくら硬くても、正月用じゃない。もちろんクリスマス用でもないだろうし、教室で使う花を特注されたのだろうか。


 アレンジ花にとりかかろうと思った途端、電話がなった。はいはい、今でます。急いでたので花用の除菌液の入ったバケツのをひっくりかえしてしまった。床の除菌完了、ただし水浸し。あ~あ。仕事ふやしてどうするんだ俺。


”お待たせしました。水瀬花屋です”


 電話はクリスマス用に去年作った、松ぼっくりミニツリーの作り方を教えて欲しいという事だった。いやあれ、先輩にもできるし簡単なんだけどな。先輩に作り方をホムペにアップしてもらい、ペーパーも置くよう頼もう。いちいち説明するのが面倒だし。


 今年は、飛鳥ちゃんのお母さんが、図書館のイベントか何かで松ぼっくりツリーのミニ講座をするって聞いた。どっちにしても、店に直接の売り上げはないな。なんて考えながら、ぶちまけた水(除菌液入り)をふき取った。栄養剤入りでなくてよかった。あれは、ベタベタするから、大変だったろう。


 その後もなにやかにやで大忙し。花束を買ってくれたお客さんや、正月のアレンジ花の問い合わせ。他の花屋からのHELPの電話(人手が足りないそうだ)などなど、俺は休憩せず、せっせと働いた。


 夕方になって、少しヒマが出来たので、やっとクリスマスブッシュのアレンジにかかった。半分もいかないうちに、店長と先輩が帰って来た。


 俺は留守中の事、特に芍薬の事を伝えた。


「あら淳一、なんだかアレンジが全然進んでないけど、お客さんで大忙しだった?」

 飛鳥先輩、先輩が花束作りがヘタでも、今日は店に一緒にいてほしかったです。


「淳一君、このクリスマスブッシュ、リース作りに使うって言っておいたはずなんだけどなあ。まあ、あとは私がアレンジするから。」


 俺やりたかったのに、店長から”淳一君、疲れてるようだから少し休憩して”って、奥に飛鳥ちゃんに連行させた。


「今日、リースの見本を作るって言ってたじゃない。休めるときに休んでおかないと。」


 あ、そうだった。倉庫のリース用の材料をかたさないと・・


 砂糖を多めに入れたコーヒーを飲み、結局、休んだのは10分もなかった。


 俺は来年の事を思った。来年の4月からは札幌の専門学校へ行く。推薦も決まった。悟もいなくなるし、俊は工場で正職員になったと言っていた。


 店長と飛鳥ちゃんだけで店をやってくつもりなのか?それとも俺が休みの時に手伝いに来ないといけないんじゃないか?


 どっちも絶対無理。っていうか飛鳥ちゃんが来る前は、この店はどうやって営業していたのだろう?たまに幽霊のお客さんも来る忙しさなのに。


 そういえば、俺だって最初は、ばあちゃんに無理に連れてこられたんだ。あの時は”すぐ辞めてやるぜ、ばばぁ”なんて、言ってたけど、不思議だよな、この店。


 去年のあの頃は、先生に服装で目をつけられ、それを得意がって、ラップミュージックの世界に足を入れかけてたんだっけ。あの頃の俺に戻りたいとは思わないけど、あん時、何を考えてたんだろう?いや、単なる勢いだけだったのかも。




 

木曜か金曜の午前1時台に更新。週一更新をめざしますが、無理な時は、次の週の木・金で更新します。すみません。


少し、お休みしてました。忙しくて書く時間がとれませんでした。少し書き溜めをしたかったのですが、なかなか思うようにいかないものです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ