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ネジバナの災難

 学校祭の準備で、あわただしい雰囲気の中、俺は、職員用玄関に飾ってある花に、目がいった。正しくは、そこで項垂れて膝をかかえてる座ってる女の子に。


 ピンクのワンピースは、色あせ、栗色の髪はボサボサだ。同じような年に見えるので、うっかり”学校祭の劇の練習中”のうちの生徒に見えなくもないけど、彼女は、花の精霊。花の形がうっすらと視える。玄関に飾られた花は、白の薔薇にグリーンとしてレザーファンの切れ端。小さな花瓶に活けられていた。


 このシンプルな花のアレンジに無造作に入れられた花が一本あった。この花は俺は見た事がない。この子はその花の精霊だ。精気がない。玄関は夏の日差しで温度は高くなってる。それで花が弱ったのだろう。


<あの、もしかして私の事が見えるのなら、水を下さい。>


 精霊は俺の胸にすがってきた。すこしやつれてるけれど、白い肌にアーモンドの目。彼女が女子高生なら、ラッキ~となるんだけどな。精霊だし・・


 俺はため息をついて、花瓶ごと水場に持って行こうとした。


「やあ、坂崎君、さっそく見つけたね。この花は野草の部類なんだけど、最近、めっきり見かけなくてね。これは僕の母が育てたんだ。」


 変人で有名な、生物のミトコンドリアこと、水戸せんせいだった。チェッ、面倒な先生に会った。厳しくはないけど、何を言い出すのか意味不明なんだ。水戸は。この間も授業中、熟睡してた生徒に、わけのわからない問題を出してた。


「ここで坂崎君に問題です。期末試験の生物のテスト、赤点スレスレだったからね。この花はなんていう花でしょう?」


 花の茎は20cmもない。5mmほどの小さなピンクの花が茎ニビッシリ並んで咲いてる。

そして茎そのものが、右まきに捻じれてる。そして案の定、先生が取り出した花は水切りされてない。


「俺はその花の名前は知りませんが、先生は、花の切り方が出来てません。これじゃ花は水を吸えません。」


 ”花に詳しいのに生物の点数がどうして悪い?”とか、”この花って、私みたいに可憐でかわいいだろ”とか、うるさくいいながらついてきた。


 水場で花を確認。薔薇もグリーンも切り口は綺麗だ。野の花を、ソっともって水切りをして花瓶に入れた。そして水戸には、わかりやすいようにグリーンの茎を使って、水切りの方法を教えた。


 精霊の女の子は、少し元気になったみたいだ。ただ、あまり長くは持たないだろう。この花自体、弱いようだし。


「で、先生、育てているって言ってましたけど、なぜ、切って持ってきたんですか?俺に問題だすだけのためですか?」


「なぜっていわれても、綺麗な花で、つい手折りたくなって・・」

と、恥ずかしそうに頭をかく。そのセリフ、聞いてるこっちも恥ずかしい。


 俺と精霊は、はぁ~とため息をついた。この子は綺麗と言われて、少しか気分が晴れるといい。


<ママさん、私たちの事、とても考えてくれてました。その恩返しと思って、もう残り少ない命だけど、背いっぱい、綺麗でいます。>


 よかった前向きになってくれて。花を、あまり暑くない所へ置きなおした。


 ただ、その日から生物の水戸に俺は付きまとわれる事になった。迷惑!


 

水曜日深夜(木曜日午前一時~2時)に更新。基本、一話完結。 週一ペースです。

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