リズム
トン、トン、トン、トン、トン
一定のリズムを刻んで、近づいてくる足音が聞こえる。
すっかり聞き慣れた、私の大好きな音。
規則的に音を刻んでいたその足音が、5歩目で止まる。
音の主が、玄関前に辿りついたのだろう。
がちゃがちゃ、がちゃん。
次いで聞こえる金属音。
内と外を隔てていた壁が、静かに開かれる。
「ただいまー」
心地良い声が耳に届く。
自然と頬が緩んでしまう。
「おかえりなさい!」
開かれた扉の前に立ち、出迎える。
「ただいま。なに笑ってるの?」
目の前の人物は、不思議そうに首を傾げた。
「なんでもなーい」
そう言って私は踵を返す。
「変なの」
そしてまた、後ろから規則正しい足音が聞こえる。
その心地良さに、私は静かに目を閉じた。
大好きなあなたが刻むリズムのすべてが、私を幸せにしてくれているって言ったら、
あなたは笑いますか?